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労働相談Q&A

44.高齢者雇用(定年後の継続雇用制度)
Q
60歳定年後の継続雇用の希望が、「会社が決めた基準にあわない」との理由で対象外とされた。
A
法改正により、継続雇用制度は、希望者全員を65歳まで雇用することが義務づけられており、会社が一方的に基準を決めて対象外とすることは認められない。
法律のポイント
法改正(2021年4月1日施行)により、65歳までの雇用確保が義務づけられたことに加え、65歳から70歳までの就業機会の確保が努力義務となり、さらなる高年齢者就業確保措置を講じることが企業に求められるようになった。
解説
高年齢雇用安定法の継続雇用制度とは

 高年齢者雇用安定法は、公的年金の支給開始年齢の引き上げも踏まえて、65歳までの雇用確保措置を講ずることを事業者に義務づけている。定年年齢は60歳を下回ってはならず、企業は、①定年の引上げ、②継続雇用制度の導入、③定年の廃止のいずれかの措置を講じなければならない。
 さらに、2021年4月より施行されている改正高年齢者雇用安定法では、70歳までの就業確保が努力義務化された。
 なお、継続雇用を希望しない労働者は、60歳になったら定年退職をすることは可能であり、必ずしも65歳までの雇用を企業に対して義務づけるものではない。

改正高年齢者雇用安定法における高年齢者就業確保措置とは

 法改正により、65歳から70歳までの就業機会を確保するための努力義務が課されるようになったが、その内容は、①70歳までの定年引上げ、②定年制の廃止、③70歳までの継続雇用制度の導入のほか、④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入、⑤70歳まで継続的に事業に従事できる制度(a.事業主が自ら実施する社会貢献事業、もしくはb.事業主が委託、出資(資金提供、事務所スペースの提供等)する団体が行う社会貢献事業)の導入のいずれかである。
 労働者保護の観点からも、①~③の雇用による措置(継続雇用制度)が望ましく、④、⑤(創業支援等措置)についても、導入に当たっては過半数労働組合等の同意を得ることが求められている。

高年齢者就業確保措置を講ずるに当たっての留意事項

 上記の措置のうち、いずれかの措置を講じるのかは労使の十分な協議、高年齢労働のニーズに応じた措置を講じることが望ましい。複数の措置を講じることも可能だが、個々の高年齢者に配慮、本人の希望を十分尊重することが重要であり、高年齢労働者が従前と異なる業務を行う場合、研修や教育、訓練を必要に応じて行うことが望ましい。

労使協定による対象者の基準設定の禁止

 継続雇用制度を導入する場合に、過半数労働組合(ない場合は、過半数を代表する者)との労使協定により継続雇用制度の対象者の基準を設定することは認められない。
 ただし、厚生年金の報酬比例部分は支給開始年齢に合わせた経過措置が設けられており、2012年の法改正前に基準を定めていた事業主については、2021年までは63歳以上の人に対して、2024年までは64歳以上の人に対して、継続雇用制度の対象者基準の適用が可能となっている。

継続雇用制度の再雇用先の企業の範囲

 継続雇用制度の対象者を再雇用する企業は、自社に限らず、議決権の過半数を有する子会社、議決権の20%以上を有する関連企業となっている。なお、グループ内の会社で従業員の継続雇用を行う際は、継続雇用の事前契約が必要。

有期契約労働者への適用

 雇用確保措置は、有期労働契約が反復され、実質的に定年制の対象となる労働者と同等に考えられる場合は、この対象となり得ると解されている(厚生労働省「高年齢者雇用安定法Q&A」Q1-11)。

継続雇用が会社に拒否された場合の相談対応

 労働協約・就業規則等で、継続雇用制度がどのような内容となっているかを確認することが必要。その上で、労働組合がある職場なら労働組合に相談する。地位確認や損害賠償を求める労働審判や本訴、労働委員会や労働局での斡旋、地域ユニオンに加入した上での団体交渉も選択肢。

男女別定年は無効

 なお、公的年金支給開始年齢の引き上げスケジュールは、女性は男性よりも5年遅れだが、このことを以て、定年年齢の引き上げを男性よりも女性を5年遅らせて実施することは、公序良俗に反し、男女雇用機会均等法にも抵触するので注意が必要。

<参照条文>

高年齢者雇用安定法第8条、第9条
高年齢者雇用安定法施行規則第4条の3
高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針(令和2年厚生労働省告示第351号)

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