社会貢献の取り組み

通院支援や庭掃除、地域に「支え合い」のネットワークをつくる
~「連合・愛のカンパ」が支える草の根支援~

image_print印刷用ページ

連合が「愛のカンパ」事業で助成している団体を紹介する記事の第2弾。栃木県矢板市の「なかよしサポート矢板」は、通院の送迎や自宅の片づけ、庭掃除など高齢者の日常生活に欠かせない作業を支援している団体だ。活動を担うボランティアも大半がシニア世代で、地域のシニア同士の「支え合い」のネットワークをつくり出している。

電球交換中の転倒で骨折し救急搬送 地域の困りごとに向き合う

同団体は労働者が介護や子育て支援などの事業を自主運営する「労働者協同組合(ワーカーズコープ)」の協力で、2022年4月に設立された。2025年から「連合・愛のカンパ」(以下、愛のカンパ)の助成を受けている。

設立の約1年前から、地区の区長や民生委員、福祉関係の行政職員らと話し合いを重ね、市内の高齢者にもアンケートを実施して地域課題を洗い出した。すると「足腰が弱ってスーパーや病院に行くのが大変」「お墓や庭の草刈りができない」「高齢者施設に入所しており自宅を管理しきれない」といった困りごとが数多く寄せられた。

事務局責任者を務める副代表の赤羽とみ子さんは「椅子に上って電球を交換しようとしたら、落ちて骨折して救急搬送されたという声もありました。しかしちょっとした作業でも、業者に依頼すれば2~3千円かかるので、年金生活の中ではおいそれとは頼めません」と説明する。
特に多かったのが、移動のサポートを求める意見だった。運転が難しくなった高齢者は、最寄りのスーパーやかかりつけ病院へ行くのも一苦労だ。市内にタクシーは少なく、日曜日は 1台しか稼働していない。

副代表の赤羽とみ子さん
代表の斎藤香織さん

団体は、有償ボランティアを募って「サポーター」として登録してもらい、送迎や除草、室内での軽作業などを引き受けることにした。最初6人でスタートしたサポーターは、現在24人に増えた。
利用を希望する人は、保険加入など必要な手続きを経て、団体と利用契約を結ぶ。利用する時は、30分あたり400円のチケットをサポーターに渡す仕組みだ。
「市外への送迎や猛暑時の屋外作業など、負担の大きな仕事には追加料金がかかりますが、民間事業者に比べればはるかに安くすみます。例えばタクシーだと3万円程度かかる市外の中核病院への往復も、8000円程度で引き受けています」(赤羽さん)

現在の利用者は118人で、月平均70~80件の依頼がある。半分以上が通院などの送迎支援だが、夏に向かって増えるのが、自宅周りの草刈りやお墓の清掃依頼だという。
「猛暑の中での屋外作業は、サポーターも汗だくになる重労働です。ただ昨年、愛のカンパで草刈り機を購入できて、除草作業がとても楽になり、助かっています」と、代表の斎藤香織さん。

過去には「2階にある蔵書を処分してほしい」という依頼もあった。猛暑の中、サポーター7人がかりで膨大な量の本をまとめ、滑車で地上に下ろして軽トラで処分場へ運んだという。

一方で庭木の伐採を頼まれた時は、サポーターの手に余ると判断し、民間の伐採業者につないだ。またゴルフやカラオケなど娯楽のための送迎や、入浴介助など介護保険サービスでカバーされる作業は対象外だ。
「介護保険サービスでは対応しきれない『すき間』の作業を引き受けるのが私たちの役割。無理をせず危険を伴わない範囲で、困っている利用者のためにできることをしたいと考えています」(斎藤さん)

愛のカンパで購入した草刈り機が大活躍

シニアがシニアを支える 他世代とのつながりづくりも

赤羽さんが「元気な高齢者が、支援を必要とする高齢者の手助けをする」と説明する通り、サポーターと利用者の世代は比較的近い。サポーターの年齢層は60代~80代、利用者は大半が70~90代だ。中には、配偶者が仕事で自家用車を使う時は利用者として送迎してもらい、自分が使える時はサポーターとして誰かを送迎する、という具合に利用者とサポーター両方の登録をしている人もいるという。

サポーターの格和薫さん(73歳)は週1回程度、除草や枝打ち、送迎などの作業を担っている。
「近所の80代、90代の人を、歯医者や整形外科へ送迎することが多いです。(利用者と)年齢はあまり離れていないとはいえ自分よりは上ですし、できることは手助けしようと思います」と話した。

