地域で働く人を支える「縁の下の力持ち」地方連合会の取り組みを紹介する本シリーズ。今回は、青年委員会メンバーの企画・運営でウォークラリーのイベントを実現するなど、若い世代を巻き込んだ活動に力を入れている連合三重を訪ねました。若手へのアプローチは多くの労働組合共通の課題ですが、連合三重はどのように、若手の活動意欲を高めているのでしょうか。
連合三重のみなさん
「自分たちが楽しめるイベント」を、若手自身で考えてもらう
連合三重の青年委員会は、各産業別労働組合から20~30代の若手リーダー20数人が参加しています。ウォークラリーを企画したきっかけは2022年、メンバーを対象とした研修でした。
研修のお題は「コロナ禍でも多くの人が参加できるイベントを考える」こと。参加者はグループに分かれて企画案を発表し、優勝したのが「鈴鹿サーキットでウォークラリーをする」という案だったのです。
鈴鹿サーキットでのウォークラリー
「コロナ禍が落ち着き始めてはいたものの、まだ多くの人が集まる場は少なく、家族そろって外出する機会も減ったままでした。屋外、しかも遊園地のある鈴鹿サーキットを舞台にしたウォークラリーなら家族で楽しめると考え、実現を目指すことになりました」と、担当の中西徹局長と鶴田里沙主任は説明します。
準備が間に合わず年度内には実施できませんでしたが、アイデアは翌年のメンバーに受け継がれ、2023年6月に実現。組合員と家族ら約100人が参加し、同サーキット内の遊園地を巡ってスタンプを集めました。委員会メンバーは、受付やスタンプ係など裏方を務めました。
鶴田里沙 連合三重主任
企画の際にはメンバーから、予算的に実現の難しいアイデアが出ることもありました。しかし中西さんは「頭ごなしに『無理だ』とはねつけると、若者はイベントからも組合活動からも離れてしまう。まずは『それいいね』と賛同しつつ『予算的に厳しそうだから、代替案を考えてみない?こんなのどう?』と実現可能な案を持ち掛け、内容を詰めていきました」と振り返りました。
ウォークラリー受付の様子
ウォークラリーは今年も開催され、前回を上回る約270人が参加しました。
「若手が自分たちで『楽しそうだ』と思えるイベントを企画すれば、運営にも主体的に取り組むようになります。彼ら彼女らが産別の執行役員を離れる時に『楽しかった活動は、青年委員会でした』と言ってもらえる時が、一番うれしいですね」(中西さん)
中西徹 連合三重局長
障がい者への理解促進にも一役
青年委員会は、地域課題とリンクした活動もしています。例えば2018年には、「人にやさしく誰もが安心して暮らせるには」をテーマに、就労支援事業所を利用する障がい者を招き、一緒にパラスポーツの一種である「ボッチャ」とバーベキューを楽しむイベントを開きました。2010年までの10年間で4回も、障がい者雇用率全国ワースト1位になってしまった三重県が、障がい者雇用促進の取り組みを進めていたこともあり、連合三重でも障がい者と交流し、少しでも当事者の思いや実状を理解しようと考えたのです。当時、青年委員会の担当役員だった藤田和彦事務局長は「メンバーは普段、あまり障がい者と接する経験がなかったので、新たな気づきを得られましたし、当事者の皆さんや事業所を運営する人たちにも喜んでもらえました」と話します。
藤田和彦 連合三重事務局長
三重県と労使が協働で、障がい者雇用の支援事業「ステップアップカフェ」を立ち上げたことなどもあり「障がい者実雇用率のランキングは、47位(全国最下位)から14位まで改善しました」と、藤田さん。
かつては青年部の行事と言えば、泊りがけで研修会を行い、夜に懇親会を開くのが主流でした。
しかし時代が変わった今、委員会も行事も日中の活動にシフトしています。連合三重で青年委員会の事務局を担当する鶴田さんは、自身も小学生2人を育てるお母さん。「私だけでなく、委員会の他のメンバーも家庭や仕事で多くの役割を担っています。メンバーの負担にならないよう、ゆるくつながれる活動を心掛けています」
夜の会食などが難しくなる中でも「ざっくばらん」に話せる関係を築こうと、事務局は青年委員会の定例会後、風船でさまざまな形を作る「バルーンアート」の練習会を開いています。お堅い会議の後、和気あいあいとバルーンアートを作りつつ横のつながりを強めてほしい、という思いから始まりました。
「メーデーではメンバーがバルーンアートを子どもたちに配り、大人気でした。青年委員会で磨いた『技』を、自分の労働組合に戻った時にイベントなどで活用している人もいます」(中西さん)
イベントで子どもから大人気のバルーンアート
ゆるキャラ活用し若者にアピール 活動に若者を巻き込む
事務所の入り口ではたくさんのユニオニオンがお出迎え★
