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「フツーの男性」がジェンダー担当になった
国際女性デーまで「考え続けた4カ月」
小原成朗総合政策推進局長(ジェンダー平等担当)

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3月8日は「国際女性デー」。国際的に性差別の解消に向けて行動する日とされ、連合でも毎年、統一行動を展開している。
昨年10月から、総合政策推進局長としてジェンダー平等を担当する小原成朗さんは、多くの男性の例にもれず、これまでこのテーマに特別な関心を寄せたことはなかったという。就任以来「どうしてジェンダー平等が前進しないのか、土日も考え続けている」という小原さんに、4カ月でどのような変化が起きたのだろうか。

国際女性デー】
女性の権利と政治的自由、平等を勝ち取るために制定された日。1857年に米国の工場火災で多くの女性たちが亡くなったことを受け、3月8日に女性たちが低賃金、長時間労働に抗議したことが起源とされる。その後、1908年3月8日には、女性労働者たちが生活向上を表すパンと尊厳を示すバラを手にデモを行った。毎年、世界各国でジェンダー平等を訴える活動が展開され、連合も96年から統一行動を開始。集会を開いて活動の進み具合を確認するとともに、今後に向けたアピールの採択も行われている。ちなみに女性デーのシンボルとして、パンとバラではなくミモザを挙げる説もあるが、これはイタリアで男性から女性へ感謝を伝えるために、ミモザを渡すためらしい。

意識低かった自分は「もったいない」 女性の意見でより良い施策を作れる

小原さんはこれまで、労働条件や産業・社会政策、賃金などを担当してきたが「その時その時の仕事に精一杯で、ジェンダー平等について考える余力もなかったというのが正直なところです」と打ち明ける。言ってみれば、取り立ててジェンダーの問題に思い入れのない「フツーの男性組合員」だった。

ただ小原さんは、過去に女性の上司と仕事をすることが多く「意識は低かったかもしれませんが、優れた女性がいることは、経験上よく分かっていました」。

担当になってからは必死に資料を読み込み、会議では女性の組合役員や地方ブロックの女性委員たちの意見を聞いた。そして思ったのが「今まで知らずにいたのは、もったいなかった」。

「女性たちの悩みや本音を知っていたら、過去の部署でももっと良い仕事ができて、組織に貢献できたんじゃないかと思ったんです」

例えば約20年前に労働条件を担当していた時、小原さんは女性を念頭に、育児休業や短時間勤務が可能な期間は長い方がいい、制度利用者もそれを望んでいると思い込んでいた。しかし育児中の女性の中には、キャリアの遅れを取り戻すため、なるべく早くフルタイムに戻りたいと考える人もいる。担当者だった時にそれを知っていれば、フルタイムに戻りやすいようにするサポートも提案できたかもしれない。

「今思い返せば、ジェンダー平等の知識を生かせる機会は、育児休業や短時間勤務に関すること以外にもいくつかあったと思います。同時に、知識があれば絶対に言わないような不用意な言葉も、過去の自分は気づかず口にしていたかもしれない…という、いたたまれなさも感じました」

小原成朗 連合総合政策推進局長 

「おじさん世代」の労使幹部 女性や若手と意識にギャップも

日本のジェンダーギャップ指数は2023年、146カ国中125位と、前年の116位からランクダウンし過去最低となった。経済分野では特に、男女間の賃金格差が大きいことや、女性管理職が少ないことが足を引っ張った形だ。

労働組合も企業に劣らず、改善すべき点は多い。連合本部の女性役員比率は40%を超えたが、構成組織の平均は15%にとどまる。産業別労働組合のトップも、女性は一人だけだ(2024年2月時点)。ある労働組合では、男性幹部から「女性執行委員を増やしてあげた」という趣旨の発言が飛び出し、女性たちの猛反発を浴びたという。

「企業の方が組合よりも、改善のスピードが速い。今後、ジェンダー格差が企業よりも開くような事態になれば労働組合の存在意義にも関わると、すべての男性組合役員に気付いてほしい」

