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はたらくを考える

労使で取り組む「グローバル枠組み協定」

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GFAを締結したことで現場の改善が進んでいると実感する

国連「ビジネスと人権に関する指導原則」で提唱された「人権デュー・ディリジェンス」。その実施の枠組みとしても活用が期待されるのが、グローバル枠組み協定(Global Framework Agreement/GFA)だ。国際産業別労働組合組織(GUFs)が推進してきたもので、企業労使、各国産業別組合とともに、ILO中核的労働基準の遵守などを「協定」という形で宣言し、労使のパートナーシップのもと労働・人権・環境などの課題解決に取り組んでいくという行動指針だ。世界各国のグローバル企業で締結が進んでいるが、日本では、2008年に高島屋、2011年にミズノ、2014年にイオンの各労使が協定を結んでいる。グローバル枠組み協定を締結したことで、どんな効果があったのか。どんな取り組みを進めてきたのか。ミズノユニオンの石川要一中央執行委員長に聞いた(月刊連合2022年11月号転載)。
[インタビュアー/春田雄一連合運動企画局長]

サプライチェーンにおける労働条件改善

―グローバル枠組み協定を締結された背景とは?

きっかけは、2004年のアテネオリンピックに対する「プレイ・フェア・キャンペーン」です。「華やかなオリンピックの陰で、スポーツ用品メーカーは途上国の低賃金労働で利益を上げている」との批判が起き、国際NGOのオックスファム、クリーン・クローズ・キャンペーン、グローバルユニオンの三者が、IOC(国際オリンピック委員会)とスポーツ用品メーカー7社(アシックス、フィラ、ミズノ、プーマ、ロット、ケイパ、アンブロ)に対し、サプライチェーンにおける労働条件改善と労使関係整備を求めるキャンペーンを展開しました。

これに対応しなければどうなるのか。不買運動やネガティブキャンペーンが展開され、ブランド価値が損なわれる。IR(投資家情報)のリスクと判断され、株価や企業価値が低下する。生産や販売体制にも影響が生じる。ミズノは、そう判断し、リスク回避のために「CSR調達」を徹底し、サプライチェーンの労働条件改善に取り組むことを決めました。そのためには、すべてのサプライチェーンに対してアンテナを張り、課題や要望を把握していく必要があり、そのツールとしてグローバル枠組み協定は有効だと判断しました。

―「グローバル枠組み協定」の内容は?

いたってシンプルです。「ILOの中核的労働基準を徹底的に遵守する。そのことを社会に発信する」。特徴は「4者協定」であること。ミズノ株式会社、ミズノユニオン、ITGLWF(現・インダストリオール)※、UIゼンセン同盟(現・UAゼンセン)の4者が情報交換や対話を行い、協力して問題の把握と解決に対応する。項目が多いと、会社側は「協定違反」を恐れて慎重になりますが、シンプルな内容にしたことで締結が実現しました。

個別案件での対応協議に効果

―協定にもとづいて行われていることは?

年1回、協定4者での情報交換会を実施し、組合側に情報があれば、毎月の中央労使協議会で提示し、会社のCSR報告会にも参加します。最も機能しているのは、個別案件での対応協議。問題が起きている時は、多くはNGOから指摘があり、ほぼ時を同じくしてUAゼンセン、インダストリオールからも情報が入ります。それを受けて、ミズノユニオンとして現地の状況を把握しながら対応を考え、会社と情報交換します。GFAにもとづいて4者が連携することで、サプライヤーの現場の改善が進んでいると実感します。組合員に対しては機関誌や職場集会での情報発信、定期大会での活動報告を通じて、GFAの意義や具体的な取り組みを共有しています。

―個別案件の事例とは?

タイの協力工場で、社員寮の環境が劣悪だというNGOからの告発があり、4者で現地調査を行いました。工場はミャンマーとの国境近くにあり、従業員の大半はミャンマー人。確かに社員寮は劣悪な環境でした。寮を廃止して住宅手当を付けるなどの改善を行いましたが、結果として、寮の廃止の影響が大きく可処分所得が減り仕送りができないという声も寄せられました。NGOからの告発は多岐にわたります。工場移転時の解雇や不当労働行為、賃金、水道水の汚染、更衣室の不備など。いずれも先進国の価値判断で告発文が届くので、当事者にとってはどのような改善方法がいいのか、悩むことも少なくありません。

―先駆けて協定を締結し、効果をあげている、その秘訣は?

実際にサプライチェーンで様々な問題が起きて、その解決を迫られる中で選択したのが、グローバル枠組み協定です。国際労働運動が持つ世界情勢や現地の情報はリアル感が違う。そのネットワークは強力で、現地の産業別組織や労働組合との連携は問題解決の大きな力になる。また、建設的な労使関係が根底にあることが、会社の安心感にもつながっている。それが秘訣だと思います。

取引停止ではなく協力して改善していく

―「CSR調達」の運用システムは?

協力工場には、事前に監査を行った上で「CSR誓約書」への署名を求め、3年に1度、CSR監査を実施しています。監査項目は、ILO中核的労働基準をベースに、人権、賃金・労働条件、労務管理、ロケーション、信教の自由、年齢確認、性差別禁止、化学物質の安全管理など100以上。項目は、常時工場内に掲示しています。評価はABCDの4段階ですが、C・Dの評価でも、即取引停止ではなく、問題点を明らかにし協力工場とともに改善していくというスタンスです。

―現地の労働組合との関わりは?

協力工場の労働組合が、ミズノに対して発注元責任を問い、消費者に訴える行動に出ることもあります。そういう構図の中でミズノユニオンが現地労組と直接連携することは難しいのですが、グローバルユニオンを通じて現地の産業別組織が間に入ることで、解決に向けて動き出すことができたケースもありました。

―今後の課題は?

一つは、理念と現実のギャップ。先進国の価値観で「改善」を進めても、現地の労働者にとっては良い結果にならないこともある。そこをどう超えていくか。もう一つは、活動の継続性。ベースにある人と人とのつながりも含めて、次世代へのバトンタッチを進めていかなければと思っています。

働く人たちは つながっている

―連合の仲間へのメッセージを。

日本の労働組合は、企業内の労働条件改善を第一に取り組んできましたが、「人権」は遠い世界の「社会課題」ではありません。グローバルなサプライチェーンは全部つながっていて、働く人たちもつながっている。そのつながりを意識して、「ビジネスと人権」の課題に取り組んでほしい。そしてGFAを締結する仲間が増えてくれたらうれしく思います。

※インダストリオール・グローバルユニオン(IndustriALL Global Union、略称:IndustriALL)
 2012年、国際金属労連(IMF)、国際化学エネルギー鉱山一般労連(ICEM)、国際繊維被服皮革労働組合同盟(ITGLWF)の3つの組織が統合して設立された。

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