労働組合を知ろう

あなたのまちの「連合」×ゆにふぁん
⑩連合山口

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地域で働く人を支える「縁の下の力持ち」、地方連合会の取り組みを紹介する本シリーズ。連合山口では地域協議会や地区を中心に、地域貢献活動に取り組んでいます。清掃活動をはじめフードバンクや施設へのクリスマスケーキ贈呈など、数ある活動のうち、今回紹介する「秋吉台の火道切り(ひみちきり)ボランティア」は、連合山口にとってシンボリックなイベントだそうです。

取材に対応してくださった三名
左から岩本龍二さん(自治労全国一般山口地方労働組合秋芳鉱業支部)、岡﨑博幸さん(連合山口副事務局長)、織田茉衣さん(日本郵政グループ労働組合山口長北支部)

700人を動員!20年以上続く天然記念物をまもる伝統行事のボランティア

秋吉台は県中部の美祢(みね)市にある、130平方kmにわたるカルスト台地です。およそ3億5000万年前からサンゴ礁の堆積を繰り返したことで、高さ数百m~1kmの石灰石の地層を織りなします。天然記念物にも指定されていて、白色の岩場の間を埋めるように草原が広がる不思議な景観が特徴です。

火道切りボランティアを担当する、連合山口副事務局長の岡﨑博幸さんは、秋吉台の魅力を次のように語ります。

「特に初夏から夏にかけては、岩の灰白色と草の緑のコントラストがとても美しく、カルストロードをドライブすると最高に気持ちいいですね。また地下には秋芳洞(しゅうほうどう)と呼ばれる、日本最大級の鍾乳洞があります」

岡﨑博幸連合山口副事務局長

この秋吉台で古くから伝わるのが、“山焼き”と呼ばれる季節行事です。冬の終わりに枯れ野になった一帯に火をつけ、土壌を豊かにするとともに害虫を駆除する、かつては畜産や農業など暮らしの営みを守るために行われていました。一帯が国定公園となった現在は、草木の生長による森林化の防止や、貴重な植物や昆虫等の自然保護を目的としています。

そして山焼きが開かれる2月に先立ち、11月に行うのが「火道切り」です。山焼きの際、周囲の森林に火が燃え移るのを防ぐため、あらかじめ周りの草を刈り、幅6m、全長21kmの防火帯をつくる作業のことです。立地柄、重機を入れるのが難しく、人の手が頼りです。

「長らく地域の人たちによって行われてきましたが、まちの高齢化・過疎化により2000年頃から担い手不足が課題に。当時の町長(現在の美祢市)から要請を受け、連合山口は2004年からボランティアとして参加しています」

当初300人程度だった参加者は、21回目の2024年度には退職者連合や組織内議員も交え700人以上に。現在は11月の第2土曜日に、3kmの火道切りを行うのが定番です。

連合山口主催 第21回秋吉台山焼き延焼止め草刈りボランティアの様子

美祢周辺だけでなく、下関や岩国など遠方から高速道路を使って来る人や、コロナ禍以前は観光バスを出して参加する組織もあったほど。当日の駐車場の確保も重要で、広場を借り臨時の駐車場を設けるなどの工夫をしているんだとか。

達成感を得ると同時に地元の魅力を再認識

刈り取った草で防火帯(火災の延焼を防ぐために設けられる帯状のエリア)をつくるのは、かなりの重労働です。しかも場所は天然記念物に指定された、岩場だらけの草原です。集合場所から組織ごとに割り当てられた区画まで最短でも20分、端のほうになると30分以上歩くそう。草刈り機や道具を持っての移動は、それだけで足腰に負荷がかかります。

草刈りエリアまで道具を持って移動する様子

区画に着けばススキやアザミなど、大人の背を越えるほど丈の伸びた草が生い茂っています。それを草刈り班が斜面下から刈り上げ、草上げ班が運び上げ防火帯にまとめていきます。

「夏のうちにしっかりと生長した草は枯れてきているとはいえ茎が固く、草刈り機の刃は一度でかなりのダメージを受けます。ケガをしないためにも慣れと経験が必要で、多くの人は家から使い慣れた草刈り機を持参します」(岡﨑さん)

草刈りの様子

「初めて参加した年は地面が少しぬかるんでいて、さらに大変でしたね」と振り返るのは、2024年度のボランティアに初参加した、日本郵政グループ労働組合(JP労組)山口長北支部の織田茉衣さん。草刈り機に使う燃料オイルを背負いながら山を登り、想像以上の重労働に驚いたそうです。けれども体を動かし、草を運ぶ作業に集中した先の達成感が忘れられないといいます。

