リーダーズボイス

連合リーダーの素顔に迫る Season2
第3回 袈裟丸 暢子 連合副会長・基幹労連事務局次長

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Season2 第3回は、第19回連合定期大会で副会長に選出された袈裟丸暢子基幹労連事務局次長にインタビュー。プロパー職員として国際活動、男女共同参画、労働条件、政策推進、政治活動など様々な部門で経験を積み、2023年基幹労連事務局次長に就任。今、日本でも広がりつつある分断や不寛容を危惧し、労働組合には、これまで以上に対話と共感の場を広げていくことが求められていると投げかけます。

袈裟丸 暢子(けさまる のぶこ)連合副会長・基幹労連事務局次長
1994年 造船重機械労連に入職、組織・広報、女性活動、国際を担当。2003年産別組織統合により基幹労連に入職、労働政策、政策推進、男女共同参画、国際を担当。 2010年全米鉄鋼労組(USW)、全米自動車労組(UAW)、国際機械工・航空宇宙労働組合(IAM)での研修、ハーバード大学労働組合プログラムに派遣。2012年基幹労連中央執行委員に就任、政策推進、男女共同参画、広報、政治、国際を担当。連合女性中央執行委員(~2025年)、金属労協常任幹事(~2023年)、厚生労働省労働政策審議会「勤労者生活分科会」委員(~2023年)、同「安全衛生分科会」委員(~2024年)を兼任。2023年基幹労連事務局次長(政治・国際室長)、2025年 同事務局次長(政策推進局/政治・国際統括)、連合副会長に就任。

世のため人のためになる仕事

—労働運動を始めたきっかけは?
大学で国際関係論を専攻し、1年間アメリカに留学しました。卒業が1年遅れ、バブル崩壊後の就職難の時期で、女子学生は特に厳しい状況でした。就職活動を始めるにあたって自己分析するなかで、「人の役に立つ仕事がしたい」という思いに気づきました。それで「世のため人のためになる仕事」はないかと就職活動をしながら求人雑誌を見ていたら、「日本労働組合総連合会(連合)」が職員を募集していたんです。 最終面接まで行きましたが、結果は不採用。ところが、しばらくして「造船重機労連」の方から電話がかかってきました。連合は全員採用したかったけれども人数に限りがあり、構成組織に声をかけたらしいんですね。そんな経緯で造船重機労連に採用され、労働運動の仕事の幅の広さと深さ、時代の変化にどう対応していくかという難しさも含めとても興味深く、あっという間に今年勤続32年となりました。

チャンスはたくさんもらえたが、課題もあった

—1994年に入職されてどんな仕事を?
組織部門に配属され、組織人員調査や青年活動、研修会、広報などの補佐をしながら組織面から労働組合について学ばせてもらいました。同時に、女性活動は主担当となりました。また、造船重機労連の伊藤祐禎委員長(当時)が、1993年にILOの労働側理事に就任されていて、その語学面でのサポートを担当することになりました。

いきなり女性委員会の運営や女性活動指針の策定を任されましたが、当時、造船重機労連の女性組合員比率は8%ほど。とくに現場にはほとんど女性組合員がいないという状況で、加盟組合にはなかなかピンと来ていなかったと思います。私自身も社会人になりたてで世の中や現場の実情をよく理解していない中で、方針策定に向けたこちらの思いと現場の意識のギャップに戸惑いました。それでも本部男性役員の力を借りながら、何とか造船重機労連として初めての「女性活動指針」をつくりあげることができました。

国際活動では、2年目から海外出張に行く機会をいただきました。はじめは、「日本は恵まれているんだな」と感じる程度でしたが、同じ働く者の立場で抱える課題は共通するものも多く、それぞれの国がそれぞれの国から学び、また力になる国際連帯の意義を感じられるようになりました。

—苦労されたことは?
男女雇用機会均等法施行から数年が過ぎ、女性にも責任ある仕事を任せてみようという動きが始まった初期の世代。また、造船重機労連としてせっかく採用した女性を活用しようという意思があったようで、チャンスはたくさんもらえました。一方で、女性が少ない職場環境での負担やハラスメントなど課題も多くありました。帰りの電車で涙が止まらなかったこと、夜、泣いたことも少なくありません(笑) 当時は、ぐっと我慢することしかできませんでしたが、今は時々「皆さん、私の『黒革の手帳』4冊目ですから、お気をつけください」って釘を刺しています(笑)。

アメリカの選挙運動と組織化を経験

—2003年、鉄鋼労連、造船重機労連、非鉄連合の産別統合により基幹労連の職員に…。
お互いの運動の歴史や考え方を理解し合いながらすり合わせをして、その上で基幹労連として、どういう運動をしていくのかを考えていくという創生期。新しく何かを創るためには時間をかけざるを得ず、夜遅くまでかかることもあり大変でしたが、労働運動の大先輩たちの経験談を聞きながら議論し、形にしていく過程はすごく楽しかった。

