地域で働く人を支える「縁の下の力持ち」、地方連合会の取り組みを紹介する本シリーズ。連合福井は2024年10月にウェブサイトを一新し、連合のマスコットキャラクター「ユニオニオン」が、ご当地ならではの「恐竜」に乗ってお出迎えするキュートなサイトに生まれ変わりました。シンプルな情報発信に徹する地方連合会も多い中、あえて独自のサイトに力を入れる理由とは?記事の最後には福井の誇るB級グルメ「ボルガライス」秘話(?)もあるので、ぜひご一読を!
女性の意見反映し「かわいらしさ」を押し出す 身近さを感じてほしい
連合福井が半年かけてリニューアルしたウェブサイトは、トップページに恐竜に乗ったユニオニオンや「くみあいナス」などのキャラクターが散りばめられ、文字も丸めのフォントが採用された柔らかいデザイン。広報担当部長の竹中智彦さんは「トップページで第一印象が決まることが多いので、最も時間をかけました」と説明します。
事務局長の橋岡克典さんは「せっかくリニューアルするなら、分かりやすく使いやすく、また組合員もそれ以外の人も共感しやすい内容にしようと意識して制作を進めました」。制作にあたっては執行委員会などのメンバーから意見を募り、さまざまな人のアイデアを、丁寧に反映させていきました。
実務を担った女性メンバーから、男性には発想しづらいアイデアが出されたことによって、親しみやすさ、かわいらしさが前面に押し出されたサイトが実現しました。
「連合、労働組合という組織は、春闘のデモ行進や鉢巻き姿でシュプレヒコールをするといったお堅い闘争のイメージがつきまといがち。イメージと違う一面を見てもらえたら、少し身近に感じて参加してもいいかな…という気持ちになってもらえるのでは」(橋岡さん)
サイト内には、組合員が自分の「おすすめ」を紹介するコーナーもあります。こちらも、一般の人に広くサイトを見てもらいたい、という思いがベースになっており、グルメや名所のほか、地元を拠点に活動するプロサッカーチームなど、幅広いテーマが取り上げられています。また、記事は産業別労働組合や、地方連合会を構成する地域協議会のメンバーが順番に担当しています。これによって執筆に関わった組合員にも、連合の活動を知ってもらいたい、という思いもあるそうです。
「近県の地方連合会の人から『おすすめ見てるよ』『実際に行ってみたよ』といった声を頂けるのが嬉しいですね。ぜひ組合員以外の人たちも、旅行で福井を訪れる時に参考にするなど、役立ててくれればと思います」(橋岡さん)
「川柳」や「非正規ネットワーク」で参加のすそ野を広げる
2012年から「春闘川柳コンテスト」も実施しており、13回目となる2024年は約400句の応募がありました。最優秀賞に選ばれたのは「満額が 照らす未来の 道しるべ」。優秀賞の中には「通すのは 新幹線と 要求案」といったご当地ネタや「春闘で 首振りダンスは 認めません!」といった時事ネタも見られます。
「応募者の中に、集会などではお見掛けしない名前を見つけることもあり、それだけコンテストが一般の組合員に 馴染んでいるのだと思います。川柳が春闘に関わるひとつのきっかけになってくれたらと期待しています」と、竹中さんは語りました。
また組合員以外のパート・アルバイトなどの非正規の働き手を対象に「ワークメイトふくい」というネットワークも作っています。登録会員に対してはメールでの労働相談に応じたり、連合福井取材の学習会やイベントなどの情報を伝え、交流の場を提供したりしています。
「組合員になりませんか、職場に労働組合を作りませんかと誘ってもしり込みしてしまう人が多いでしょう。まず連合を知るきっかけとして、ゆるくつながってほしい」(橋岡さん)
ただ、会員数はあまり伸びていないのが悩みです。「ゆるいつながりなだけに、ガツガツ勧誘しすぎても引かれてしまうのでは」という思いもあって、働き掛けのさじ加減も難しいところ。しかし橋岡さんは、組合員以外の働き手のつながりは、これからどんどん大事になると考えています。
橋岡さんが大学の寄付講座などで学生と話すと、フリーランスのような自由な働き方への関心が高い一方、フリーランスのイメージはYouTuberのような華やかな職種に偏りがちだといいます。「学生のうちにフリーランスの実態やワークルールについて正しい知識を伝えることも大事。ただ組織に属さない働き手は確実に増えると予想されるので、当事者が困りごとを抱えた時などに、相談したり助け合ったりできる場も必要だと思います」
