リーダーズボイス

連合リーダーの素顔に迫る Season2
第2回 近藤 英弘 連合副会長・電機連合副会長

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Season2 第2回は、第19回連合定期大会で副会長に選出された近藤英弘電機連合副会長にインタビュー。様々な場面で、人と人、組織と組織をつなぐ役割を担ってきた近藤副会長。「課題の最適な共通解を見いだしていく過程には困難も多いが、そこに労働運動が持つ楽しさも感じる」という、類い稀な調整力の背景に迫ります。

近藤 英弘(こんどう ひでひろ) 連合副会長・電機連合副会長
福井県出身。1990年松下電器産業株式会社(現 パナソニックHD(株))入社。松下電器産業労働組合中央執行委員 、パナソニックエレクトロニックデバイス労働組合副中央執行委員長、同書記長、同中央執行委員長、パナソニックデバイス労働組合中央執行委員長等を歴任。2014年よりパナソニックグループ労働組合連合会で副中央執行委員長、同書記長を務め、2020年に電機連合副中央執行委員長、2024年7月より役職名称変更で副会長となる。2025年連合副会長に就任。

技術部門と製造部門をつなぐ仕事に

—労働運動を始めたきっかけは?
1990年、松下電器産業株式会社に入社しました。同期の新入社員は約1800人。まだバブルの余韻が残っていた時代でした。会社は社内分社制を取っていて、私は電子部品会社に出向という形で生産技術社員として配属されました。仕事は工場の生産システム構築とそのための設備設計からメンテナンスなど幅広く担当していました。製造現場のベテラン班長の厳しい要望に耳を傾け、若手技術者と議論を重ね、両者の意見をすり合わせながら、より安全で効率的な設計にあたりました。今思えば、技術部門と製造部門をつなぐ仕事でもあり、その中で相互理解や信頼関係のつくり方を学ぶことができました。それは、のちの労働組合活動においても私の大きな支えになったと思っています。

入社4年目に組合の職場委員をしていた先輩から「バトンタッチするからね」と声を掛けられ、後任を引き受けました。それが組合活動のスタートです。折りしもバブルが崩壊し、会社側から様々な経営改革案が打ち出され始めた時期でした。年功型の賃金制度に実力主義を導入したいという提案もなされ、職場説明会では、ベテラン組合員から厳しい言葉を投げかけられました。職場委員として、それを受けとめ意見をまとめていくのは簡単なことではありませんでしたが、そこでも技術も製造もわかるという自分の立ち位置に助けられることは多かったですね。

労働組合という選択もいいのでは

—職場委員を2年務めた後、副分会長に…
分会といっても組合員数400名超の大所帯。職場委員は「世話役活動」が中心ですが、分会役員は労使協議などを通して経営問題にも携わることになります。仕事の領域を超えて様々なことを必死で勉強しました。 その頃、労働組合(役員)という選択もいいのではと思う出来事がありました。ある時、部長さんと現場の班長さんの2人が同時に定年退職の日を迎えられ、花束をお渡しして自宅までお送りするというセレモニーがありました。現場の班長さんの周りには大勢が集まり、涙を流しながら別れを惜しんでいたんです。その班長さんは支部の副委員長をされていたと後ほど知りました。人生60年で考えれば、部長をめざすほうがいいのかもしれませんが、人生80年で考えれば、労働組合で活動するのも悪くない。人とのつながりが人生を豊かにしてくれるかもしれない。ふと、そんな感覚を覚えました。

電機連合の海外研修に参加

—それで専従役員に?
そういうわけではないのですが、副分会長を2年務めた後、電機連合の海外研修に参加することになり、その時に専従役員となりました。

国内で基礎研修を受けた後、アメリカの大学が監修する労働組合役員向けの10週間の集中講座を受講。アメリカの労働運動は産業別労働組合が主流で、労使関係も敵対的であることが特徴です。いきなり「なぜ日本人は過労死するのか?」と質問されて答えに窮しましたが、労使協調的な日本とは異なるスピリッツを持つ人たちとのディスカッションは、たいへん刺激的でした。印象に残っているのは、アメリカの労働組合の「弱者を守り抜く」というスタンスです。多少法に触れるようなことがあったとしても守り抜く。なぜそこまでするのかと聞いたら「その人たちを守るためだけではない。まだメンバーシップではない多くの労働者も、労働組合が何をしているのかを見ている。弱者を守り抜く姿を見れば、自分も守ってもらえると思ってメンバーに加わってくれるはずだ」と…。

オープンショップ制のアメリカの労働組合にとって組織化は最優先課題。ユニオンショップ制が多い日本とは発想が違うと感じましたが、組合の取り組みをしっかりアピールするという姿勢は見習うべきところがあると思いました。また、大学に通う正規学生とのセッションもあり、学生からすればアカデミックに労使関係について議論したかったのかもしれませんが、現場に根ざした労働組合の立場からの発言にも興味深く耳を傾けてくれました。