また、全国の現場をまわらせてもらいました。プロパーの私にとって、自分の知らなかった産業や地域の事情、そこで働く皆さんの思いを知ることは大変貴重な機会となり、「労働運動の原点は現場であり、ひとり一人の組合員だ」という、仕事をする上での土台を築くことができたと感じています。

—2010年11月から半年間アメリカへ。
基幹労連の産業と関わりのある全米鉄鋼労組(USW)、全米自動車労組(UAW)、国際機械工・航空宇宙労働組合(IAM)での実地研修とともに、ハーバード大学の労働組合プログラムを受講しました。2008年にオバマ大統領(民主党)が誕生し、その中間選挙の最中に渡米したのですが、到着翌日の朝4時半にはUSWの組織担当者がホテルに迎えに来て、選挙のビラ配りに行きました。工場の門前に立ち、車で通勤してくる組合員にビラを渡し、「投票に行ってね」と声をかける。戸別訪問にも借り出されました。労働組合が政治活動や選挙活動に関わること、ビラ配りや集会、電話作戦など日本の取り組みと同じなんだなと思いました。日本では選挙活動としての戸別訪問は禁止されていますが、大変興味深い経験でした。訪問先の民主党支持の高齢女性に招き入れられお茶をいただいたり、逆に共和党支持者であってもお互い冷静に対話したりしている姿はとても印象に残っています。

労働組合結成の認証選挙にも立ち会いました。アメリカでは全国労働関係局の監督下で無記名投票による選挙を行った上で、従業員の過半数の信任を得れば「排他的交渉代表権」を持つ労働組合として認められます。その選挙に向けて、会社側が反対工作をするケースが多く、アメリカにおける労働組合結成はハードルが高いと教わりました。緊張感漂う中、認証選挙立ち合いのために工場に到着しましたが、全国労働関係局の担当者が来るまで工場敷地内には一切入れない。アメリカの労使関係が想像以上に厳しいことを実感するとともに、アメリカの労働組合が時に激しい行動を取る背景が理解できました。同時に日本の労働組合が、民主的な労働運動を希求し、建設的な労使関係を築いてきたこと、その価値を大切にしなければと改めて思いました。

組合員の支持があってこそ

—2012年には基幹労連の中央執行委員に。
経験が認められうれしく思いましたが、女性役員特有のオーバーワークに直面することに。中執は各自、労働条件や政策推進、組織、政治などの専門分野と業種別部会を担当します。当時、女性役員が私一人だったこともあり、男女共同参画推進の担当が加わり、さらに連合や外部組織から「女性枠」の委員の要請があると、私が引き受けることに…。活動の幅が広がり貴重な経験の機会をもらえる有難さもありましたが、時間に追われ、睡眠時間が削られ、どれも中途半端になっているのではないかと悩みつつ誰にも愚痴を言えない。いつ辞めようかというギリギリの状態に追い込まれました。そのようなとき、救いになったのも「女性枠」。他の構成組織の女性役員と話をする機会が増えて、同じような状況にある中、みんな頑張っているんだと思うと励まされ、何とか苦しい時期を乗り越えることができました。

—2023年には事務局次長に。
立場が変わりましたので、自分が担当する分野だけでなく基幹労連全体に目を配るよう心がけています。その際は、基幹労連発足時から運動を見てきた経験も活かしたいと考えています。また、勤務管理をする立場になった今、意識しているのはプロパー職員が無理なくチャレンジできる環境をつくること。自分自身の経験から、キャリアにおける頑張りどころで、心身を壊さずに頑張れるよう、一人ひとりのチャレンジをサポートしていきたいと考えています。 基幹労連としての課題は、組織力の強化。コロナ禍の4年間、組合活動は大きな制約を受け、世話役活動も対話活動も十分できず、組織の力量低下が懸念されています。労働組合の原点は、一人ひとりの働く仲間。組合員の支持があってこそ、運動が進められる。改めて職場対話活動の再構築を進めています。

2023年 加盟組合の周年行事にて

男性の家庭進出と働き方の見直し

—振り返って男女共同参画は進みましたか?
私が働き始めた32年前と比べれば女性活躍や両立支援に向けた法整備、コンプライアンス遵守、ハラスメント防止対策など格段に進んだと思います。一方で、根本的な意識変化はまだ途上だと感じています。

「女性活躍推進」が打ち出された頃から、女性の人権よりも「労働力としての活用」が前面に出た政策が進められ、性別役割分担が残る中で働く女性の負担が増えた現実があります。また、子ども目線で考えたときに子どもを夜遅くまで預けて働くことが本当に良いことなのか、二重の負担を強いる女性活躍が今の少子化につながっているのではないかと思わずにいられません。

