事務局長談話

 
2022年10月26日
資金移動業者の口座への賃金支払に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.厚生労働省と金融庁の緊密な連携が不可欠
 本日、労働政策審議会労働条件分科会(分科会長:荒木尚志東京大学大学院教授)は、厚生労働大臣より諮問がなされた「労働基準法施行規則の一部を改正する省令案要綱」(以下、「省令案要綱」)について、「おおむね妥当」とし、労働政策審議会会長へ報告した。省令案要綱では、資金移動業者の口座への賃金支払に関し、連合が主張してきた資金保全の仕組みや不正利用時の損失補償、厚生労働大臣に対する報告体制構築などについて、一定整備された。しかし、これらはあくまで労働基準法施行規則における上乗せ規制である。資金移動業者を規制している資金決済法は金融庁が所管しており、厚生労働省との緊密な連携が不可欠である。

2.金融庁による厳正なモニタリング・指導監督の徹底を
 賃金は労働基準法第24条において「通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」ことが原則として定められている。現行認められている銀行振込、証券総合口座への振込は、あくまで賃金の通貨払い原則の例外である。資金移動業者の口座も例外として認めるのであれば、厳格な規制や指導監督が求められることは言うまでもない。もともと送金のための業態である資金移動業は、銀行に比べて緩やかな規制となっていることを踏まえれば、銀行と同程度の安全性と確実性が確保されるよう、金融庁は厳正なモニタリングおよび指導監督を徹底すべきである。

3.労働の対価である賃金の安全性・確実性確保に向け取り組む
 IT技術の発展や社会・経済環境の変化を受け、資金移動業者を含む資金決済法が施行されたのは2010年であり、業界としての統一的な取り組みは緒についたばかりである。また、金融庁と厚生労働省が共管する複雑な仕組みであることに加え、ポイントで支払われるのではないか、個人情報は保護されるのかなど、制度に対する誤解や不安の声もある。政府や業界団体はこうした声に真摯に対応するとともに、労使の正しい理解のために仕組みについてわかりやすく周知すべきである。連合は、この間資金移動業者の口座への賃金振込に関し、問題点を整理・主張し、シンポジウムを開催するなど世論喚起に取り組んできた。労働者の賃金の安全性・確実性確保のため、来年4月1日の施行に向けて引き続き取り組んでいく。

以 上