広島電鉄株式会社
広島市内を走る路面電車の創業(軌道線開業)は1912(大正元)年。以来110年にわたり「広島市民の足」を守り続けている。現在は、電車・バス・不動産の3事業を核としながら、安全で快適に暮らせる街づくりの一翼を担っている。路面電車の利用者数は1日平均約10万人以上で、路面電車としては国内最多(2021年3月末時点)を誇る。
(本内容は月刊「連合」2022年8・9月合併号に掲載した内容を再掲したものです)
今回、職場の紹介をしていただく方は
この先も地域に寄り添う運行を
広島市内を数分おきに行き交う市民の足・広電。運転士の井上さんは広電を「地域に根づいているもの」と言います。路面電車なので、乗務中は料金の徴収のほか、行き先案内など乗客と直接接することが多いのも特徴。「お客様との距離が近いぶん、苦情も多いですけど、期待されているからかなと思いますね」。
公道を自動車と並走するのも路面電車ならでは。「市民は慣れていますが、県外の車は突然割り込んできたりする。経験から、『あの車、危ないな』と予測がつくようになりました」。幼い頃からの鉄道好きで「趣味は趣味のままでと思っていた」と一旦は別業種に就職したものの、26歳で広電に転職。20年近くが経ち、「乗務は早朝もあれば夕方から終電まで、ときには通勤時間帯だけだったりと不規則。体調管理が大変ですが、やっぱり『好き』が上回りますね」と笑います。
原爆投下の3日後には運行を再開、復興を支えた歴史をもつ路面電車。ご本人は千葉出身で「広島に来るまで原爆の日をそこまで意識したことがなかった」。今は被爆電車の650形も運転し、「戦前に作られた車両と走れるのも、平和があってこそ」と感じるそう。8月6日の8時15分には、市内に響く鐘の音にあわせ運行中の車両すべてがその場に停車。「お客様から何かを言われたことはありません。理解して黙祷してくださいます」。 これからもやることは変わらない、と言う井上さん。「当たり前に安全運行をして、当たり前にお客様を目的地に運ぶ。地域に寄り添った対応をしていきたいなと感じています」。
(本内容は月刊「連合」2022年8・9月合併号に掲載した内容を再掲したものです)