はたらくを考える

「入社前後のトラブルに関する調査」(2022)-RENGO DATABOX-

「調査なくして運動なし」。連合は、すべての人が安心して働ける社会の実現に向け、テーマを設定し調査を行い、その結果にもとづいて政策提言や課題解決に向けた取り組みを行っています。ここでは、そうした調査の結果と今知っておきたいテーマをわかりやすく紹介します

連合「入社前後のトラブルに関する調査」(2022)

新卒で入社した会社を「離職した」が3割超
「新入社員研修や上司・先輩からの指導・アドバイス状況」は労働組合の有無による違いが明らかに

初回に取り上げるのは「入社前後のトラブルに関する調査2022」。職場では、フレッシュな新卒採用者を迎え、労働組合も新入組合員研修などで忙しくしている時期だが、調査では入社2年目までの3割強が新卒で入社した会社を「離職」していることが明らかになった。今年は、新型コロナウイルス感染症の影響が落ち着いたことから、企業の採用意欲も回復しつつあり、「オワハラ」などのトラブルも懸念される。調査から明らかになった就活生・新卒社員の悩みやトラブルを見ていこう。

《調査概要》
※入社前後のトラブルに関する調査2022
新卒採用における入社前後のトラブルの実態を把握するために、2016年の「内定・入社前後のトラブルに関する調査」に続き2回目となる(2022年2月28日〜3月2日に実施)。大学卒業後に新卒で正社員として就職した全国の入社2年目〜5年目の男女1,000名の有効サンプルを集計した(調査協力機関:ネットエイジア株式会社)。

▶就職活動の中で経験したことは、「他の応募企業の選考状況を聞かれた」(50.0%)と「他に応募している企業名を聞かれた」(43.5%)が突出して高い結果に。
次いで「内定時に、その企業に就職するという誓約書の提出を求められた」(9.3%)、「内定時に、保護者の同意書の提出を求められた」(7.5%)、「内定を伝えられたあとで、他社の選考を辞退するように求められた」(5.8%)などのオワハラ(内定者に対し、他社の選考辞退を促し入社を強要するなどの圧力をかける行為)を受けたとの回答が14.5%にのぼった。また、「容姿に関する発言・質問」(2.3%)や「2人きりの食事に誘われた」(1.1%)などセクハラの実態も明らかになった。オワハラは2016年調査よりも大幅に減少しているものの、セクハラを含めたハラスメントが根強く存在している状況が見てとれる。

▶内定から実際に就職するまでの間に、就職先の求めに応じて行ったものを聞いたところ、「資格取得の勉強・通信教育」が24.6%、「内定者インターンシップやアルバイト」が24.1%、「研修に参加」が18.8%、「読書感想文やレポートなどの課題を提出」が12.9%、「次の学年の採用選考の手伝い」が3.3%。2016年調査と比較すると、「内定者インターンシップやアルバイト」が6.9ポイント上昇している。

▶参加した内定者インターンシップやアルバイトの位置づけを聞いたところ、「必ず参加することが求められ、ほとんどの内定者が参加した」が29.9%、「参加を強く求められ、ほとんどの内定者が参加した」が17.0%となり、計46.9%。一方、希望に応じて参加したり、希望者だけが参加したとの回答は、計53.1%という結果となった。
内定者インターンシップやアルバイトの延べ参加日数は「1〜5日」が47.3%と2016年調査より短期化しているが、依然として1カ月以上の長期間も12.4%となっている。

▶入社までの間に、「資格取得の勉強・通信教育」「内定者インターンシップやアルバイト」「研修」「課題提出」「次の学年の採用選考手伝い」に参加した人(576名)にその影響を聞いたところ、「時間的な拘束が大きかった」が17.9%、「アルバイトに支障があった」が12.0%、「卒業論文・卒業研究に支障があった」が8.0%と上位を占めた。学生生活に影響を与えるケースが減った背景には、「内定者インターンシップやアルバイト」の参加日数の短期化が1つの要因としてあるようだ。