人口減少が進む中で、どうやって力を合わせて仕事も家庭も良くしていくか。ポイントは、男性の家庭進出と働き方の見直しではないかと考えます。「男女共同参画」なので、女性だけが変化を求められるものではないと思います。 こうした課題への対応策を考えていくうえでも、また年々女性組合員が増えている実態をふまえても、労働組合への女性参画は不可欠だと考えます。

基幹労連は、2024年の定期大会から女性特別代議員制度を正式に導入しました。議論を始めた10年ほど前は全面的な理解を得ることが難しかったのですが、後任者がしっかりと形にしてくれました。完成形での制度導入時には私から3人目の担当者となっていましたが、組織として運動を前進させるという感覚がストンと腹に落ちる経験となりました。

休日はあたりまえの日常生活を楽しむ

—趣味や休日の過ごし方は?
仕事柄、平日はたくさんの方にお会いするので、土日は自宅でゆっくり過ごし、家事や読書などでリフレッシュしています。朝起きてお味噌汁を作って、洗濯して掃除して夕飯の買い物に行き、本を読んだり、お昼寝したり…。そんな日常の生活が楽しいんです。最近、ワクワクしながら読んでいるのは、西洋美術の本。絵画の場面や構図の宗教的意味や歴史、技法などが詳しく解説されていて、いつか世界の美術館巡りを趣味にしたいと夢見ています。

—尊敬している人は?
これまでに出会ったすべての人。自分以外の人は、私が歩めなかった人生を見せてくれる。どんな方も、1対1や少人数で会って話を聞くと、大変だったこと、うまくいったこと、失敗談を面白おかしく話してくださり、お一人お一人から学ぶことがいっぱいで、すごいなって思うんです。これまでお会いし関わったすべての方に感謝しています。

—座右の銘は?
自分に言い聞かせているのは、「生きているだけで丸儲け、死ぬこと以外はかすり傷」。人生の出来事は、どんな失敗も、生死に比べたら大したことない。そう考えれば、どんな困難なことにもチャレンジできると…。いろんなことを経験するのが人生の醍醐味だと思っています。

—海外に行く機会が多い中で、特に印象に残っている場所はありますか?
数年前、インドで船の解撤現場を視察しました。海洋汚染やアスベスト曝露対策が講じられたクリーンで安全な現場を視察し、造船国である日本の労働組合として基幹労連が政府への働きかけなどを通じて取り組んだ成果を確認できたことは印象深いものがありました。一方、当時まだ残されていた危険な現場では、素足にサンダルで防護具もない労働者が炎天下作業をしている姿を目のあたりにしましたし、細かな電子部品などを手作業で解体する、幼い子どもを連れた女性のインフォーマル労働者もたくさんいることを知りました。こうした方々のために尽力するインドの労働組合の仲間の熱意と行動力に心を打たれたのと同時に、国際労働運動のなかで基幹労連としてできることはしっかり取り組んでいきたいという思いを抱きました。

もう一度行きたい場所として印象に残っているおすすめスポットは、南アフリカのケープタウン。自然豊かで市内から見えるテーブルマウンテンや多様な植物、野生動物に心癒されました。なかでも大西洋とインド洋がぶつかる喜望峰は荒々しく、ボルダーズビーチの遊歩道から見られるペンギンたちの姿が愛くるしくて。もう一度訪れたい場所です。

五大陸を訪れさまざまな国や文化に触れてきましたが、ある時、気づいたんです。私にとってはエキゾチックな異国の地でも、そこに暮らす人たちにとっては日常の生活の場なのだと。だから、滞在中は敬意をもって過ごすよう心がけています。ひとつひとつの渡航を積み重ねて、みんな巡り巡ってつながっている、極端に安いモノにはそれなりの理由があると感じるようになりました。自分が日本で生活していく上でも、常に地球儀を思い浮かべながら、倫理観を持った行動をしなければと思いました。

—連合副会長としてひと言
今の生活の苦しさや将来に不安を持つ人の中には、「この状況を変えてくれるかもしれない」と、極端な主張に期待してしまう方もいると思います。両極端な主張のぶつかり合いが社会の分断を生む、そんな状況が日本でも起こりつつあるのではないかと危惧しています。労働組合は、お互いの考えを理解し合い、その上でどうするかという対話の場をつくることができる数少ない組織。「個人」と「国・企業」をつなぐ中間組織として、これまで以上に労働組合、そして連合が必要とされています。対話と共感の場を広げていけるよう、私も力を尽くしたいと思います。

(構成:落合けい)

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