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【前編】ありそうでなかったかも!
産業の枠を超えて経験や課題を共有
航空連合×電力総連 女性役員交流会

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連合は、2030年までに女性役員比率を50%にする目標を掲げた「連合ジェンダー平等推進計画」(フェーズ2)を展開中。連合に加盟する構成組織(産業別組織)でも、様々な取り組みが進められているが、航空連合と電力総連がコラボして女性役員交流会を開催しているという情報をキャッチ!
女性組合員比率が6割という航空連合と1割台の電力総連、背景は大きく異なるもののジェンダー平等参画推進に向けて共通する課題も多く、参加者からの継続を求める声に応えて、今年4月に第2回目の交流会が開催されるという。ありそうでなかった産業の枠を超えた女性役員交流会。全プログラム同行取材を敢行した。

■前編レポート:女性役員交流会完全同行取材編

航空連合・赤池 永梨奈(あかいけ えりな)副事務局長
航空連合は組合員数4万6159人、うち6割が女性(主に客室乗務職)を占めているが、職種別に見てみると空港グランドハンドリング、整備職においてはまだまだ男性が多く、職種によってジェンダーバランスは大きく異なっている。

電力総連・白鳥 優一(しらとり ゆういち)組織局部長
電力総連は242加盟組合、組合員数19万5000人。北海道から沖縄まで全国の「発電」「送電」「配電」「電気工事」など電気産業に関わる仲間で組織されている。女性組合員比率は14%と低いが、最近は女性役員も増えている。

きっかけは「連合ジェンダー平等・多様性推進委員会」

なぜ、航空連合と電力総連なのか。まず、その疑問を解き明かしておこう。
交流会の事務局を務めるのは、航空連合の赤池永梨奈副事務局長と電力総連の白鳥優一組織局部長。コラボのきっかけは何だったのか。

「連合ジェンダー平等・多様性推進委員会です。電力総連の壬生会長と航空連合の内藤会長が共に副委員長を務め、私と赤池さんも特別執行委員として参加。電力総連は女性組合員比率が14%と低い組織で労働組合の積極的な女性参画に努力してきたのですが、航空連合は女性組合員比率が6割と聞いて、どのように取り組んでいるのか知りたいと意見交換を求めたのがきっかけです」と白鳥さん。
赤池さんは「2023年10月に支部(JAL労組客乗支部)から航空連合に着任し、ジェンダー平等推進を担当しています。航空連合も連合のジェンダー平等推進計画に基づいて計画を進めていますが、目標達成には難しい状況。もっと他産別の取り組みを知り、自組織にはどんな視点が足りないのかを発見したいと思っていた矢先、電力総連からご提案いただき、お受けしました」と語る。

両組織の女性役員のフォロー体制はどうなっているのだろう。
「電力総連では、電力総連執行委員会のもとに位置する常設の活動委員会として女性委員会を設置しています。役割は、様々な組織活動への積極的参加や女性活動の充実・強化、女性役員のエンパワーメント。一人ひとりのステップアップに向けて、連合の集会や各種会議への参加や研修などの機会を提供しています。今回の交流会には全国から女性委員会のメンバーが参加していて、いちばんの目的は他産別との交流で刺激を受け、参加者のエンパワーメントを高めることです」と白鳥さん。
「航空連合では、新任女性執行委員を対象にしたWINC(Women’s Interactive Networking Community)を年3回開催しています。素晴らしい人材が多いのに女性リーダーは少ない。労働組合の女性リーダーを育成、発掘、連携することで、社会で活躍するリーダーの育成にもつなげたい考えています。女性組合員比率は高いとはいえ、整備やグランドハンドリングの現場は男性が中心。女性同士つながる機会が少ないと悩む役員も多いため、女性が集まることで互いの背中を押し合いながらエンパワーメントを高めています」と赤池さん。