ところで、連合三重の事務所に入ってまず驚かされたのが、いたるところに連合のキャラクター「ユニオニオン」のぬいぐるみが飾られていること。部屋の一角には巨大な着ぐるみのユニオニオンまで…。ユニオニオンだけでなく、東海労働金庫の「ロッキー」、こくみん共済coopの「ピットくん」などのゆるキャラも、メーデーのイベント会場に「登場」させ、子どもや若者の注目を集めています。 「組織の意味までは理解できなくとも、子どもたちや若者にまず連合の存在を知ってもらうきっかけとして、ゆるキャラはとてもいいツール」だと、中西さん。中高生に「画像をSNSに投稿していいですか」などと質問されることもしばしばで、ユニオニオンと連合を「拡散」する効果もあるようです。
部屋の一角に飾られているユニオニオンの着ぐるみ1号機
組織内では青年委員会、対外的な活動では非組合員の子どもや若者と、組織の内外で若い世代へのアプローチを重視する連合三重。背景には「組織を強くするには若年層の参加が不可欠」(藤田さん)という切実な課題認識があります。
「県内の単組や産別も、そして連合も、組合役員のなり手不足に悩んでいます。行政への要請行動などを通じて政策を実現するには、若いころから組合に関心を持ってもらい、将来の『担い手』を確保して、組織の規模を維持・拡大する必要があります」(藤田さん)
地方連合会の中には、青年委員会をなくしたり、他の委員会と統合したりする組織も出ていますが、藤田さんは「むしろ活動を手厚くしたい」と断言します。
青年委員会のメンバーは、各産別で若手のリーダーを務めており、抱えている悩みにも共通点がたくさんあります。委員会の中で、悩みを相談しあって解決策を見つけたり、異業種のメンバーから話を聞く中で気づきが生まれたりと、活動を通じて得られることは多いと、藤田さんは考えています。委員会で培った人脈が仕事で生きたり、労働金庫・こくみん共済coop・住宅生協など生活に役立つ情報も得られたりと、物理的なメリットも期待できるといいます。
「私を含め多くの役員にとって、青年委員会は組合活動の原点となっています。だから若い人も組合から声が掛かったら、まず前向きに参加を考えてほしい。仕事や子育てで忙しくても、『組合を活用してやろう』くらいの気持ちで、できる範囲で関わってほしいと思います」
これがイチ押し!地元の名産・名所
熊野古道に伊勢神宮、鈴鹿サーキット、伊勢えびに松阪牛などなど、全国区の観光地や名産品も多い三重県。藤田さんや中西さんにはあえてそれらを離れて、地元の人だからこそ知っている「イチ押し!」を教えてもらいました。
「餅愛」の強さは全国随一?伊勢参りの名残り
伊勢神宮につながる街道には古くから、参拝客にお茶と餅菓子を提供する茶屋がたくさんありました。この名残りで県内には「永餅」「二軒茶屋餅」「へんば餅」など、さまざまな餅菓子があります。地元の人に「どのお餅がお勧めですか?」と聞いたら「推し」の餅をとうとうと語ってくれるかも…。ちなみにこれらのお餅たち、賞味期限が短めな商品もあるので、お土産にする際はきちんとご確認を。
「うなぎ」は津のソウルフード!
津市の観光協会によると、津市は1人あたりのうなぎ消費量が全国一だそう。地元ではお祝い事など、何かにつけてうなぎが食卓に上るといいます。市内には多くのうなぎ屋があり「津のうなぎグルメガイド」まで発行されるほど。ぜひガイドを参考に、ボリューミーでリーズナブルなうなぎを味わってみてください。
津駅すぐそば 大観亭支店の鰻
藤田事務局長イチ押し!「富士山の見える山頂」
伊勢市・鳥羽市にまたがる標高555メートルの「朝熊岳(あさまだけ)」は、晴れていれば山頂から富士山を遠望できます。車でも山頂まで行けますが、江戸時代のお伊勢参りの参拝客は、朝熊岳山頂の金剛證寺にもお参りしたそうなので、古人にあやかって歩いてみても。山頂にはSNS映えする「天空のポスト」もあります。
志摩市の「横山展望台」も、英虞湾を見渡せる絶景スポット。頂上のカフェで「志摩ソフトクリーム」を味わいつつ、一休みしてはいかが?
四日市市の工場夜景
工業地域である四日市市では、コンビナートの夜景を楽しめます。夜景を巡るクルーズ船(有料)も運航されており、工業の幻想的な夜景を海から眺めることもできます。
四日市市の工場夜景
中西さんからは「ドラマや映画の聖地巡礼も」。
人気アイドル目黒蓮さん主演の映画の舞台となった専修寺(津市)や六華苑(桑名市)、木村拓哉さんの主演ドラマでロケ地となった「志摩大橋」(志摩市)など、ファンにとっての「聖地」も。特に専修寺や六華苑は、国宝や国の重要文化財に指定された建物もあり、映画やドラマを知らない人でも見ごたえ十分です。
真宗高田派本山 専修寺
(執筆:有馬知子)