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労働組合による未来づくりー連合のトップリーダーが語り合う!ー

2年にわたるコロナ禍で、日本社会の脆弱性や課題が浮き彫りになっている。2022年は、様々な課題の解決に向けて動き出す年になる。その起動力として、労働組合や連合の役割は重要性を増している。さらに今後は時代に合わせて、新しい運動スタイルの構築も求められている。
連合は、「れんごうの日」の取り組みとして、毎月テーマを決めて連合本部・構成組織・地方連合会が一体となったオール連合型運動を展開している。1月のテーマは「労働組合とは」。本誌でも特別企画として、連合会長、会長代行、事務局長による「新春座談会」を行った。労働組合とは何か。未来づくりに向けてどのように運動を進めるのか。今期、重視すべき課題は何か。注目の新体制トップリーダーが語り合った。(月刊連合2023年1・2月号転載)

[進行]山根木晴久 連合副事務局長

トップリーダーの原点と労働組合の役割

山根木:まず、労働運動に関わったきっかけや経歴、1月の「れんごうの日」のテーマである「労働組合とは」について考えをお聞かせください。

芳野:私は単組の専従書記から組合活動をスタートしました。きっかけは、新入社員紹介の社内報です。自己紹介欄に「3歳の頃からバレエをやっていました」と書いたら、当時の委員長の目に留まりスカウトされたんです。「ひとつのことを長くやってきた人はこの仕事に向いている」と。専従書記になってから2、3年が経ち、女性組合員から相談があった時、執行部が「それは女性の中で解決して」と取り合わなかったことがありました。私が「おかしくないですか」と抗議したら、「だったら、君が執行部になって解決すればいい」と言われて、「じゃあやります!」と…。初の女性執行委員になってからは、女性たちが「すぐ傷んで困るよね」と言っていた制服のリボンとベルトの貸与や育児休業制度の導入などに取り組みました。女性たちもすごく喜んでくれて、組合を応援してくれるようになりました。日常の中に組合が解決できる課題が多くある。それを知ったことが、私の労働運動の原点です。その後、次々と問題が持ち込まれるようになって、社員食堂のスープの肉団子が3個から2個になった、卵サンドが3切れから2切れになった、これは実質の値上げではないかという声にも対応しました。新入組合員研修で「労働組合とはお世話役係」だと教えられましたが、その通りだと実感する日々でした。

松浦:世話役は大事ですね。そこから労働組合への信頼感が生まれますから。
私は、大学卒業後、繊維関係の営業職に就きました。職場委員を引き受けたら、次は「組合の専従をやれ」と言われて、賃金・処遇制度の担当になったんです。戦前からの歴史ある会社なので処遇制度には学歴主義的要素が強く残っていて、工場勤務から営業職になった先輩たちは、私よりずっと仕事ができるのに、私のほうが早く昇進する。専従役員をやるならこの問題を解決しようと思い、7年かけて学歴格差を縮小させました。自分にも働く人のためにできることがある。そう思えたことが、私の労働運動の原点です。そのタイミングで産別に来ないかと声をかけられました。業界として公正労働基準を確立する必要があると感じていたので、お受けして今に至ります。
労働組合とは何か。ひとりではできないことをやるために労働組合がある。労働組合がみんなの問題を解決できるのは、「言うべきことを言い、いざという時は実力行使ができる」という労働基本権があるから。労使の信頼関係はもちろん重要ですが、何でも会社の言う通りの組合では、存在意義はない。そう思っています。

川本:私は、北海道で生まれ育ち、町役場に就職しました。その日のうちに新規採用オルグを受け、労金や共済などの書類にハンコを捺し、夜は国労の組合事務所に呼ばれて「労働組合とは何か」という講義を受けました。当時、行政改革の柱として国鉄の民営化が打ち出されていた時代です。そんな町で、そんな時代に組合員になったので、いきなり社会運動に身を投じることになりました。子どもの頃から切符を切る鉄道員に憧れていたこともあり、「町の足を守り、働く人を守れ!」と国鉄分割民営化反対運動に奔走し、隣接する幌延町の高レベル放射性廃棄物貯蔵施設の誘致反対運動にも参加しました。
職場では、青年部の一員として活動をスタート。ワンマンな町長の下で賃金・処遇が体系化されていなかったことから、先輩たちが組合を結成したのですが、発展途上の組織で新しいことには何でも挑戦しようという勢いがありました。青年部として、お茶汲みや係長以上の肘付イス、朝礼などの見直しを提案し、実現しました。さらに10市町村13単組青年部の会議体を結成し、私はその事務局長、議長を経て、自治労北海道本部の青年部幹事、道民運動部長、組織部長、企画総務部長、財政局長、書記長になり、2011年に自治労本部に来ました。
労働組合は職場が原点です。職場の問題にしっかり取り組んでいる組合は、組織率も高い。労働組合とは何かと聞かれたら、「働く人に寄り添う組織」と答えています。