産業を超えての交流は労働組合しかできない

第1回目の交流会は2024年7月開催。どんな成果があったのか、なぜ継続することにしたのか。
「電力総連として女性参画が進まないのは女性組合員が少ないからだと言い訳してきた部分もあったのですが、交流会を通じて数の問題ではないと気づかされました。女性組合員が多い航空連合も女性役員を増やすために様々な努力をされていることを知り、おおいに刺激を受けました。参加者も、仕事や組合活動についてだけでなく、接客のプロからメイクやマナーについて学べたと感激していました。互いの職場を知りたいという要望があり、第2回は職場見学を組み込んだプログラムを企画しました」と白鳥さん。赤池さんは「女性組合員比率の高い航空連合は、連合構成組織の中でも、ジェンダー平等参画や女性活躍を牽引する立場にあると思っているのですが、この課題に特化した産別交流は継続的にできていませんでした。電力総連の女性委員会のみなさんは本当にパワフルで、参加者からは、もっと頑張ってリードしなければと改めて思わせられたと…。ジェンダー平等参画は、担当者は熱意をもって取り組んでいても、なかなか全体の課題になりにくい。ひいては一企業の意識だけでなく、社会全体の意識も変わっていかなくてはならない。推進するためには、他社の労働組合との交流が必要不可欠です。どんな取り組みをしているのか互いに共有し合い、多くの気づきを得て、意識の変化をもたらす。その共有を通してジェンダー課題の位置づけも高めていければと思っています」と赤池さん。
そして「産業を超えての交流は労働組合しかできない。もっと新たな発見ができる機会を広げて、課題や成果を共有できるようにRENGO ONLINEで発信してください!」と口を揃えた。

安全・安心の機内食製造工程に感激!

では、同行取材スタート!
第2回「女性役員交流会」の会場は、ANAケータリングサービス(ANAC)川崎工場。羽田空港に隣接し、ANAのインハウスケータリング会社として安全で高品質な機内食を提供している。同社とANAC労組の全面協力を得て、機内食の試食や職場見学もプログラムに組み込まれているという。参加者の皆さんと最寄り駅に集合し、専用バスで会場へ。

航空連合の長谷川事務局長、電力総連の大森会長代理の開会挨拶を聞きながら、ランチタイム。ANACが製造する機内食(国内線プレミアムクラス!)をいただく。盛り付けも美しく、優しい味わいにあちこちで感嘆の声が!

この日、参加した女性役員は、航空連合から7名、電力総連から11名の計18名。4班に分かれてのグループワークの準備をした後、ANACの工場見学へ。安全・安心の基盤となる徹底した衛生管理に加え、DXを取り入れながらも下ごしらえ・盛り付けなどの工程や様々な機内用品の準備は「人」が支えていることに感動。多言語の掲示など多様な人材が働きやすい職場の工夫も随所に見られた。
フライト中のいちばんの楽しみである機内食が、こんなに多くの人の手を経て、こんなに高度なオペレーションシステムの下で準備されているなんて…。そして、いちばん印象に残っているのは、案内してくれたANAC労組の皆さんの丁寧なアテンド。この仕事に誇りをもって働いていることが伝わってきて胸が熱くなった。

女性が組合活動に参画するために必要なことは

2時間の工場見学を終えて白い衛生防護服姿で記念撮影を行い、グループワークへ。
テーマは「私が思う女性が組合活動に参画するために必要なことは」。
趣旨について、赤池副事務局長は「連合の計画に基づいて女性役員を選出しようとしても、女性が少ない職場では難しい、組合役員の仕事はハードで育児や介護を担う女性には頼めないと言われてきました。でも、それでは何も変わらない。女性たちが組合活動に入る一歩を踏み出すには、組合の活動や運営の側を変える必要がある。そういう問題意識を共有してグループワークを進めてほしい」と説明。白鳥部長は「前回は、職場や労働組合の活動にについて悩みや不満を出し合い、共通の課題を発見しましたが、今回はステップアップして、現状を変えるには労働組合にどんな見直しを求めていけばいいのか、自分たちはどういう行動が起こせるのかを話し合ってほしい」と投げかけた。