「親しみやすさ」と「必要な情報」のバランスが課題
竹中さんは今後の課題として、ウェブサイトやSNSなどによる情報発信の「鮮度」「頻度」「精度」を高めることを挙げました。
「サイトやSNSを閲覧するたびに新しい情報が掲載されていれば、接点を持ち続けてもらえます。新しいニュースを正確に、かつ頻度高く発信していきたいです」
川柳やおすすめコーナーのような柔らかい情報の発信と、政策提言や活動報告など、連合として必要な情報発信とのバランスを取ることの難しさもあるといいます。
「労働組合である以上、春闘や政治、最低賃金などは重要なテーマであり、社会に向けてしっかりと発信していく必要があります。ただ、そればかりでは敬遠されてしまうので、連合や労働組合を身近に感じてもらえるような親しみのある情報を織り交ぜ、両者のメリハリをつけることを意識しています」(竹中さん)
一方、橋岡さんはコロナ禍以降、組合員の組合との関わり方が変化し「動員のような参加型の活動が、少し距離を置かれるようになってきた」とも感じています。
組合員の変化に応じて、活動の形も少しずつ変えてきました。従来、役員会などの会議は福井市にメンバーを集めて行うことが多かったのですが、今は地区ごとに3会場に分けてオンラインで会場をつなぎ、出席者の移動時間を短縮しました。会議そのものの時間も短く切り上げるよう努め、家事・育児を担う組合員も参加しやすいよう工夫しています。
「活動を内側から変えることで少しずつ、外にいる組合員以外の人から見える労働組合のイメージも変えていかなければいけない、と思います」(橋岡さん)
これがイチ押し!地元の名産・名所
地元グルメ「ボルガライス」とは? 日本ボルガラー協会会長に聞く!
みなさんは「ボルガライス」をご存じですか?福井のご当地グルメで、オムライスの上にとんかつが載っているというボリュームいっぱいの一皿。北陸新幹線が敦賀駅まで延伸された時、多数のメディアに取り上げられたので、見覚えのある人もいるかもしれません。
名前の由来はロシアの卵料理「ボルガ」から取った、外見が火山のようなので「ボルカノ」から名付けられた…など諸説ありだそう。越前市が発祥ですが、福井市などの飲食店やフードコート、学生食堂や社員食堂にも広がっており、なんと中国やタイのバンコクにも店舗があるといいます。
ボルガライスをこよなく愛す人たちがつくる「日本ボルガラー協会」会長の波多野翼さんは、越前市で生まれ育ちながら、2009年に同市役所に入職するまで存在を知りませんでした。
「役所の先輩が食べていて『それ何ですか?』と聞いたら『30年くらい前からある』と言われたんです。でも周りに聞いても、2割ぐらいしか知りませんでした」
当時、B級グルメが流行していたこともあり、波多野さんは「ボルガライスは地域おこしの主役になる!」と考えました。2010年に同協会を立ち上げると、あれよあれよという間に学校給食に採用され、コンビニでも展開されるように。
「オムライスにとんかつが載るのは同じでも、ライスや卵はみな違います」と、波多野さんは熱く語ります。定番のケチャップライスの店、デミグラスソースで炒めた店、デミグラスソースを炊いたご飯に絡める店に白いご飯の店など、バリエーションはさまざま。卵も薄焼きありふわとろありで、中にはあんかけの「ボルガ天津丼」もあります。
ただどの店も非常にボリューミーなので、一皿でお腹いっぱいになることは請け合い。「味のバランスがいいので、不思議と女性でも完食できてしまう」(波多野さん)とはいえ、1日で何軒も回るわけにはいきません。何日かかけて福井を観光し、ボルガライスも堪能するのが良さそうです。
そんな波多野さん、2024年衆院選で立憲民主党から出馬して当選し、国会議員になりました。「東京でもボルガライスを広めたい。ゆくゆくは国会議事堂の食堂にボルガライスを入れたいです!」と意気込みを語ってくれました。
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もちろん福井グルメはボルガライス一択、というわけではないですし、雲海で有名な越前大野城(大野市)など名所もたくさんあります。ぜひ連合福井のサイトの「おすすめコーナー」で、ディープな名産・名所をチェックしてみて下さい!
(執筆:有馬知子)