大手電機メーカーの元技術者で、現役時代は地域とのつながりはあまりなかったという。定年後、自由な時間が増えたので「人のためになることをしよう」と思い立ち、栃木県が地域活動に取り組む高齢者を養成する「シルバー大学校」に入学。同校に勧誘に来た赤羽さんから活動について聞き、サポーターに手を上げた。
「一つ一つは小さな作業ですが、いろいろな人に喜ばれるので『役に立っている』というやりがいを感じます。ボランティアの存在は社会に欠かせないとも思うようになりました。体が動く間、少なくとも80歳までは続けたいですね」と、笑顔で語った。

サポーターの格和薫さん

団体では送迎などの安全性を確保するため「有償運送運転者養成研修」の受講を推奨している。昨年は9人が受講し、費用は愛のカンパで賄われた。
「研修修了者が運転を担うことで、利用者側の安心感も高まります。愛のカンパで費用を賄えたのはありがたかったですし、今後も受講者を増やしたいと考えています」(赤羽さん)

また活動はサポーター自身にも、人とのつながりや楽しみをもたらしている。月1回のサポーター会議の後は、勉強会やレクリエーションを行っており、先日は床に敷いた網を踏まないように歩く「ふまねっと」というゲームで大いに盛り上がったという。また会議場所には学童保育所が併設されているため、サポーターと学童クラブに通う子どもたち、職員らが参加して芋煮会などのイベントも開いたことがある。

県営住宅に長く一人暮らしで、他人との関わりが少なかったある女性は、80代でサポーターになってから「外出の回数や人との出会いが増え、すごく楽しい」と話したという。
「様々な世代の人と関わる中で、サポーター自身が刺激を受け、活動を楽しんでいます。また以前は会議などの時『耳が遠くてよく聞こえない』というサポーターもいたのですが、愛のカンパでスピーカーを購入できて助かりました」(斎藤さん)

サポーター会議後の「勉強会」一例
愛のカンパで購入したスピーカー
サポーター会議後の「勉強会」一例

サポーターの新規獲得が課題 現役世代も巻き込みたい

一方で、活動には様々な課題もある。例えば高齢者宅にサポーターが出入りすることについて、サポーターと利用者双方が「近所の人などに不審に思われないだろうか」と不安を抱く、といったことだ。サポーターは名札を掛けるようにしてはいるが遠目には見えづらく、車にステッカーを貼ったり、Tシャツをそろえたりしたいが、費用面の課題があり実現できていない。

最も大きな課題が、新たなサポーターの獲得だ。斎藤さんは「活動を続ける中でサポーターの年齢が徐々に上がり、利用者数に対してサポーターの人数が足りなくなっています」と説明する。

利用者の過半数を占める女性からは「女の人に来てほしい」という要望も多い。しかし「女性サポーターを増やしたいのですが、利用者を自家用車に乗せて送迎することを、本人や家族がためらうケースなどもあり、難しいのが実情です」(斎藤さん)

矢板市南部に住むサポーターが少ないことも悩みだ。中心部から南部の利用者宅へサポーターを派遣すると、距離が離れているため利用料がかさんでしまうことが多い。
斎藤さんはこうした中で「現役世代も活動に巻き込むことで、担い手を増やせれば」と期待を込める。
「例えば仕事のない週末だけ、自宅近くの高齢者を担当するなど、無理のない範囲で活動に参加することもできます。ぜひ気軽にサポーター登録をしてほしいです」

また赤羽さんは連合に対して、遠慮がちにこんな要望をした。
「愛のカンパを頂けただけでも十分ですが、市内の連合の組合員に当団体のことをお知らせし、『サポーターをやってみませんか?』とお声を掛けていただけると、よりありがたいなと思います」

斎藤さん・赤羽さん(右側2名)のほか、副代表の小松清さん(左端)、連合栃木の金子源太郎副事務局長(左から2番目)も取材に同席

【サポーター募集のお知らせ】
矢板市に暮らす高齢者のちょっとした身の回りの困り事を助けてくれるサポーターを募集しています。
活動内容は、買い物支援、病院の送迎・付き添い、自宅周りの草刈り、ゴミ出し、室内での軽作業など、1回あたり30分~(依頼内容によります)。
あなたの空いている時間で活動に参加いただけませんか?

詳しくは、なかよしサポート矢板事務局へお問合せください。
■所在地 栃木県矢板市扇町2-5-18 
■TEL 070-4563-5390 <平日9時~17時>

矢板市近辺の皆様のご登録をお待ちしております。

 (執筆:有馬知子)

RANKING
DAILY
WEEKLY
MONTHLY
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  1. 1
  2. 2
  3. 3
RECOMMEND

RELATED

PAGE TOP