特集記事

連合大分・藤本雅史事務局長に聞く 
候補者一本化で力を結集 
「大分方式」は、なぜ可能なのか?

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7月3日公示・20日投開票の日程で、第27回参議院選挙がスタートしている。昨年10月の第50回衆議院選挙の結果、与党が過半数を割る中で迎える今回の参議院選挙。チャンスからチェンジへ。これまでの政治を変え、働く者の政策を実現していくための極めて重要な闘いである。
連合は、比例代表10名と選挙区51名の推薦候補者全員の当選に向けて全力を挙げているが、勝敗のカギを握るのは全国で32ある「1人区」。そこで野党が力を合わせることができれば劇的な変化を起こせる、とも言われているが、毎回、調整に難航する地域は少なくない。そのような中、大分県では、10年以上前から連合大分が結び目となり、野党が連携して選挙に臨んできた。「大分方式」と呼ばれる体制はなぜ可能なのか。1人区である大分県選挙区の吉田忠智候補の必勝を期して連日県内を飛びまわる、連合大分の藤本雅史事務局長に話を聞いた。

藤本 雅史(ふじもと まさふみ) 連合大分事務局長

政策・制度実現のために政治への参画を

—労働組合が政治活動・選挙運動に取り組む理由とは?

労働組合の第1の役割は、組合員の雇用と生活を守ること。そのために職場での労使交渉を通じて賃金・労働条件の向上や労働環境の改善に取り組んでいる。ただ、産業全体に関わる課題や、税・社会保障、子育て支援など、職場の労使だけでは解決できない課題も多い。働く者の立場に立った政策・制度を実現していくには、その内容や考え方を十分に理解している労働組合の仲間を国政の場に送り込んでいくことが重要となる。そこで、自分たちの声を代弁してくれる組織内候補や推薦候補を擁立し、その当選をめざす選挙運動にも積極的に取り組んでいる。

1対1の構図に持ち込むことが重要

—連合大分の政治活動・選挙運動の特徴は?

大分では、10数年前から連合大分と政党との間で調整を行い、候補者を一本化して選挙に臨んでいる。この「大分方式」と呼ばれる体制が1つの特徴だ。
きっかけは、過去の国政選挙で野党系候補が乱立して得票が分散し、自民党候補の当選を許すケースが複数回あったことだ。実際に2007年の参議院選挙では、野党系候補の合計得票数が当選した自民党候補の得票数を上回っていた。候補者を一本化し、1対1の構図に持ち込むことが重要。そう考えて、連合大分は、協力関係にある政党に連携を呼びかけ、「大分方式」がスタートすることになった。
現在は、連合大分、立憲民主党大分県総支部連合会、国民民主党大分県総支部連合会、社会民主党大分県連合、無所属の吉良州司衆議院議員事務所による「5者連絡会議」を設置。毎月1回、継続的に開催し、日常的に活動や情報を共有している。

—野党連携の重要性はわかっていても、実際には困難な選挙区も多い。なぜ、大分方式が可能なのか? 大分ならではの地域特性とは?

大分県では、連合結成以前から革新政党を支持する労働組合が強い影響力を持っていて、その後、政党の再編が続く中でも協力関係が維持されてきた。また、政策実現のために組織内議員を議会に送る政治活動を重視してきたことから、現在でも、労働組合出身の自治体議員は多く、その後援組織も地域に根づいている。それゆえ、連合大分の支援は国政選挙においても重要だと受け止められていて、連合大分を仲介役とする政党間の候補者調整が可能になっているのだと思う。
過去の先輩方の努力と構成組織の足腰の強さがあってこそ、「大分方式」が成り立っている。「頼れる連合」として、いかにその期待に応えていくか、今回の参議院選挙は力の見せどころだと思っている。

—野党連携における課題は?