▶インターシップなどに参加したことの感想を聞いたところ、「会社の雰囲気を知ることができ有意義な時間だった」「同期入社の人たちとの交流を深めることができた」といったポジティブな回答が挙がった一方で、「一日かかる研修が多く、給料も出ないので困った」「遠距離で飛行機での往復だったため、費用がかなり必要だった」「限りがある学生時代のうちは、学業、アルバイトといった大学生活に集中したかった」といった、経済的負担の重さや学生生活の浸食、無償労働が疑われる回答もあった。

次いで「業務内容(商品など)に興味があった」(20.7%)、「やりがいのある仕事だ」(20.1%)が上位に。また、「福利厚生が充実している」「年間休日が多い、取りやすい」「プライベートの時間を作りやすい」「転勤がない」といったワーク・ライフ・バランス関連の理由もTOP10入り。女性では「転勤がない」が16.2%と、男性と比べて8.4ポイント高くなっている。

▶入社時に、賃金などの労働条件を明示されたか聞いたところ、「書面で渡された」は59.9%、「社内イントラネットなどに掲示されているので自分で確認するように指示された」は6.0%。また、「見せられただけで渡されず回収された」は3.4%、「口頭で説明された」は5.4%、「書面の明示がないだけでなく、なにも説明はなかった」は2.8%。従業員規模別では、従業員規模50人以下の会社は「書面で渡された」が49.4%と低い。労働組合がある会社では、「書面で渡された」が62.2%で「閲覧できない(計)」は11.2%にとどまっている。

▶最初に就職した会社で、入社後、新入社員研修や、上司・先輩からの業務についての指導・アドバイスはあったか聞いたところ、「十分にあった」は35.9%、「ある程度はあった」は43.1%で、両方の計(「あった」)は79.0%。しかし、「まったくなかった」が6.1%、「あまりなかった」が14.9%で、研修や指導・アドバイスが十分行われていないケースも少なくないことがわかった。労働組合の有無別にみると、「なかった(計)」は、労働組合がない会社で30.1%と高く、労働組合がある会社(16.1%)と大きな差が生じている。

▶卒業後に最初に就職した会社における問題は「時間外労働(残業)が恒常的である」(29.2%)、「仕事に見合わない低賃金である」(29.0%)がそれぞれ約3割。次いで「精神的に不調になり辞める人が多い」(23.6%)、「有給休暇が取得できない人が多い」(19.0%)、「賃金不払い残業(サービス残業)がある」(15.2%)と続く。
働き方改革やワークルールの遵守が一定程度進んだことが伺えるが、有給休暇の未取得やサービス残業の問題が依然として存在していることが明らかになった。

▶勤め先における不安や悩みを相談したい場合、どこに相談するか聞いたところ、「家族・友人」(79.6%)が最も高く、次いで「勤務先の上司・同僚」(34.4%)。女性では「家族・友人」が86.4%と男性と比べて13.6ポイント高い結果に。労働組合などの労働関連団体への相談は3.0%にとどまっている。

▶卒業後に最初に就職した会社で現在も働いているか聞いたところ、「最初の会社で働き続けている(育児休業中・休職中を含む)」は66.8%。「離職した」は合計で33.2%。入社後の新入社員研修や先輩・上司からの指導・アドバイスがなかった人では、「離職した(計)」の割合は41.9%で、指導・アドバイスがあった人と比べて11.0ポイント高くなっている。

▶卒業後に最初に就職した会社を離職した人に会社を辞めた理由を聞いたところ、「仕事が自分に合わない」(40.1%)が最も高く、次いで「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」(31.0%)、「賃金の条件がよくなかった」(27.4%)、「会社の将来性がない」(26.2%)が上位を占めた。入社後の新入社員研修や先輩・上司からの指導がなかった人は、「仕事が自分に合わない」「人間関係がよくなかった」という回答が多く、労働条件明示方法が「書面で渡されていない人」では「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」の回答が最も多いという結果になっている。

(執筆:落合けい)

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