事務局長談話

 
2016年12月22日
「2017年度政府予算案」の閣議決定に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 逢見 直人

  1. 12月22日、政府は一般会計総額を当初予算としては過去最大の97.5兆円とする2017年度予算案と、総額0.2兆円規模の2016年度第3次補正予算案を閣議決定した。本予算案は、経済再生と財政健全化の両立をめざすとしているが、貧困や格差の拡大などの深刻な課題を是正する姿勢が不十分であり、生活者・働く者の声に応えた内容とは言えない。また、本補正予算案は、台風被害の復旧関連などの費用を計上する一方で、税収見通しの下方修正により赤字国債を追加発行することとなった。年明けの通常国会における与野党の真摯な議論を通じた精査・修正を求める。

  2. 2017年度予算案では、社会保障費について、医療・介護に係る高齢者の自己負担の引き上げ、介護保険料の総報酬割の段階的導入、後期高齢者医療制度の保険料負担軽減措置の段階的縮小、高額薬剤の薬価引き下げなどにより、自然増を約1,400億円分抑制する内容となっている。高齢者の暮らしへの深刻な影響や介護離職の増加をもたらさないか、丁寧に検証していくことが求められる。
     子ども・子育て支援については、地方分を含め6,958億円が計上されたが、政府が財源確保に最大限努力するとした「1兆円程度」には届いていない。また、民進党の追及により、介護・保育サービスを担う職員の処遇改善が計上されたが、それぞれ289億円、544億円にとどまり、約10万円もの全産業平均との賃金差を解消するには不十分な内容である。

  3. 教育予算については、高等教育における給付型奨学金の新設のために、先行実施分として70億円が計上された。給付型奨学金の新設自体は前進であるものの、その規模は約3千人分と極めて小さく、貧困の連鎖を解消するための対策としては全く不十分である。子どもの家庭の経済状況が教育機会の格差につながらないよう、給付型奨学金、無利子奨学金の一層の拡充を進めるとともに、幼児教育から高等学校に至るすべての生徒の授業料の完全無償化を実現すべきである。

  4. 財政健全化に向けては、社会保障関係費の伸びを年5,000億円程度に抑制する財政健全化目安は達成できたとしている。しかし、消費税率の引き上げを2度にわたり延期し、負担増や給付減に繋がる施策をかき集めるだけでは、国民の将来不安は決して払拭されない。将来世代へ負担を先送りしないためにも、社会保障と税の一体改革の原点に立ち戻り、社会保障の充実・安定化と財政健全化目標の達成の道筋を明らかにしていく必要がある。

  5. 経済の自律的成長を実現させるためには、雇用の安定と質の向上や、社会的セーフティネットの強化による将来不安の解消などを通じ、国民全体の底上げを行う必要がある。連合は、すべての働く者の「底上げ・底支え」「格差是正」につながる政策の実行を求め、財政制度等審議会での意見反映や政府・政党への要請行動を展開してきた。引き続き、政策・制度要求の実現、その先にある「働くことを軸とする安心社会」の実現に向けて、全力で取り組んでいく。
     
    以  上