事務局長談話

 
2016年06月06日
「雇用仲介事業等の在り方に関する検討会」報告に対する談話
日本労働組合総連合会 事務局長 逢見 直人

  1. 本日、厚生労働省の「雇用仲介事業等の在り方に関する検討会」(座長:阿部正浩 中央大学経済学部教授)は、民間職業紹介事業などの雇用仲介事業に対する法規制の見直しに向けた報告書を公表した。報告書では、求職者保護の観点から雇用仲介事業に関わる諸課題が整理されたものの、その解決策には踏み込み不足の点がある。加えて、一部には立法事実に乏しい委託募集に関する規制緩和項目も盛り込まれており、慎重な検討が必要である。

  2. 求人情報に記載された労働条件と実際の労働条件が異なることによるトラブルは以前から相次ぎ、連合「なんでも労働相談ダイヤル」にもいわゆる「詐欺求人」といわれるような相談事例が多数寄せられている。連合は検討会のヒアリングにおいてこの点を強く指摘した。そうした中で報告書では、職業紹介事業者などの労働条件明示のルールについて、固定残業代の明示などに関する指針の充実、求人者に対する罰則の整備などの規制強化策が盛り込まれた。また、現行で規制の対象外とされている求人広告などの求人・求職者情報提供事業に対して、労働条件明示義務などのルールを設定することが適当とされた。これらについては一定の効果は見込まれるが、求人トラブルの解消に向けた課題はなお残されており、一層の議論が必要である。

  3. 最近では、労働移動支援助成金に関連して、再就職支援を行う職業紹介事業者が、再就職支援と併せて退職強要や退職勧奨を誘発するといった事案が発生している。就職・転職という人生の一大局面に悪質な雇用仲介事業者が介在し、求職者・労働者が不利益を被るような事態は、すべての働く者の雇用の安定と公正な労働条件の確保の観点から決して容認できない。こうした悪質な事案に対しては厳格な行政処分が講じられるようにすべきであるが、この点については報告書から抜け落ちている。雇用仲介事業は、業として他人の雇用に介入する、「人」を扱う事業であり、物の売買とは異なるという基本的な視点を忘れることがあってはならない。

  4. 雇用仲介事業においては、IT化・グローバル化などを背景とするサービス内容の多様化により、職業安定法に想定されていない事業形態が次々と展開されている。いかなる事業形態であれ、求職者保護の観点から一定の規制の下で適正な運営がはかられなければならない。こうした業態変化に対応した、雇用仲介事業全体に対する実効性あるルールづくりが必要不可欠である。連合は、労働政策審議会での議論を通じて、真に求職者保護に資する法規制の整備に向けて取り組んでいく。


以上