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「コロナ禍での夏の疲れと自律神経」こころにホットタイム【16】

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(月刊連合2021年8・9月号転載)

皆さま、こんにちは。残暑お見舞い申し上げます。最近の夏の暑さは大変なものですね。熱中症対策として水分をこまめにとっておられますか? 暑いと食欲も減退しがちですが、できるだけ栄養バランスのよい食事を規則的にとることは、体力保持と自律神経安定、ひいては免疫力の強化にも重要です。厳しい暑さや急な気候の変化では、自律神経のバランスが乱れやすくなります。自律神経とは?少しご説明しましょう。

自律神経は、脳から出て内臓や血管など身体中にはりめぐらされている神経です。消化・吸収・循環・呼吸など、生命を維持する上で欠かせない役割をもっています。交感神経と副交感神経という2種類から成り立っていて、ひとつの臓器に対して基本的に反対の働きをしています。交感神経は、動物において敵に襲われるなどの急性のストレス時、「闘うか逃げるか」モードで優位になる神経です。交感神経が優位になると心臓は速く打ち、血液を素早く全身に送り届けて筋肉がよく動くようにします。食べている場合ではないですから、胃腸の動きは抑制されます。一方、副交感神経は、リラックスしている時に優位になる神経です。副交感神経が優位になると心臓はゆっくり打ち、消化にふさわしく胃腸の動きは活発になり、薄い唾液がたくさん出ます。

人間を含めて動物では、この交感神経と副交感神経がうまくバランスをとって身体を維持しています。バランスが崩れると、「自律神経症状」と言われる身体の不調が出ます。動悸・息切れ・頭痛・発汗・めまい・手足のしびれ・便秘・下痢など、多くの症状があります。内科の病気で自律神経症状が出ることも多々ありますので、こうした身体症状でまず内科を受診するのは正解です。しかし、特に内科の病気ではない場合もあります。うつ病や更年期障害では自律神経症状が多彩に出ますが、それ以外でも自律神経の乱れはしばしばおこります。

自律神経のバランスは暑さ寒さなどの外的なストレスの他、過労や精神的なストレスで崩れやすくなります。自律神経の中枢は、視床下部という脳の最奥にあり、情動の中枢である大脳辺縁系ととても近い場所にあることが、情緒的なストレスの影響を受けやすいひとつの要因です。

コロナ禍では仕事でも日常生活でもイレギュラーな対応を迫られ、心身には普段より負担がかかっています。そこにこの暑さです。もともと夏休みは暑い夏のひととき、心身を休めるためにあるわけですが、皆さま夏休みはしっかりとれましたか? ゆっくりできた方もできなかった方も、日々の心身のケアをしていきましょう。自律神経を整えるには規則的な生活が基本です。朝起きて朝食を食べ、昼食を抜かず夕食も遅くならないうちに食べましょう。身体を動かして、できれば7時間睡眠をめざして夜は早く寝ましょう。疲れたらこまめに身体を休める。そして何か楽しみを。コロナ禍で諸般の状況が厳しい昨今だからこそ、できるところから身体と心をいたわって、残暑と季節の変わり目を乗り越えましょう。

矢吹弘子 やぶき・ひろこ
矢吹女性心身クリニック院長
東邦大学医学部卒業。東邦大学心療内科、東海大学精神科国内留学を経て、米国メニンガークリニック留学。総合病院医長を経て1999年心理療法室開設。2009年人間総合科学大学教授、2010年同大学院教授、2016年矢吹女性心身クリニック開設、2017年東邦大学心療内科客員講師。日本心身医学会専門医・同指導医、日本精神神経学会専門医、日本精神分析学会認定精神療法医、日本医師会認定産業医。
主な著書:『内的対象喪失-見えない悲しみをみつめて-』(新興医学出版社2019)、『心身症臨床のまなざし』(同2014)など。

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