清水:私も青年部活動が原点です。教員になったのは大量採用の時代で、初めて赴任した千葉県佐倉市の中学校は、55人の教職員のうち31人が30歳未満の青年部員でした。宿直室でしつこく組合加入を勧められ、入るならきちんと労働組合を理解しようと勉強しました。わかってくると口も挟みたくなります。あれこれ物申していたら、青年部の代表をやることになり、2泊3日の合宿で学校教育改革について熱く語り合ったりしました。そんな取り組みが伝わって、千葉県教組の青年部執行委員になり、次に印旛支部の書記長になりました。支部には、11市町村153校の分会がありましたが、夏季休業中の学校閉庁日の日数が市町村で違っていた。そこで校長会や教育長と話をして、支部管内は「学校閉庁日5日」に統一しました。県教組の書記長の時は、選挙で推薦した知事が財政難を理由に賃金カットをするというので、県庁で座り込みを行い、削減額を圧縮することができました。いずれも組合員に喜ばれました。
労働組合とは何かと聞かれたら、「仲間づくりと学習」ですね。例えば、法改正があった時、通知文を見ただけでは学べないけれど、労働組合なら、その内容も職場での活かし方も学べるし、仲間づくりもできる。それがいちばんの魅力です。

職場から始まったジェンダー平等の取り組み

山根木:若き日の姿が目に浮かびます。芳野会長は、就任後「連合運動すべてにジェンダー平等の視点を」と訴えてきて、先日、その「ジェンダー平等」で流行語大賞トップテンを受賞しました。社会的認知も広がってきました。

芳野:国連の第4回世界女性会議(北京会議)で「ジェンダー平等」や「ジェンダーの主流化」が提起されたのは、30年近く前のことです。それがオリンピック・パラリンピックをめぐる発言以降、国内で理解が進んだ。歴史的にはジェンダー平等に尽力されてきた先人のみなさまがいたからこそなのですが、このように広く認知され、改めて注目されたことは感慨深いです。
私は、職場で男女賃金格差の実態把握と要因分析などに取り組んできましたが、労働組合のジェンダー平等の取り組みをもっと知ってもらえるようにしたいですね。

川本:昔、町役場の始業は9時でしたが、女性職員は8時に来て、お湯を沸かして、ゴミを捨て、灰皿をきれいにしていた。一人ひとりの湯飲みと好みを覚えて、1日3回、お茶やコーヒーを淹れる。「なぜ女性だけ?」と聞いたら、管理職が「女性に入れてもらうほうがおいしいから」と平気で答えるような時代でした。組合も問題にしていなかったのですが、青年部が「おかしい」と訴えて廃止することができました。結婚退職慣行も課題でした。1980年代でも自治労の女性組合員比率は4割弱ありましたが、当時は、結婚したら女性が辞めるのが暗黙の了解。だから、女性は臨時職でしか採らない自治体や、男女別の賃金表を持つ自治体がたくさんありました。自治労では、まず結婚しても働き続けるところから始めて、産休や育休を取ろうというチャレンジを続け、今では、結婚、妊娠・出産、育児を理由に辞める女性はほぼいなくなりました。

