4月に「連合寄付講座」で同志社大学に出講した。寄付講座は、これから社会に出る大学生に働くということについて自ら考え、労働組合の役割や労働運動の意義について理解を深めてもらう目的で開講している。今年30周年の連合の外郭団体「教育文化協会(ILEC)」が運営に関わっている。2024年度は同志社大学の他、中央大学・埼玉大学・法政大学・東京工業大学(2024年10月に東京医科歯科大学と統合し、東京科学大学となった)・実践女子大学の6校で展開した。「地方連合会寄付講座」は、岩手・山形・神奈川・愛知・三重・富山・石川・福井・滋賀・京都・奈良・大阪・広島・福岡・佐賀・長崎・大分・鹿児島・沖縄の19地方連合会、21大学で実施された。受講生からは「労働組合に対する見方が大きく変わった」「働くにあたっての権利を守るために労働組合は必要不可欠だと改めて学んだ」などの声が寄せられている。

寄付講座は、労働組合主体のプログラムで連合本部、各構成組織・単組の役員、教育文化協会をはじめ関係団体の方々、地方連合会の役員、各府県の関係者がゲストスピーカーとして講義を担当している。私はこの間、同志社大学・中央大学・埼玉大学・法政大学・鹿児島大学で「これから社会にでる皆さんへ」というテーマで、ライフプランとセーフティーネット、社会保障制度の課題、連合がめざす社会などについて話をしてきた。2008年に教員を退職して専従役員となった時には、二度と教壇に立つことはないと思っていたが、2021年に連合に来て再び授業をすることになって嬉しかったことを覚えている。
同志社大学は、1875(明治8)年に同志社英学校として新島襄によって設立され、1920(大正9)年に西日本で初めて大学令に基づく私立大学として開設された。今年は創立150周年で、日本の私立大学での男女共学は大学令による同志社大学が最初だという。新島襄は、連合会館のある千代田区神田で武士の家に生まれ、幕府の軍艦操練所に入学し、航海術・英語・数学などを学んだ。その後、西洋兵学や測量術なども習得し、アメリカ合衆国の大統領制に衝撃を受け、1865(慶応元)年、22歳で密出国して米国に渡った。教会で洗礼を受け、1870(明治3)年にマサチューセッツ州のアマースト大学を卒業した。大学ではBoys be ambitious!(少年よ、大志を抱け)の言葉で有名な、後に札幌農学校(北海道大学の前身)の初代教頭となるウィリアム・スミス・クラークから化学の授業を受けた。当初、密航者として渡米したが、1871(明治4)年に明治政府より正式な留学生として認可され、翌年には米国訪問中の岩倉具視の使節団と会い、木戸孝允(桂小五郎)の通訳として参加し、ニューヨークから欧州へ渡り、フランス、スイス、ドイツ、ロシアを訪ねた。岩倉使節団の報告書は、明治政府の教育制度にも大きな影響を与えたと言われている。その後も欧米各国の教育制度を調査し、牧師になるための神学校の卒業後、1873(明治6)年に帰国した。
1875(明治8)年、京都府知事と京都府顧問であった山本覚馬の賛同を得て同志社英学校を開校した新島襄は、翌年、山本覚馬の妹、八重と結婚した。新島八重は大河ドラマでも取り上げられたが、武田信玄の軍師、山本勘助を遠い祖先にもち、会津藩の砲術師範をつとめた山本家に生まれた。戊辰戦争の会津鶴ヶ城籠城戦でスペンサー銃を持って奮戦し「幕末のジャンヌ・ダルク」と称された。結婚の翌年、1876(明治9)年に女子塾を開所し、翌年、同志社女学校(のちの同志社女子大学)と改称した。新島襄は同志社大学の開設に奔走する中、1889(明治22)年「狼狽するなかれ、グッドバイ、また会わん」を最期の言葉に48歳で生涯を閉じた。新島八重はその後、日本赤十字社の正社員となり、日清・日露の戦争では広島・大阪の陸軍予備病院で看護婦として従軍したことで「日本のナイチンゲール」とも称された。新島襄と八重が躍動した幕末・維新から150年余り、時代の荒波の中で二人が日本の教育に寄与した功績に頭が下がる。
久しぶりに古都見物と洒落込んでみた。自身の中学校の修学旅行と教員になってからの引率などで何回も京都は訪れていたが、今回は私の一番好きな「東寺(教王護国寺)」と行ったことのない「醍醐寺・京都御所・仁和寺」を散策してみた。美しい古都の景色は言葉にし難いので、写真でご覧じあれ。

右上:東寺「金堂」(国宝)
真ん中:醍醐寺「五重塔」(平安時代後期の951年建立当時のまま残る国宝。京都府下最古の木造建築物。五重塔内部の壁画も最古の空海像など国宝に指定)
右下:醍醐寺「三宝院の枝垂桜」(豊臣秀吉の「醍醐の花見」は三宝院裏の山麓で催された)

左下:仁和寺「二王門」(徳川三代将軍家光が寄進。知恩院・南禅寺とともに京都三大門の一つ)
右:仁和寺「御室桜(おむろざくら)」と「五重塔」(吉田兼好の『徒然草』に登場