グループワークの時間は40分。限られた時間ながら、前回から参加しているメンバーも多く、活発に意見が飛び交う。その内容を4つの班の発表から紹介しよう。

1グループ:時間を決めて時間を意識した活動を
解決すべき課題は「負担が大きい」「時間がない」。これは女性に限った問題ではない。組合の活動のスタイルや運営を見直し、みんなが参加したいと思える組織をつくっていくことが必要。具体的には、時間を決めて時間を意識した活動にする。業務の棚卸しをして効率化をはかり、組合役員、組合員がつながる機会を構築する。自分たちができることとしては、モーニングやランチの時間にミーティングをする。
また、今回の交流会のように、他組織の多様な意見や取り組みを知り、相互に発信や提案ができる機会も広げてほしい。

◆2グループ:労働組合の基本的な役割を伝えることも重要
解決すべき課題は「周囲の理解(職場、家族)」「休日の活動」。理解を得るには、活動内容をもっとオープンにして発信していくことが必要。ただ、堅いイメージを払拭しようとレクやイベントをメインにした発信になりがちだが、労働条件交渉など労働組合の基本的な活動や役割ももっと伝えていくべき。休日に活動が入る組織では「組合役員の仕事は大変」だと思われやすい。背景に職場の人員不足がある場合は、まずその解決に取り組む。休日の活動をサポートする制度がある組織は、それを組合員に説明し、大変じゃないことを理解してもらう。

◆3グループ:組合ってこんなに楽しいよとアピール
解決すべき課題は「女性役員が少ない」「男性中心の活動」「飲み会が多い・長い」。
解決のアイデアとして、事務局の女性役員を増やし女性が参画しやすい雰囲気をつくる。男性中心のイメージを払拭するために活動内容を具体的に発信する。飲み会の代わりに、会合の時間内で飲食・懇談ができるスペースを確保する。育児中の女性が参加しやすい時間帯で会議を設定し、リモート参加を可能にする。
自分たちができることは「組合ってこんなに楽しいよ、組合じゃないとできないことがたくさんあるよ」と発信すること。「一緒に誰か連れてきて」と呼びかけ、仲間を増やしていこうという雰囲気をつくること。

◆4グループ 男女を問わず、組合活動を理解してもらう取り組みが必要。
課題は、「女性が少なく、男性がやっているというイメージが強いこと」。小さいお子さんがいる間は、両立が難しい環境もある。周囲の理解があって活動できているという話も出たが、ランチタイムに執行委員会を開催する、リモート会議を取り入れるだけでも参加しやすくなる。自分たちに何ができるかと考えた時、コロナ禍の影響もあって、女性だけではなく、若い世代の組合員に組合活動への理解が浸透していないという声が多数出た。男女を問わず、組合活動を理解してもらう取り組みが必要。

まとめは、赤池副事務局長から。「たくさんのアイデアありがとうございます。女性は、結婚・出産などのライフイベントを機に時間をより意識して働くようになる。一方、男性はそのことで仕事において昇進・昇格を重視するようになり、より結果を出そうと、長く働く場合も多い。それぞれの意識の変化も理解しつつ、業務と組合活動という時間の制約がある中で、誰もが活躍できる環境を整えなければならない。すぐにでもできる対策としてランチタイムやリモートの活用を広げてほしいと思いますが、実は、そのような提案も女性役員が少ないとなかなか提案しにくい。私も航空連合の事務局では女性一人ですが、女性役員が少ない組織の女性からは、本当に私が発言していいのか、この意見が通るのかという不安を感じるといった声も挙がっています。女性組合員は増えているのに、女性が少人数の体制では持続可能じゃない。「現在の活動スタイルを見直す」という課題に取り組むためにも、やはり女性役員の複数体制は必要だと痛感しているところです。今日、ここに産別の枠を超えて女性役員が集うことで、様々な不安を吹き飛ばし、エンパワーメントすることができたのならうれしく思います」と締めくくった。

さて、実り多い交流会の最後のクライマックスは、連合公式キャラクター・ユニオニオンとの記念撮影。充実した1日に感謝。

(取材・構成 落合けい)

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