はたらくを考える

「LGBTに関する職場の意識調査」(2016)-RENGO DATABOX-

「調査なくして運動なし」。連合は、すべての人が安心して働ける社会の実現に向け、テーマを設定し調査を行い、その結果にもとづいて政策提言や課題解決に向けた取り組みを行っています。ここでは、そうした調査の結果と今知っておきたいテーマをわかりやすく紹介します

File.1 連合「LGBTに関する職場の意識調査」(2016)

今回、取り上げるのは「LGBTに関する職場の意識調査」(2016)。日本初となる非当事者を中心に実施したLGBT関連の職場意識調査で、職場における性的マイノリティに対する働く人たちの意識、差別やハラスメントへの対応、働きやすい職場づくりにおける課題が浮かび上がり、注目された調査だ。連合は、「2016-2017 年度 政策・制度 要求と提言」において、「性的マイノリティの人々に対する偏見や差別を解消するための人権教育の推進」や、「雇用の分野における性的指向や性同一性障害等に関する差別禁止法の整備を、男女雇用機会均等法の改正によって求めること」を掲げていた。当時は、当事者団体などの活動を通して深刻な差別やハラスメントの実態が明らかになり、差別禁止法や権利保障を求める声が高まっている頃だった。

改めてこの調査を取り上げたのは、現在、「SOGI(性的指向・性自認)に関する差別を禁止する法律」の制定が喫緊の課題になっているからだ。2020年施行の改正パワハラ防止法に、SOGIを理由とするハラスメントやアウティング(本人の了解のない暴露)の防止が盛り込まれたが、差別禁止法、同性カップルの権利保障はいまだ実現していない。

今年2月、内閣総理大臣秘書官(当時)が性的マイノリティや同性婚について「見るのも嫌だ。隣に住んでいるのも嫌だ」と発言し、同性カップルの権利保障についても「社会に与える影響が大きい。マイナスだ。秘書官室もみんな反対する」との考えを示したことが大きく報じられた。 連合は「時代錯誤、かつ人権意識の希薄な発言は言語道断であり、断じて許されるものではない。政府・与党全体の人権感覚や姿勢も厳しく問われるべきだ」と事務局長談話を発出し、3.8 国際女性デー全国統一行動中央集会において、「性的指向・性自認に関する差別を禁止する法律の早期制定を求める緊急アピール」を採択。5月25日には「連合 LGBT差別禁止を求める緊急集会」を開催し、与党が5月18日に国会に提出した「LGBT理解増進法案」は内容不十分として、性的指向や性自認への差別を禁止する法案の早期制定を求めている。

日本は、今年のG7サミットの議長国であるにもかかわらず、G7で唯一、性的指向・性自認に関する差別を禁止する法律も同性カップルの権利保障も実現していない。すべての人が安心して働ける職場・社会を実現することは、労働組合が取り組むべき課題。調査でも、「差別を禁止すべき」との回答は8割を超えている。差別禁止法制定に向けて、何が問題なのか、調査結果を活用してほしい。

[調査概要]
連合「LGBTに関する職場の意識調査」(インターネット調査)
対象:全国の20歳~59歳の働く男女1000人
期間:2016年6月30日〜7月4日の5日間
※回答者1000人のうち、LGBT当事者は80人(8%)。
▶調査報告全文はこちら→20160825.pdf (jtuc-rengo.or.jp)

LGBTとSOGI
LGBTとは、レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシャル(両性愛者)、トランスジェンダー(生まれた時に割り当てられた性別と性自認が一致しない人)の頭文字をとった言葉で、性的マイノリティの総称としても使われている。なお、本調査では他者に対して恋愛感情も性的感情も向かない人等、他の性的マイノリティも含む呼称としている。
国連など国際機関では、「性的指向(Sexual Orientation)」「性自認(Gender Identity)」の頭文字を取った「SOGI(Sexual Orientation & Gender Identity)」という言葉が使われている。LGBTの当事者を特別視するのではなく、個人のあらゆる性的指向や性自認を尊重するという考え方で、カナダやオーストラリア、EU諸国ではすでに、SOGIにもとづく差別禁止法や暴力に対抗する法律が制定されている。

▶「LGBT」という言葉を「知っていた」との回答は47.1%。世代別では20代が54.8%と最も高く、年齢が上がるにつれ低下。一方、役職別では、管理職の認知度が56.1%と高いことが注目される。

▶職場の上司・同僚・部下がLGBの場合、「嫌でない」との回答は65.0%、Tの場合は73.7%で、働く仲間としての抵抗感のない人が多数となった。ただ、男女で差も見られ、男性は比較的抵抗感が強い場合も多い。一方、身近にLGBTの人がいるという人は、いずれに対しても8割以上が「嫌でない」と回答。「身近にいる」かどうかが大きく影響していることがうかがえる。

▶LGBTの当事者および身近にいる人で、「ハラスメントを受けた・見聞きした」のは57.4%、「差別を受けた・見聞きした」は36.3%にのぼる。身近にいない人との差は大きく、差別やハラスメントに気付いていない人も少なくないことがうかがえる。

▶ハラスメントの原因の上位は「差別や偏見」「性別規範意識」。管理職では、「啓発不足」との回答が際立って高いことが注目される。「差別を禁止すべき」との回答は8割以上、ハラスメントは5割以上と多数派だが、「必要はない」との回答も1割程度あり、特に男性で高くなっている。

▶上位は、「ハラスメント防止対策」33.6%、「差別禁止の方針を明らかにする」28.3%、「『トランスジェンダー』に対する配慮」26.2%。相談窓口や職場の支援体制を求める回答もこれに続いた。また「差別禁止のための法的整備をすべき」との回答は44.5%。これらは、まさに労働組合が取り組むべき課題だと言えそうだ。

(執筆:落合けい)

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