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はたらくを考える

フリーランスと労働組合

課題解決には、世の中を動かしていく「運動」が必要

連合は、フリーランスの声を広く伝え、課題を明確にし、解決に向けた取り組みを推進するため、2022年4月を「みんなでつながる!フリーランス月間」(みん!フリ)に設定。月間を通してのテーマは「フリーランスの契約課題を考える」。2020年に開設した「働くみんなの連合サポートQ(Wor-Q)」への相談や実態調査を通して、「口約束が常態化」「無断でイラストを二次使用される」「契約書があっても代金を踏み倒される」などの契約のトラブルが多数寄せられていたからだ。
そこで、「月刊連合」~「季刊RENGO」で連載中の首藤若菜立教大学教授の人気コーナー『若菜センセイに叱られる!?』の〈特別編〉として「フリーランスと労働組合」をテーマに、河野広宣連合総合組織局長との対談をセッティング。各種取り組みを通じて見えてきた課題は何か。その解決にどのように取り組んでいくのか。首藤教授の鋭い問いかけを通して、新たな運動の始まりという「現在地」が共有された(月刊連合2022年6月号を編集して転載)。

同じ働く仲間として

首藤:Wor-Qを立ち上げたきっかけは?

河野:2019年、連合結成30年の大会で決定した第16期運動方針に、「多様な雇用・就労形態で働く人が緩やかに連合とつながるネットワーク会員の創設」が盛り込まれ、2020年に「働くみんなの連合サポートQ(Wor-Q)」を開設。昨年10月にはその機能強化のために「Wor-Qサポートセンター」も設置しました。
問題意識としてあったのは、フリーランスなど曖昧な雇用で働く人が急増し、従来の労働関係法令では保護できない事例や、雇用を業務委託などに切り替え雇用責任を逃れようとするビジネスモデルが広がっていること、さらにコロナ禍においてフリーランスなど曖昧な雇用で働く者へのセーフティネットの脆弱性が露呈したこと。同じ働く仲間として放置できないという思いで「みん!フリ月間」を設定しました。首藤先生には、成果発表会にご参加いただき重要な問題提起をいただきました。

首藤:フリーランスが「対等に交渉し契約すること」が目的であるなら、すでにある仕組みとして「労働組合」を活用できることはかなりあるのではないかと…。1600万人(兼業・副業含む)のフリーランスには、雇用労働者に近い働き方も少なくない。「労働者性」が認められれば、プロ野球選手会のように労働組合法上の「労働者」として労働組合を結成できる。強い交渉力を持ち、法的効力のある労働協約を締結できる。だから、フリーランスの働き方の実態を調査して、「労働者性」について整理した上で、新しいツールについて検討してはどうかと思います。

河野:おっしゃる通りです。実態として労働者性が認められる方に対しては、現行の労働関係法令が適用されるべきことはいうまでもありません。次に労組法上の労働組合の視点ですが、Wor-Qは、緩やかな会員制度として立ち上げましたが、最終的には職業別労働組合として組織化したいという思いを持っています。
ただ、労働組合に対しては、経営側(発注側)の抵抗が非常に強いのも事実です。雇用責任を逃れるために社員の大半を業務委託にしているある争議では、ようやく和解に至りましたが、解決まで7年半がかかりました。
とはいえ、労働組合にとって、同じ働く仲間を組合員にしていくことは最も重要な取り組みです。しかし、非正規雇用の組織化は遅れています。その轍を踏まないようにしたい。私は、単組の委員長を降りる際の挨拶で「働くすべての人を労働組合員にしたい」と話しました。その思いはますます強くなっています。

Wor-Qの中でできることがたくさんある

首藤:月間を終えて、今後の課題は?

河野:Wor-Qの中で、できることがたくさんあることに気付かされました。見積りツール、業種ごとの契約書のひな型、発注側と受注側との情報共有やマッチング、先行的な約款モデル策定などのアイデアについて早急に検討を行い、サイトをより使い勝手のいいものにしていきたいと思います。
また、フリーランスといっても一言で括れるものではない。働き方の自由度や管理の度合いにより必要な保護を整理した上で、まずは労働者性が認められる働き方については労働関係法令が適用されることを周知徹底する必要があります。さらには、社会環境の変化に合わせて労働者概念を見直すとともに、契約条件の明示、報酬額の適正化、契約の締結・変更・終了に関するルールの明確化などについても法整備をはかっていかなければなりません。フリーランスの課題は、雇用労働者を含めた「働き方」全体の課題に直結することも分かりました。そのためには、連合が一体となって、運動と政策の両面から取り組んでいかなければと思っています。

首藤:欧州では、労働者と自営業の間の中間的な層に対する法的保護や規制に関する議論が始まっていますが、日本でもそうした見直しが必要ですね。
私は、「みん!フリ月間」を、連合の「新たな運動」の始まりだと受けとめました。課題を解決していくには、当事者が声を上げ、世の中を動かしていく「運動」が必要です。不条理な現実への怒りを原動力に運動をつくっていければ、課題解決の大きな力になる。ただ、日本の企業別組合は、自分の職場の問題には一生懸命取り組むけれども、メンバー以外の非正規雇用や請負・委託で働く人の課題にはなかなか目が向きません。

河野:「組合員以外の問題になぜそこまで力を入れるのか」という声はあります。組合活動が「運動」ではなく「業務」になってしまっているんです。でも、雇用のあり方を根底から変えようとする動きが広がる中で、いつ自分たちの身に降りかかるか分からない。自分たちには関係ないなんて言っていられないんです。これは、働く同じ仲間として今やらなければいけない課題なんです。

首藤:運動は何から始めますか。

河野:「みん!フリ月間」の地方版として対話集会を開催することや、地方連合会の地域ユニオンには、「ひとり組合員」もおられるので、フリーランスの皆さんにもそこに入っていただいて、職種等でグループ化し、共済制度をつくることも検討したいと思います。

首藤:連合のメンバーであるという組織化は意味があります。連合加盟の組合がある企業がCMを提供しているアニメ番組の制作現場で、フリーランスのアニメーターや声優が不当な条件で働いているといった実態があるとすれば、労働組合として、「労働、人権に配慮していないアニメ番組にはCMを提供しない」という提起も必要かもしれません。

働きたい人が働き続けられる環境をつくる

首藤:運動の基軸は?

河野:働きたい人が働き続けることができる環境をつくること。この考え方を筋として一本通しながら、働くことが楽しいと思える「はた楽」を実現していきたい。

首藤:労働運動も楽しくないといけない。河野さんは、楽しそうです。

河野:労働組合の専従役員という仕事に巡り合えて本当に幸せだと思っています。視野が広がり、世の中の出来事を労働組合の視点でどう考えるべきか、勉強するようになりました。

首藤:労働組合がいつからか労働運動に取り組まなくなったために、そのイメージが社会的に薄れ、何をしているのか分からない存在になっています。フリーランスの運動がクローズアップされれば、「組合って身近な存在なんだ」と思えるようになるのでは…。

河野:運動のタネはいっぱい転がっていますから、どんどん仕掛けていきます。

首藤:フリーランスの課題へのアプローチが、「労働組合とは何か」を再確認し、「運動」を取り戻すきっかけになることを期待しています。 (構成・編集部)

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