松浦:私の出身企業には結婚退職時に退職金を増額する規定がありました。一見、女性優遇に見えるけれども、女性に早期退職を促す制度はおかしいと考えて、労使交渉で見直しを求めたんです。なぜこんな制度があるのかと聞くと、会社側は「職制の課長・部長は、女性は若いほうがいいという意見が多い」と答えた。「男女を問わず、経験を積んだ人に貢献してもらうことが大事でしょう」と説得し、見直しを勝ちとりました。男女平等の法制化が加速する一方、職場では固定的な性別役割分業意識が残っていて、そのズレが非常に際立った時代でしたね。総合職・一般職などのコース別管理が、学歴格差と同様に男女格差につながっていることも認識していました。だから、各コースをどこでオーバーラップさせるか、転換の仕組みをどう整備するかという取り組みも重ねてきました。

清水:日教組も女性組合員比率が5割を超えているので、早くから女性参画やワーク・ライフ・バランスに取り組んできました。労働条件は基本的に男女平等ですが、やはり性別役割分業意識が根強くあって、女性参画を進めるためにも、誰もが参加しやすい組合活動にしなければと考えてきました。

山根木:私も単組の委員長時代に、世帯主に付く家族手当などの属人給を廃止して基準賃金に付け替えました。相対的に男性の賃金水準が下がり、女性が上がりました。女性組合員から「気分的にすっきりした」という言葉をもらいました。

芳野:みなさん、きちんと取り組まれてきてますね。「連合運動すべてにジェンダー平等の視点を」も、ぜひ一緒に取り組んでいただきたいと思います。

「ジェンダー平等」で芳野会長が「ユーキャン新語・流行語大賞トップテン」を受賞

働く場所を守ることは働く人を守ること

山根木:コロナ禍で各方面に痛みが広がっています。その対応は?

芳野:今すぐ始めたいのは、ひとり親家庭への支援です。コロナ禍は、非正規雇用で働く人たち、特に女性を直撃しました。中でもひとり親の困窮は深刻です。仕事を掛け持ちしても、食事に事欠くような世帯が増えています。給付付き税額控除などの政策的対応も必要ですが、連合として、地域で食事や食料を提供していくような直接的・継続的な支援活動もやりたいと思います。

松浦:UAゼンセンにはコロナ禍の直撃を受けて傷んでいる業種が多数あるので、まずはその立て直しが課題です。連合の立場としては、それぞれの構成組織に悩みを聞きながら課題を統合し、政策対応につなげたいと思っています。UAゼンセンでは、産業雇用安定センターと連携して在籍型出向のマッチング事業などを行ってきましたが、やはり大切なのは「働く場所がある」ということ。それはひとり親の支援にもつながるはずです。
もう一つは、社会システムの脆弱性の克服です。行政のデジタル化やセーフティネットの再構築はもちろん、企業のDX推進も進めていく必要があります。中小の賃上げのカギは取引の適正化だと言われますが、同じくらい重要なのは技術革新です。新しいシステムを導入して収益性を高め、人手不足を解消する。そのための適切なコンサルティングが受けられるような支援策を求めていきたいと思います。

川本:コロナ禍で弱い立場の人にしわ寄せがいきましたが、労働組合にできることは少なくありません。全国一斉休校で非正規雇用の学校用務員や給食調理員が賃金カットや解雇の危機に直面しましたが、自治労はただちに厚労省・総務省・文科省に要請に行き、雇用維持を確認しました。連合の役割は、こうした行動を組合員だけでなく、すべての労働者に広げていくことだと思います。

清水:コロナ禍では、命とくらしを守るセーフティネットや社会保障制度が十分でないことを痛感しました。その再構築に向けた重要な視点は、SDGsにも示されている「持続可能な社会」です。芳野会長が提起されたひとり親家庭への支援は、まさに未来への投資であり、持続可能な社会の基盤です。政府が「子ども家庭庁」の設置を進めていますが、その具体的な政策立案には、連合としてきちんと参画していきたいと思います。

山根木:連合運動のトップリーダーとして、これから取り組みたいことは?

