(月刊連合2022年5月号転載)
皆さま、こんにちは。5月、新緑のまぶしい季節になりました。新入社員の方は入社して1ヵ月がたったところですね。5月は昔から、「5月病」の時期として有名です。
5月病というのは、4月に新しい環境に入った人が、ゴールデンウィーク明け頃に体調を崩してしまうことを指して言われてきました。医学用語ではありませんが、昔からよくあることとして、慣習的に言われてきたのですね。最近は、4月は研修で5月から配属になることも多いので、1ヵ月ずれる6月病という言葉も出てきているようです。
新入社員にとって、初めての職場は期待と不安に満ちたものです。初めは懸命に適応しようと突っ走っていたのが、1ヵ月くらいたったところでどっと疲れが出る、というのはよくあることです。単なる緊張や疲れであれば、少しゆっくりすればまた元気が出てきます。しかし、それほど単純でない場合がしばしばあります。
初めて就職した人にとっては、仕事の現場は入社前に思い描いていたものとはずいぶん違うかもしれません。大学では優秀だった人も、仕事には戸惑うことも多いでしょう。向いていないのではと考え始めるかもしれません。それらはストレスとなって、心身に負荷がかかる要因になります。
そんな時こそ職場の上司や先輩など、周囲の人に相談してほしいものです。周りの人は新人が相談してきたら、「チャンスだと思って」是非話を聴いてあげてください。「そのくらい頑張って!」「学生気分は抜け出さないと!」「みんな乗り越えてきたんだ!」といった叱咤激励はちょっと待って。勇気を出して相談したのにそういう風に言われたら、もう相談なんかしない、と思ってしまうかもしれません。
チャンスだと思って、というのは、話してくれるということは、援助の可能性ができたということだからです。相談をされたら、まずは「どうした?」と聴いてあげてください。話が一段落するまで、さえぎらずに聴くことができますか?
これは実は結構難しいことで、多くの人は、相手が話している途中で自分の考えを話し始めてしまいます。とにかく、まず話を聴きましょう。
話をするのは解決がほしいからとは限らない、ということも念頭においておきましょう。辛さをただ聴いてほしい、ということがあります。辛いことを上司が「そうなんだね」と聴いてくれるだけで、ほっとする場合もあるのです。助言をする前に、まずは相槌を打ちながらしっかり聴いてみましょう。聴いていることが相手にわかるように聴くのです。
もし新人の対応に困ったら、上司の人も周囲に相談しましょう。ひとりで抱え込まないということです。相談してみようとすると、相談することのハードルも実感としてわかるでしょう。弱音を吐くようで気が引けたり、人の忙しさに遠慮したり、理解されないかも、と思うかもしれません。
互いに相談し、コミュニケーションを取りながら問題をクリアしていきたいものです。
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矢吹弘子 やぶき・ひろこ
矢吹女性心身クリニック院長
東邦大学医学部卒業。東邦大学心療内科、東海大学精神科国内留学を経て、米国メニンガークリニック留学。総合病院医長を経て1999年心理療法室開設。2009年人間総合科学大学教授、2010年同大学院教授、2016年矢吹女性心身クリニック開設、2017年東邦大学心療内科客員講師。日本心身医学会専門医・同指導医、日本精神神経学会専門医、日本精神分析学会認定精神療法医、日本医師会認定産業医。
主な著書:『内的対象喪失-見えない悲しみをみつめて-』(新興医学出版社2019)、『心身症臨床のまなざし』(同2014)など。
