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あなたのまちの「連合」
⑥連合岩手

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地域で働く人を支える「縁の下の力持ち」地方連合会の取り組みを紹介する本シリーズ。6回目は、東日本大震災の被災から13年が経過した連合岩手をご紹介します。震災の記憶を伝えることから復興の「次」のステップへと、活動をシフトさせているほか、若手が地元を盛り上げようと、独自にさまざまな取り組みをしていることにも注目です。

連合岩手のみなさん
左から鈴木圭事務局長、今野善文副事務局長、佐々木正人副事務局長

復興支援の次に進む コミュニティ再生、地域活性化は道半ば

連合岩手の鈴木圭事務局長は、津波で甚大な被害を受けた大船渡市の出身。「自宅は山の方にあって無事でしたが、知っている人も何人か亡くなってしまいました。今も海に近づくのは何となく嫌なんです」
鈴木さんも、そして今野善文副事務局長も、被災直後から地元の人たちが懸命に復興に取り組む様子を目の当たりにしてきました。
震災から13年が過ぎ、高台への移転や建物の再建など、ハード面の整備はほぼ終了しました。ただ避難などによって過疎化が進んでしまった各地域の活性化やコミュニティの再生、そして人々の心のケアの領域についてはまだ道半ばな部分もあり、今野さんは「地域振興、心のケアなどソフトの領域については毎年、行政に支援の継続・延長を求めて国に働きかけてもらうようにしています」と説明します。
ただ近年は「被災地の人たちも『次』に向かって動き始めていると感じます」とも、今野さんは言います。それに伴い連合岩手の取り組みも、少しずつ変化してきました。
こうした中、2017年から開催してきた「震災復興&クラシノソコアゲ 地域フォーラム」も2024年6月に開かれた5回目で終了しました。フォーラムでは復興支援に関わるNPO関係者や地域おこしのため移住してきた人々などを招いて、お互いの活動や地域課題を共有しており「連合岩手の各地域協議会とNPOとのつながりが生まれるなど、成果も得られました」(鈴木さん)。
ただ地域の主な課題も復興に関わる内容から、中小企業の振興や地域活性化など全国の幅広い地域に共通するテーマへと移りつつあります。このため連合岩手も今後は、連合本部の持つプラットフォームと接続しつつ、復興の「次」のフェーズにふさわしい活動の在り方を模索していくことになったのです。

今野善文 連合岩手副事務局長

花火がらは「夢のかけら」 若手組合員がごみ拾いボランティアに参加

岩手では今、住民や移住者が地域を活性化しようと、さまざまな活動を展開しています。県内各地域にある連合の「地域協議会(地協)」に属する若手メンバーも、自分たちの地元の活動に積極的に関わっています。
陸前高田市では2020年から、民間団体が中心となって大規模な花火大会を開いており、翌日には会場に落ちた花火玉のかけらをボランティアが掃除する「夢のかけら拾い」も行われています。地元の地協の声掛けで、県内各地の青年委員会メンバーもこのボランティアに参加しました。鈴木さんは「地域を盛り上げようとする地元住民の取り組みに、連合の若手メンバーが自発的に協力するのはとても大事」と歓迎します。
地協の青年委員会は普段から、海釣りやキャンプのようなイベントを通じて交流を深めており、複数の青年委員会が合同で勉強会なども開いています。こうした取り組みを通じてメンバー同士のつながりを作っていることが、地元での活発な活動につながっていることもうかがえます。
「連合岩手が活動の先頭に立つより、地協や単組のような地域に近いレベルの活動が活発化し、連合に影響が及ぶという形が望ましい。そのためにはオジサン世代の意見を押し付けずに若者の考えを尊重し、経済的な面やノウハウの提供などで協力したいと考えています」と、鈴木さんは話しました。

「夢のかけら拾い」の様子

地域のニーズに応える「縁の下の力持ち」 湿原を守る植樹活動

連合岩手は2007年から、盛岡市に隣接する滝沢市で植樹活動も続けてきました。きっかけは行政から「湿原の水質を保つため、広葉樹を植えたい」という要望を聞いたことでした。
「植樹にはお金も人手もかかり、行政の力だけでは難しい。一方、連合岩手にも環境保護活動として植樹に取り組みたいという思いはあり、行政をお手伝いしようということになりました」(鈴木さん)
毎年6月に組合員とその家族を集めて植樹会を開き、600本ほどの苗を植えつけています。コロナ禍による中断もありましたが、多い時には150人余りが参加し、作業後は温かい豚汁やお弁当を食べて交流しているそうです。
鈴木さんは「ある年には、道路から見える場所に桜を植えるなど私たちも植樹を楽しんでいますし、植えた木が大きく育つのを見るのも感慨深いです」とも話しました。
このほか毎年7月には、他団体と共同で平和集会も開催。4日間かけて県内3つのルートで平和行進も行われます。集会などの場では、県内の高校生が核兵器廃絶の署名を集め国連に届ける「1万人署名活動」に協力し、組合員などから署名も集めています。
「若者がせっかくいい取り組みをしているのだから、私たちも協力したい。彼ら彼女らが平和に向けて頑張っているのを見ると、大人も清々しい気持ちになります」と今野さん。連合岩手は自分たち主催の活動に留まらず、地域の行政や若者たちの「いい取り組み」を応援する、まさに縁の下の力持ちなのです。