政策については、5者の間ですべてが一致しているわけではないが、連合大分が政策実現のために政治活動・選挙運動に取り組んでいることを各党にも理解していただき、一致できる内容で合意している。
候補者については、直近の選挙だけでなく、次や、次の次の選挙を見越した調整を行っている。今回の大分県選挙区推薦候補の吉田忠智さんは、自治労出身で、大分県議会議員を経て国政に転じ、社会民主党の党首も務めたが、2020年に立憲民主党に合流した。大分はかつて社会民主党を率いた村山富市元首相の出身地で、従来から連合大分と社会民主党、また、その後の立憲民主党との関係は強いものがあったが、昨年の衆議院選挙では国民民主党が躍進。それを踏まえて、今回は立憲民主党の候補者で一本化するけれども、3年後の参議院選挙では国民民主党からの擁立を含め、調整を進めている。今回はA党候補で一本化してB党・C党も一緒にがんばるから、次回はB党の候補をA党・C党が一緒に応援する。このスタイルで、他党の候補者への応援にも力が入り、政党間のつながりも強くなっていると感じる。

吉田ただとも総決起集会(2025年6月21日、大分駅北口広場)

チャンスからチェンジへ。政治は変えられる

—今回の参議院選挙をどう位置づけ、どう臨む?

昨年の衆議院選挙で与党が過半数割れとなり、政治に大きな変化が起きた。「政治とカネ」など今までブラックボックスであった問題が、ようやく表に出てきて野党が追及できるようになった。国会の各委員会にも野党議員がしっかり入り、国民のくらしに直結する課題が審議されるようになった。野党の議席が増えることで「こんなに政治は変わるのか」と再認識した国民は多いと思う。そのような意味で、今回の参議院選挙は、チャンスからチェンジへのステップと位置づけている。
吉田忠智さんは、2023年4月の参議院補欠選挙(大分県選挙区)に参議院議員(比例代表)を辞して立候補したが、自民党候補に341票差で惜敗した。超短期間の取り組みで十分に準備ができず、各構成組織に浸透できないまま選挙戦に突入したことが反省点だ。今回は比例代表の名前を書く選挙運動とセットで相乗効果が生まれるように選挙区の取り組みを進めている。
選挙では様々な風が吹く。無党派層が風向きに影響されやすいことは否めないが、将来を見越して選挙に臨む労働組合は大きくぶれることはない。足元の組織を固めたうえで、無党派層にも連合大分の訴えを浸透させる取り組みを展開し、比例代表・選挙区の推薦候補者全員の当選をめざしたい。

—若い世代の投票率アップのために工夫していることは?

連合大分として、毎年政治研修会を開催し、構成組織の政治担当者や若年層の組合員に参加してもらっている。また、選挙後の連合「政治アンケート調査」によると、「職場で組合役員から複数回投票の働きかけがあったことが投票に行くきっかけになった」という回答が多数を占めていることから、職場での声かけを改めて呼びかけている。
若い世代には「自分が投票に行っても変わらない」と考える人も多いが、今、まさに政治をリセットする流れが生まれている。「この選挙で流れをもう一押しすれば、政治は必ず変えられる」と強く訴え、投票率アップにつなげていきたい。

連合大分「政治研修会」(2025年5月)

政治に無関心であっても無関係ではいられない

—ネット選挙におけるSNSの影響力については?

選挙とSNSが切り離せない状況になっていることは理解しているが、最近の地方選挙を見ると、デマ情報やAIによるフェイク動画も多数入り交じっていて、鵜呑みにするのは非常に危険だ。そこで、SNSに強い地域協議会のノウハウを共有しながら、デマ情報の見極め方などをテーマに学習会を開催し、連合大分の情報発信を強化してきた。

動画:公示日(7月3日)にあわせて、連合大分中部地域協議会が投稿した「エッホエッホ」動画

—職場での取り組みは?

構成組織によって選挙運動に対する熱量や流儀は異なる。それぞれの特性や状況を見極めながら、できるだけ多くの組合員に関わってもらえるような選挙運動を常に心がけている。また、選挙の時だけでなく、日頃から候補者が職場や地域をまわって関係を築けているかどうかも選挙運動の熱量に反映される。そのような関係づくりも大事にしていきたい。

—読者にメッセージを。

「政治に無関心であっても無関係ではいられない」。経済や産業の問題も、くらしの問題も、すべて政治につながっている。政治にどう関わるかは、最終的に自分に返ってくる。だから、他人任せにするのではなく、投票を通じて自分の意思を示してほしい。また、選挙は1回限りのものではない。たとえ今回は当選できなくても、次は当選させようと力を合わせれば、必ずや政治は変えていけると信じている。絶対に投票に行ってほしい。

自分の意思を示すためにも、選挙の投票を呼びかける藤本事務局長

(執筆:落合けい)

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