本内容は季刊「RENGO」2026年春号から連載がスタートした「神保事務局長の頂の景色」(2026年秋号)を再掲したものです。
[令和8年熊本地震、並びに千葉豪雨、北陸地方、北海道東北地方における豪雨災害にて、被災された方々に心からお見舞い申し上げます。一日も早い復旧、復興を心より祈念いたします。]
10年前の熊本地震の教訓を胸に
7月28日夕刻、「熊本で震度7」という速報に耳を疑いました。2016年4月の熊本地震の記憶も新しい中で起きた大地震。今回の震源域は10年前より南に位置する日奈久断層帯と見られ、八代市、宇城市、宇土市、氷川町などで甚大な被害が出ていると報じられました。ようやく生活を再建したのに再び被災された方もおられると知り、その心労はいかばかりかと胸が痛みました。煙突が倒壊した日本製紙八代工場や、爆発事故が起きたイオンモール熊本では、働く仲間が犠牲になりました。折しも熊本では7月下旬から猛暑日が続き、避難生活の過酷さも心配されました。一日も早い復旧・復興にむけて、現地に寄り添った支援が必要だという思いで、7月30日、連合本部に「令和8年熊本地震対策本部」を設置しました。
本誌(季刊RENGO)は、2026春号で「熊本地震から10年—あの時、労働組合はどう動いたのか 今、その経験に学ぶこととは」を特集しました。当時最前線で対応にあたった先輩から「労働組合も事業継続計画(BCP)が必要。安否確認や行政との連携体制を含め災害対応マニュアルを作成しておくべきだ」とコメントをいただきました。連合は2019年に「連合業務継続計画(連合BCP)」を策定していましたが、「首都直下地震等の発生」と「感染症の蔓延」について、今年6月に初動から復旧フェーズまでの対応を整理し直したところでした。
その矢先の熊本地震の発災でしたが、「連合BCP」の基準に照らして対策本部を設置し、速やかな情報収集と共有を進めました。そして、甚大な被害が明らかになる中で、8月7日には、連合熊本に「連合・愛のカンパ」から拠出すること、および連合救援ボランティアを実施することを決定し、10日に熊本を訪れ愛のカンパを届けました。
復旧にはボランティアの力が必要
九州新幹線の熊本駅に降り立った際、駅周辺は日常を取り戻している印象でしたが、連合熊本の構成組織では、組合員5 名とその家族3名が亡くなり、負傷者は100名を超え、家屋倒壊は174件、43の組合の職場で甚大な被害が発生(8月20日中執報告時点)。連合熊本の山本寛会長は「10年前の教訓を生かし、迅速に安否確認と被災状況の把握を行い、九州ブロックを中心に八代市や氷川町など被災地へのボランティア派遣の準備を進めている。熊本全体では観光施設のキャンセルの影響も深刻で支援策が必要だ」と報告してくれました。
意見交換の後、連合救援ボランティアの派遣を予定していた宇城市、宇土市に向かうと、道路沿いに損壊してブルーシートで覆われた家屋があちこちに見えてきました。途中、イオンモール熊本(嘉島町)にも行きましたが、爆発の破壊力の大きさと周辺に広がるのどかな風景との落差に言葉を失いました。宇城市、宇土市で、社会福祉協議会やボランティアセンターと打ち合わせを行い、ベースキャンプとなる美里町のキャンプ場のロッジを下見。大地震に加え猛暑も重なっている被災地をまわったことで、改めて復旧にはボランティアの力が不可欠だと思いました。連合救援ボランティアは、1クール20人規模で、9月6日(日)~ 10月31日(土)まで(シルバーウィークを除く)7クールを予定。自前でベースキャンプを構築し、一般ボランティアが少ない平日に一定数が組織だって動けるという強みを発揮し、刻々と変化する被災地のニーズに対応していきたいと思います。
防災意識のアップデートを
豪雨災害についてもふれておきます。8月13日、千葉県において線状降水帯による記録的な大雨で内水氾濫が発生し、死者13名、住宅の床上・床下浸水は計4000棟超、道路の冠水で動けなくなった車両は約2700台。鉄道や農業施設などにも大きな被害が出ました。千葉県在住の連合本部事務局員、連合千葉の役職員についても全員無事でしたが、「連合BCP」で想定していない豪雨災害について、安否確認情報共有システムが十分機能したのか、反省点も残りました。27日には石川県と富山県を中心とした北陸での記録的豪雨も発生し、23の河川が氾濫して各地で土砂崩れや約900棟の住宅の浸水被害が出ました(内閣府HP)。さらに、29日夜から30日にかけて福井県でも豪雨によって道路などの冠水、住宅などへの浸水被害のほか、北陸電力白峰発電所に土砂が流入し、変電設備などに被害が確認されています。
地震、台風、豪雨、酷暑と渇水。今、災害はどこで起きても不思議ではなく、その規模は「想定外」にレベルアップしています。この災害の大規模化や頻発化に日本のインフラや社会のシステムが追いついていないと感じます。千葉豪雨では、最大雨量を1時間あたり60ミリ台に設定して貯留槽を整備していたのに、その倍を超える大雨が降り、急激に内水氾濫が起きた地域がありました。従来の対策では追いつかない災害が起きていることを認識し、BCPの観点から備えを見直す必要があると思います。
また、一人ひとりの防災意識のアップデートも必要です。イオンモール熊本では、テナントの従業員の方々がいったんは避難しながら屋内に戻り事故に遭われました。勤務中は携帯電話や貴重品を職場に持ち込まないルールがあったことがその一因とも言われます。自然災害を避けることはできませんが、私たちの意識とルールやシステムなら変えられます。そして、地球温暖化に対する意識を高めるとともに、毎年酷暑や異常気象が生じている状況を踏まえ、いのちを守るという観点から、夏場の屋外イベント運営や暑い中で働く仲間のケアなど、社会全体で働き方やくらし方を見直していく。そんなことを思う夏の終わりでした。
野党の立て直しはこの秋が正念場
さて、秋には臨時国会が召集されます。7月25日に閉幕した第221回特別国会では、与党が衆院で圧倒的多数を占める中、法案審議が尽くされないまま、政権の意向で事が動く状況がありました。臨時国会の焦点となる「消費税減税」については、自民党内からも経済界からも財源や社会保障への影響を懸念する声が上がっています。政権がこれを受け止めることなく、「熟議の国会」が疎かにされるなら、国民の政治に対する信頼感が損なわれ、日本の持続可能性に深刻な影響を及ぼすと危惧しています。
その責任の一端は野党にもあります。野党がその態勢を立て直せるかどうかは、この秋が正念場。個人的な見解を申し上げれば、政党は軸をブラさずに理念を明確に示し、それにもとづく政策を提起すれば、支援が広がり、軸が幹へと育っていくのではないでしょうか。
連合は「働く者・生活者のための政策実現」 という太い軸をブラさずに、政策実現に向けてフォーラム議員と連携を強化し、幹を太くしていきたいと思います。
さて、今年7月に電機連合の会長を退任し、連合事務局長専任となりました。今まで以上に、構成組織・地方連合会・連合本部が一体感をもって運動の効果を発揮できるよう頑張ってまいります。
連合本部では現在、「DX化推進検討プロジェクト」を立ち上げ、DX化の推進に取り組んでいます。DX化においても、「5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)」は作業効率の向上に重要な役割を果たします。加えて、活動のあらゆる場面で、思考の整理や職場の安全、衛生面などに影響すると考えています。着実にこつこつと取り組みを進めたいと思います。

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