松浦:なによりも1000万連合に向けた組織拡大です。労働組合活動の基本は、職場の声を聞き、労働条件や生活を良くしていくこと。そのことがもっと認識されるような運動をつくり仲間を増やしていきたいと思います。

川本:エッセンシャルワーカーの多くは最低賃金に近い待遇で働いています。公務では法律の壁があって同一労働同一賃金もままならないのですが、働きに見合った賃金を掲げて、連合としてあらゆる政策を動員していかなければならないと思います。

清水:コロナ禍で、テレワークが広がり、ワーク・ライフ・バランスが重視されるようになりました。政府の「働き方改革」で実現した、罰則付時間外労働規制や同一労働同一賃金などの法整備を職場で実現する取り組みも途上にあります。それらを含めて「働く」ことの未来を考え、新しい働き方をつくっていきたいと思います。

オール連合型運動の実現に向けて

山根木:そのためにも連合の組織力の発揮が必要です。

松浦:「核兵器廃絶1000万署名」は、連合本部が構成組織や地方連合会に要請し、単組の協力を得て目標に近い署名を集めています。連合本部、構成組織、地方連合会、単組が、相互に連関して一つの行動に取り組めば、一体感が生まれるし、700万連合の組織力を実感できる。そのような「つながる運動」を、労働条件の課題をテーマにつくれないかと思っています。例えば、賃金はこの20年上がらず、その水準は先進国で最下位レベル。今後、現役世代人口が急減する中にあって、社会保障制度を維持していくには、生産性向上と賃金上昇が不可欠であり、また、社会保険料の増加に対応するには、少なくとも2%程度のベアを15年続ける必要があると考えています。「中期的な賃上げ」もテーマになるかもしれません。

芳野:いろいろな切口がありそうですね。私は、連合東京女性委員会で長く活動してきましたが、かつては頻繁に政策実現行動を展開していました。例えば、選択的夫婦別氏制度については、地方議会での意見書採択を求めて全会派に要請を行い、本部主催地方連合代表者会議で地方選出の国会議員を回りました。実際に行動を起こすことで、自分でも勉強するし、持ち帰って職場でも活動するようになる。議員要請を行うと、政治にも関心を持てるようになる。でも、コロナ前から、そういう行動が少なくなって、連合運動が見えにくくなっているように思います。心機一転、もう一度政策実現行動をやりましょう。

川本:自治労では、今も、医療や清掃など職種ごとに要求をまとめて、関係省庁などに要請行動を行っています。連合の政策・制度要求は、非常に幅が広くて、統一的な行動は難しい面がありますが、みんなが一緒に取り組めることが必ずあるはずです。

清水:連合結成30年の「連合ビジョン」のスローガンは「私たちが未来を変える」でした。未来づくりのポイントになる課題を見つけ出し運動をつくっていくことが必要ですね。

山根木:社会への発信力強化も欠かせません。

松浦:若い世代にはSNSによる発信が有効ですが、マスコミ報道を重視する世代も健在です。連合が社会的に影響力のある運動を展開すれば、マスコミは取り上げざるを得ない。そういう意味でマスコミを通じた発信も強化すべきではないでしょうか。

川本:「れんごうの日」の一斉行動の主体は地方連合会。地方紙やローカルテレビ局は、その取り組みを大きく取り上げてくれます。テーマを明確にして、全国キャラバンを展開すれば、地方における連合の存在感は必ず高まると思います。

芳野:政策実現に向けた行動が、組織外への発信にもつながるということですね。

清水:思い出されるのは、リーマンショックによる急激な雇用悪化に対して、連合が呼びかけた「雇用と就労・自立支援カンパ(トブ太カンパ)」です。日教組では、そこに子ども支援を絡めて「子ども救援カンパ」に取り組み、その運動を通じて出会ったNPOとは、今もつながっています。
そのような運動をつくり上げていくためにも、まずこれからの運動について連合構成組織の代表と語り合うこと。改めて「フェイス・トゥ・フェイス」の重要性が認識されていますが、私はそれに加えて、心を込めて言葉を伝えるという「ハート・トゥ・ハート」を大切にしたい。組織外への発信力を高めるためにも、組織内の対話は欠かせません。歴代の会長・事務局長のように、対話活動ができないかと思っています。

山根木:実は地方連合会からもリクエストがきています。

松浦:それは絶対にやったほうがいい。議題ありきの会議ではなく、フリー討論で意見を出し合えば、みんなで取り組めるテーマが見つかるはずです。

山根木:この2年、新しい運動のあり方を試行錯誤してきました。組織内の対話をさらに進めながら、リアルとオンラインを融合させた、あらゆる層の参加による社会運動を前進させていきます。本日は、ありがとうございました。

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