草刈りの様子②

「地元であるがゆえに、秋吉台にはかえって足が遠のいていました。けれどもボランティアに参加して、こんなに雄大で、騒がしい日常から逃れられる場所があったんだと再発見した気分です」

5、6年ほど前に一度参加し、昨年ふたたび秋吉台に足を運んだ自治労全国一般山口地方労働組合秋芳鉱業支部の岩本龍二さんは、歴史のあるボランティアにもかかわらず改善が重ねられていて、感激したといいます。

「所属する労働組合の役員に誘われて参加したのが前回、今回は逆に役員として周りを誘う側となり参加しました。動機こそ必要に迫られてでしたが、実際に訪れると思いきり深呼吸したくなるくらい空気が澄んでいて、とてもリフレッシュできました。山は寒いからと厚着して臨みましたが、体を動かすうちに汗だくに。キツいけれど、爽快感がたまりません」

行政との議論を重ね、ベストなボランティアのあり方を模索したい

晩秋につくられた火道は冬を越え、そして2月の3週目にいよいよ火がつけられます。枯草で白茶けたカルストが、燃え盛る炎で赤く染められ、数時間で黒い灰で覆い尽くされる姿は圧巻。織田さんも岩本さんもボランティアに参加して、それまであまり気に留めることはなかった山焼きに、関心を寄せるようになりました。

「テレビで取り上げられていると、嬉しくてつい見入ってしまいますね」(織田さん)

織田茉衣さん(日本郵政グループ労働組合山口長北支部)

「山焼きの日は、自宅にも灰が舞い込んできます。以前なら迷惑に感じていたのが、愛着すらおぼえるように(笑)。印象がガラリと変わりました」(岩本さん)

岩本龍二さん(自治労全国一般山口地方労働組合秋芳鉱業支部)

岡﨑さんはボランティアを主導しながら、人が集まることによって得られる活力の偉大さを実感したといいます。

「新型コロナでソーシャルディスタンスが叫ばれた2020年もボランティアを実施し、それまでで最も多い615人が参加しました。みんな外に出たくて、うずうずしていたんでしょうね。当時、私は所属する労組の一員として参加していましたが、参加者の生き生きした表情が今も印象に残っています」

草刈りの様子③

連合山口を代表するイベントとなった火道切りボランティアですが、長年続けてきたことで課題も出てきています。いちばんは資金面です。ボランティアといっても、草刈り機の燃料費や替え刃などのメンテナンス、当日の運営費など、それなりの支出が生じています。2019年には「ゆにふぁん」を通じ、クラウドファンディングにも挑戦。前例のない取り組みでしたが、多くの人の支援によりボランティアの継続につながっています。

「これからますます地域の過疎化・高齢化が進む中で、行政とどういう関係性を築けば、秋吉台という稀有な地域資源の維持とボランティアを両立できるか。市や県とも議論を重ね、地域市民も私たちもお互いに幸せになれるやり方を模索していきたいと考えています」(岡﨑さん)

山焼き本番を現地レポート! のつもりが……

取材チームは2025年の山焼き開催日である2月16日に合わせ現地を訪れたものの、前日からの雨で残念ながら取りやめに。うまく燃え広がるには草木が乾燥していることが必須条件。3日前から晴れの日が続くのが理想なのだそう。雨で草や地面が濡れている状態では難しいため順延となりました。

当日の秋吉台の様子(広大な草原が炎を上げながら黒く移り変わる姿をこの目で見たかった…。)

ところが、順延日に設定された翌週は強風と積雪! さらにその翌週、深い霧が立ち込める中で強行するものの、思うように火が燃え広がらず取りやめに。協議の末、今年度は追加の火入れを行わないまま終了となりました。

例年ならば山が焼け、草が灰へと変わった黒い大地に、白い小さな岩山が顔をのぞかせます。そして岩々の間から新緑が芽吹く頃、秋吉台にもようやく春がやって来るといいます。
今年度は異例の事態となりましたが、1年程度の取りやめなら景観の維持への影響は少ないとのこと。来年度はどうか、うまくいきますように……!