「植樹活動」の様子

復活する「都会志向」 地元に人をどう残すか

岩手県は震災直後、「復興の手助けをしたい」と地元に就職する若者が増えました。しかし皮肉にも、復興が進むにつれて「都会に出たい」という思いが勢いを盛り返しつつあるといいます。
「県内の求人は、どうしても製造業などに偏ってしまい職種を選びづらい。特に女性たちは、事務職をはじめとする多様な仕事に惹かれて惹地元を離れる傾向が強いです」と、今野さんは説明します。
若い働き手を地元に留めることは、連合岩手だけでなく地元企業や行政にとっても大きな課題です。こうした認識を労使が共有したこともあり、2024年10月の地域別最低賃金改定で、岩手は前年比59円増の952円と大幅アップを達成。賃金の底上げが進みはじめています。
連合岩手も労働者のサポートや組織化、青年委員会の活性化などを通じて、若い世代に地元で働いてもらうお手伝いをしたいと考えています。「そのためにも社会への情報発信を強化し、自分たちの思いや活動の内容をより多くの人に伝えたい」と鈴木さん。すでにFacebookやInstagramなどのSNSで、写真やテキストの情報は定期的にアップしていますが、今後は動画コンテンツの発信にも挑戦したいといいます。
「選挙の時など、自分たちが発信したい時だけSNSを使ってもフォロワーはついてきません。普段から面白いと思った取り組みをすぐに紹介できるよう、『反射神経』を身に着けたいですね」と、鈴木さんは話しました。

鈴木圭 連合岩手事務局長

これがイチ押し!地元の名産・名所

2人がそろって推す名所が「みちのく潮風トレイル」。青森県八戸市から福島県相馬市までの太平洋沿岸に設けられた遊歩道で、2019年に全線が開通しました。断崖絶壁やリアス式海岸、震災遺構など見どころがたくさんあり、何回かに分けて歩くのがお勧めです。

みちのく潮風トレイル「種差海岸」

この先は海!最東端の「魹ヶ埼(とどがさき)灯台」
今野さんが「個人的なおススメ」と話すのは、本州最東端にある「魹ヶ埼(とどがさき)灯台」(宮古市)。「駐車場からかなり距離があって歩かなければいけませんが、灯台の先にはもう海しかない。少し海が荒れていると怖いくらいの勇壮さを感じることができます」
三陸海岸にはこのほかにも、浄土ヶ浜(宮古市)など有名な景勝地が多いので、チェックしてみてくださいね。

魹ヶ埼(とどがさき)灯台


大谷翔平・佐々木朗希に続く「岩手産の逸品」は?
岩手は今や、スーパースター大谷翔平選手を生んだ土地として世界的に知られるように(?)。彼の勧めた地元グルメがヒットする、といったことも起きているそう。
その一つが岩泉町の「岩泉ヨーグルト」です。加糖・無糖のヨーグルトからレトルトシチューまで幅広い商品を取り扱っていますが、鈴木さんのお勧めは加糖のタイプとのこと。
また千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希選手が「恋しくなった食べ物」に挙げて有名になったのが、大船渡市の「酢の素」。4倍濃縮なので薄めて料理などに使うのが一般的ですが、地元の人は海産物に直接かけることもあるそうです。

ごまをすりたい人へお土産に?「ごま摺りだんご」
一関市の「ごま摺りだんご」は、おだんごの中にトロッとしたごま餡が入った和菓子です。「とっても美味しいので、ごまをすりたい人にもそうでない人にもお土産にどうぞ」と今野さん。ただ一口で食べないと、餡がだんごからあふれ出すこともあるので、食べ方にはご注意を。

このほかタコ、うに、イクラなどが牛乳瓶の形をしたビンに詰まった「瓶ドン」(宮古市)やアワビなどの海産物を漬け込んだ「海宝漬け」(釜石市)など、海の幸も満載。また、店に行くとコッペパンに好きな具をはさんでくれる「福田パン」(盛岡市)や、とれたてのサンマの刺身など現地でこそ本当のおいしさが分かるグルメもたくさんあります。鈴木さんも「現地に滞在することは被災地支援にもなりますから、ぜひ実際に岩手に足を運んでください」と話しました。

(執筆:有馬知子)

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