企業の経営陣や組合幹部のボリュームゾーンは、50代以上の男性たちだ。国立社会保障・人口問題研究所が5年ごとに実施している「出生動向基本調査」によると、彼らが概ね20代だった1992年には、18~34歳の未婚男性の3割以上は、妻が専業主婦になることを望んでいた。一方、2021年にはこの割合がわずか6.8%に低下し、4割は結婚・出産後も仕事を続けてほしいと考えている。

「私を含め性別役割分担の意識が根強いおじさん世代は、社会ではもはや少数派。にもかかわらず労使ともに、この世代が経営・運営の中心にいます。このためジェンダー平等の取り組みが進まず、女性や若い世代にとって『当たり前』のことが実現できないのだと思います」

女性の活動参加が、組合の持続可能性を高める

労働組合が女性役員を増やせるかどうかは、組合の持続可能性をも左右すると、小原さんは考えている。

「経営者や政治家、行政が労働組合の意見に耳を傾けるのは、労働者の代表だからです。労働者の半数近くを占める女性の意見が反映されない組織は、労働者代表とは見なされなくなり、意見も顧みられなくなってしまうのではないでしょうか」

働く現場には、当事者である女性だからこそ気づける不利益や改善点もたくさんある。

「数年前、女性たちによって職場でパンプスを履くことの不条理さを訴える『#KuToo』運動が起きましたが、女性がパンプスを苦痛に感じていると、男性が知るのはとても難しい。組織にも女性の声と、それを施策に反映させる女性役員の存在が必要です」

より多くの女性に組合活動への参加・参画を促すためには、活動の見直しも必要だ。例えばある組合では、夕方6時半から定例の幹部会議があり「女性は参加が難しい」ことが当然視されていた。会議のオンライン化などの取り組みが進みつつある一方、いまだに夜の懇談会や定例のゴルフコンペへの参加を、「大事なコミュニケーション」と考える組合幹部も少なくない。これでは子育て中の女性はおろか、家庭生活を大事にしたい若い世代も、組合を敬遠してしまうだろう。

「ワークライフ『ユニオン』バランスを高めるには、『参加させてあげる』のではなく『参加してもらう』マインドへと、切り替える必要があります。それによって初めて前例踏襲から脱して、改革が前に進むのです」

昔の自分に刺さる言葉で、男性の意識を変える

2024年の国際女性デーで、連合は「つなげよう 取り組みを 高めよう 意識を」というテーマを打ち出した。

「日本の取り組みが、海外に比べて遅れていることを認識し、過去の取り組みを検証した上で未来につなげる、というメッセージを込めました」

ジェンダーによる格差を解消するため、最も重要なのはこの「意識」、特に男性の意識改革だと、小原さんは考えている。そのためには、不条理な格差が確かに存在するという「エビデンス」を示すことが一つの方法だ。

例えばメルカリは賃金分析を基に、同じ仕事をしている男女の社員に7%の「説明できない賃金格差」が存在することを突き止めた。原因は、前職の給与水準に既に男女格差があり、それを踏襲してメルカリでの賃金も決まる傾向があったためだ。同社は対象となる女性たちの給与を引き上げたが、データを示したことで、経営陣の合意形成もスムーズだったという。

「労働組合でもエビデンスを示すことは、施策に対する納得感を高めるのに有効だと考えています」

しかし当事者意識を持てない男性陣に、ジェンダー平等の必要性を「腹落ち」させるのは難しい。データを示しても受け取る側に心理的な抵抗があると、かえって反発を招いたり、問題から距離を取られたりしてしまうからだ。

担当になって4カ月、「土日もどうすればいいかを考え続けている」という小原さんは今「何も知らなかった昔の自分に、刺さるような持ち掛け方をすればいいのかもしれない」という考えにたどり着いた。

「同じ属性にいる私が『我々おじさんは考えの古いマイノリティ。意識をアップデートしないと社会に取り残される』と伝えれば、考えは変えられなくても行動は変わるかもしれない。男性の自分だからこそ果たせる役割もあるんじゃないかと、自分自身を励ましています」

連合の3.8国際女性デーの取り組みはこちら

各地方連合会でも毎年3月8日の「国際女性デー」に街宣行動や集会を行っている

(執筆:有馬知子)

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