参考:昨年の山焼きの様子

これがイチ押し!地元の名産・名所

エヴァファンあこがれの聖地 宇部市ときわ公園

秋吉台のある美祢市のお隣、宇部市はアニメ『エヴァンゲリオン』の聖地として知られます。山口宇部空港のすぐ近くにあるときわ公園は、常盤湖を中心に、東京ドーム約40個分の敷地を誇る総合公園です。
「見どころは季節を彩る花と緑。桜の季節には3500本の木々が、園内をピンク色に包みます。他にもぼたんに芍薬、つつじにしょうぶ、あじさいにバラと、訪れる人を飽きさせません」(岡﨑さん)

構内には遊園地や動物園など施設が充実し、屋外型のミュージアムには約100点の屋外彫刻が常設されています。エヴァンゲリオンの作中に登場する「ロンギヌスの槍」もそのひとつ(現在は、園内の別の場所に移設されているそうです)。全長7mに及ぶ巨大な槍は、圧巻です。

どこまでも透き通るエメラルドの水面に癒される 別府弁天池

秋吉台の西側に位置する別府厳島神社にある別府弁天池は、毎分11トンもの水の湧き出るパワースポット。日本名水百選にも選ばれていて、透明度の高さに圧倒されます。

「夏のお気に入りの清涼スポット。降り注ぐ太陽の光が反射し、コバルトブルーの水面がキラキラと輝くさまを眺めるうち、暑さで火照ったからだも落ち着きます」(織田さん)

「池の水を飲めば長寿が保たれ財宝が授かる」という言い伝えがあり、構内には専用の給水所も。秋吉台を訪れたら、こちらにも足を運んでみては。

別府弁天池

赤と青のコントラストを織りなす 海を背景に鳥居が連なる元乃隅神社

日本海に面する長門市にある県内有数の景勝地として知られるのが、元乃隅神社です。地域の網元の枕元に現れた白狐のお告げにより、1955年(昭和30年)につくられたという本社。圧巻は高台から日本海に向かって連なる123基の赤い鳥居。青い大海原と真っ赤な鳥居、そして鳥居を囲む木々が織りなす色彩は、思わず写真に収めたくなる美しさ! SNSを中心に世界中から注目される神社です。

「賽銭箱が大鳥居に設けられているのも、この神社のユニークなところ。5mほど上を目がけてお賽銭を投げ入れます。一度で入れば超ラッキー! 私は何度も挑戦して納めました」(織田さん)

元乃隅神社(photoAC)

焼き鳥は長門市民のソウルフード

長門市は人口1万人あたりの焼き鳥店の数が、日本でもトップクラスの焼き鳥の町。ねぎ間には長ねぎではなく玉ねぎを使うのが特徴です。

「バーベキューとなると焼き鳥はマスト。串に刺さった肉を箱単位で買って、グリルに並べます。私のお気に入りは皮。カリッカリに焼いてビールや焼酎と合わせると、もう手が止まりません」(岩本さん)

しっとりわかめとやさしい塩気にハマる人続出 萩市・井上商店のしそわかめ

わかめの程よい弾力と、しそ、ゴマの風味に塩気のバランスが抜群のソフトふりかけの人気は今や全国区。天日干しのわかめを刻んでご飯にふりかける、地元萩の食習慣からヒントを得てつくられたとされます。

「定番の『しそわかめ』以外に、萩の名産、夏みかんをつかった『夏みかんわかめ』は香りがさわやか。ピリッと辛い『辛子明太子わかめ』もおすすめです」(岡﨑さん)

喜ばれることまちがいナシ 山口みやげの新定番「月でひろった卵」

「まあるいカステラ生地が包むのは、栗を散らしたカスタードクリーム。ふんわりトロンと、ひと口食べればご機嫌に。県外の人に会いに行くとき、手土産にすると喜ばれます」(織田さん)

隠れた和牛王国・山口 美祢の精鋭「梶岡牛」

山口というと、下関のふぐなど海鮮をイメージしがちですが、実は県内各地で黒毛和牛を飼育しています。

中でも注目は、やはり美祢の梶岡牛。人が食べても安全なオリジナルの発酵飼料を与え、デジタルツールも駆使しながら牛にストレスを与えない環境を管理。他の黒毛和牛より飼育期間を長めに取り、じっくりと熟成させたうえで出荷されます。

細やかな“サシ”で赤と白のマーブル模様を描く肉の断面は、丹念に育てられた証。口に入れた瞬間、とろける脂と広がるうま味に笑顔になること間違いなしです。

(執筆:たなべやすこ)

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