その後、イギリスの大学で1年間、雇用制度や労使関係を学びました。イギリスの労働組合も産業別組織が中心ですが、当時、日本的労使関係は日本モデルと呼ばれ注目されていました。日本の労働組合からの留学生を受け入れてくれた先生には、アングロサクソン的な労使関係に対して、異なる発想もあることを示したいという思いがあったのではないかと思います。受講生は、人事・労務部門のマネージャーをめざす人が多い印象で、「日本の労働者は経営者に対してどういう意識を持っているのか」とよく聞かれました。イギリスでの生活は家探しから何から何まで自分で段取りできて楽しかったです。異なる文化に触れる貴重な経験でしたが、帰国したら「やっぱり日本はいいなあ」とほっとしてしまいました。

ライフデザインセンターで組合員をサポート

—帰国後は?
松下電器労組の中の電子部品関係の10支部を統括する部品連合支部の執行委員として、全般的な組合活動について学んだ後、2002年に松下電器産業労働組合の本部執行委員に。最初の2年間は、組合役員教育や組合員向けマネーライフプラン、キャリアアップ研修など会社生活だけでなく人生を見つめるライフデザインセンターを担当しました。年功序列で定年まで勤めあげるという価値観が揺らぎ、それに対応した人事処遇制度の見直しが進められ、組合員の意識や価値観が多様化する中で、一人ひとりの生活やキャリアをどうサポートするかは、労働組合にとっても重要な課題になっていて、やりがいを感じました。

その後は賃金・協約を担当。当時は賃金体系維持が精いっぱいで、ベースアップは500円、1000円という比較的低額での妥結を余儀なくされましたが、電機連合の関係委員会に参加する機会が増えて、その存在をより身近に感じるようになりました。

任期を終えて、2006年には職場に戻る予定でしたが、そのタイミングで労働組合の組織改革が行われました。出身の部品連合支部が単一労働組合に再編されることになり、その新しい単組(パナソニックエレクトロニックデバイス労働組合)の副委員長、後には書記長、委員長を務めることとなりました。

—そして、2014年にパナソニックグループ労連の副委員長に。
単組ではある程度トップダウンで活動を進めることが可能ですが、連合体では、各加盟組合の事情を尊重しながら調整を行い、みんなが納得できる解を見つけだし、単組がやることと労連がやることのベストミックスを見いだしていく必要があります。単組に任せる部分が多すぎると非効率が生じるし、労連で引き受けすぎると、画一的で多様性が失われた運動になりかねません。組織財政も含めたこのバランス調整は、目立たないけれども、労働組合の力量を高めるために重要な課題であると思っています。

最適解を見つけるまでには“産みの苦しみ”がありますが、その過程を通じて関係性が広がり深まっていくことに楽しさも感じていました。

—コロナ禍の2020年夏に電機連合の副委員長に。
大阪から東京へ。その年の定期大会はオンライン開催で、本部でのリモートワークも始まっていました。

担当は、産業・社会政策、組織、政治、国際、企画など。 特に、働く人たちの安全・安心の生活に深く関わる政治活動、労働組合運動を進化させていくための企画活動は、ますます重要になっているとの認識から、電機連合の全部門にまたがる横ぐし機能と位置づけた運動の実践も始めています。

良い休息から、良い仕事が生まれる

—趣味や推しは?
落語が大好きで寄席にも足を運びます。登山も少々。東京に来てからは、筑波山や高尾山、陣馬山などでの山歩きを楽しんでいます。プロ野球は「近鉄」時代からの「オリックス」ファン。オリックス出身の山本由伸投手の大活躍は嬉しい限り。また同郷(福井)の吉田正尚選手も日々の活躍を楽しみにしています。

—尊敬している人は?
上方落語の新境地を拓いたと言われる桂枝雀師匠です。動きのある語りが素晴らしく、「場の雰囲気が緊張しているときに、ふっと場を和ませるとそこに笑いが生まれる」という「緊張の緩和」論をとなえられましたが、これは落語に限らないのではないかと思っています。

—座右の銘は?
「『やれ』でやるより『やる』でやる」。どうせやるなら、いかに楽しくやるかを考えたいですね。

—ワークライフバランスで心がけていることは?
良い休息から良い仕事が生まれる。休むために働くのではなく、“どう休むか”を考える「休み方改革」こそが、ワークライフバランスの向上につながると思います。私自身は、仕事を家に持ち帰らない、プレッシャーを感じることがあってもくよくよ悩まないのがマイルール。東京に来て6年目になりますが、まだまだ見ていないところ、経験していないことがたくさんあるので、積極的に行動していきたいと考えています。と言っても実際は、休日に隅田川テラスや日本橋、室町、大手町あたりを散策するレベルで満足していますが。

—好きな本や映画は?
村上春樹ファンで作品は一通り読んでいます。東野圭吾作品も好きですね。最近はもっぱらデジタルブックでの購読ですが、面白そうだと思って読んだ本の履歴をみると、そのほとんどが本屋大賞受賞作品でした。文学的なものではなく読んで面白い大衆的な本が好みなのだと思います。最近観た映画は、話題の『国宝』や『爆弾』です。

—連合副会長としての抱負は?
産業の枠を超え、すべての働く人たちのための運動を進めていくというのは、これまでにない新鮮な経験。私は、産別では副会長の任についておりますので、他の副会長のみなさんより加盟組合に近しい位置にいるとの認識をもって、肩ひじ張らず、素直に発言していければと思います。

(構成:落合けい)

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