労働・賃金・雇用

 

賃金の通貨払いについて

 賃金の支払い方法について、労働基準法第24条では、「通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定めています。また、第2項において、「毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」と定めており、これを賃金支払いの5原則といいます。

 賃金の「通貨払い」とは、現金で支払うことです。しかし、多くの人は、銀行や証券総合口座への振込により、賃金を受け取っています。振込により支払う方法は、通貨払い原則の例外になります。

 例外の方法については、労働基準法施行規則第7条の2において、①銀行口座②証券総合口座が定められています。労働者からの同意を得た場合にのみ、例外方法で支払うことが可能です。

 今回、労働基準法施行規則が改正され、①②の方法に加えて③「指定資金移動業者※の口座」が追加されました。

※資金移動業者とは、銀行以外の業者で、送金や振込といった為替取引を行うことができる業者をいいます。
賃金支払いが可能な資金移動業者の要件

 賃金は労働の対価であり、生活を送るうえで欠かせないものです。そのため、賃金が支払われる口座には安全性と確実性が確保されなくてはなりません。
 これを踏まえ、賃金を振り込めるのは、一定の要件を満たす業者(以下「指定資金移動業者」という)の口座に限定されることになりました。

(指定資金移動業者の要件) 次の①~⑦すべて満たすことが必要です
  1. ① 破産等に速やかに労働者に保証する仕組みを有していること。
  2. 口座残高の上限額を100万円以下に設定又は100万円を超えても速やかに100万円以下にするための仕組みを講じていること。
  3. ③ 不正利用などで労働者に損失があった時に、その損失を補償する仕組みを有していること。
  4. ④ 最後に決済など取引した日から少なくとも10年は口座残高が有効であること。
  5. ⑤ 口座資金を1円単位で現金化でき、かつ、少なくとも毎月1回は手数料を負担することなく現金化ができること。また、口座への資金移動が1円単位でできること。
  6. ⑥ 賃金の支払に関する業務の実施状況と財務状況を適時に厚生労働大臣に報告できる体制があること。
  7. ⑦ ①~⑥のほか、賃金の支払の業務を適正かつ確実に行うことができる技術的能力があり、かつ、十分な社会的信用があること。
指定資金移動業者口座への賃金支払いにあたっての必要事項

 指定資金移動業者口座への賃金支払いを行うためには、以下の手続きが必要です。

労使協定の締結
会社は、労働組合または労働者の過半数を代表する者と、①対象となる労働者、②対象となる賃金とその金額、③実施開始時期などについて労使協定を締結することが必要です。
労働者への賃金支払い口座の選択肢の提示
会社は、資金移動業者口座への賃金支払いを強制することはできません。また資金移動業者口座のみを提示することも禁止されており、労働者が銀行口座又は証券総合口座への賃金支払も併せて選択できるようにしなくてはなりません。
労働者への説明
会社は、銀行との違いや具体的な仕組み(口座の上限額や破綻時の補償、アカウントの有効期限)などについて労働者に説明することが必要です。なお、説明は資金移動業者が代わりに行うこともできます。
労働者の同意取得
STEP3を踏まえ、労働者が資金移動業者口座への支払いを希望する場合、同意書を使用者に提出します。

 連合は、今後も賃金の安全性・確実性の確保に向け、周知徹底や、関係省庁の適切な監督指導・連携強化がはかられるよう、引き続き取り組みを進めていきます。

検討の動向
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