連合ニュース 2026年

 
2026年05月20日
緊急シンポジウム「これでいいのか!?『働き方改革』の見直し」を開催
主催者挨拶を行う芳野会長
 5月20日、連合は緊急シンポジウム「これでいいのか!?『働き方改革』の見直し」を対面・オンラインの併用で実施し、約280名が参加しました。
 
 本シンポジウムは、裁量労働制の拡充などの労働時間規制緩和の動きを押しとどめ、「働き方改革」の実効性を高める法改正の実現に向け、社会的機運の醸成のために、緊急開催したものです。
 
 冒頭、主催者を代表して芳野会長が、「これまで労使で懸命に取り組んできた『働き方改革』を逆行させかねない、運用の見直しや裁量労働制の拡充などの労働時間規制の緩和を何としても押し止めなければならない。今求められているのは、長時間労働に依存した企業文化を見直し、いかに生産性を高めながら労働時間を減らしていくか、それをさらに後押しするための法改正だということを、社会全体に訴えかけていくことが必要」と力強く述べました。
 
 続いて、菅村総合局長から、日本成長戦略や労働政策審議会の議論状況について、情勢報告を行いました。「働き方改革関連法施行後5年の総点検結果でも、『労働時間を増やしたい』と回答した者は約1割に過ぎず、その理由の多くは収入面の課題だった。労働時間法制は、労働者の健康・安全と生活時間保障を基本とすべきであり、長時間労働を助長しかねず、過労死や健康被害などを増加させかねない裁量労働制の拡充などは行うべきではない。また、労働基準監督署における厳格な指導・監督は堅持すべき」と労働時間法制に関する連合の考え方を述べました。
 
 続くリレートークでは、5名の方より、様々な視点から「働き方改革」の見直しについて、お話をいただきました。
 
 柴田悠・京都大学大学院人間・環境学研究科教授からは、社会全体にとってよりよい働き方という視点で、話がありました。柴田教授は、日本の労働生産性は先進諸国で最低レベルであり、その要因の一つに長時間労働による睡眠不足などがあることを指摘。また、その上で、「欧米並みに時間外労働の割増率を50%引き上げることで、企業にはデジタル化による効率化を促し、労働者には短時間で手取りを確保できる環境を作るべき」と提言しました。
 
 北岡大介・東洋大学法学部准教授からは、労働法の観点から、裁量労働制の課題や拡充の問題点の話がありました。北岡准教授は、裁量労働制を導入すれば付加価値が創造されるという主張には、法的な根拠が乏しいと指摘。裁量労働制には、業務遂行の手段や時間配分を労働者に委ねる「裁量」が不可欠だが、実際には不適切に適用されるなどの問題事例があることを紹介しつつ、「安易な対象拡大よりも、第三者によるモニタリングや情報公開の義務化など、適正な運用を確保するための法的枠組みを検討すべきである」と述べました。
 
 高橋幸美氏(東京過労死を考える家族の会)からは、娘のまつりさんを亡くした遺族の立場から、過労死等の現状の受け止めと労働組合への期待の話がありました。高橋氏は、過労死の悲惨な実態から、長時間労働は人を壊し、家族の人生も破壊すると強調。働き方改革以降も精神障害による労災請求数は増え続けており、労働時間規制緩和はさらなる過労死を生むとして断固反対を表明しました。「労働組合こそが労働者の命を守るゲートキーパーであり、36協定において過労死ラインまでの残業を認めないなど、命と健康を守る毅然とした決意を持ってほしい」と訴えました。
 
 圷由美子弁護士(東京駿河台法律事務所)からは、生活時間を守る労働時間法制のあり方について、話がありました。圷弁護士は、時間は生命の一刻であり、休息、自己研鑽、家族や地域社会との関わりといった「生活時間」アプローチの必要性を説きました。「労働者の自己実現や責任感を逆手に取った『やる気の搾取』を止めるには、本人の同意ではなく、国による一律の法的規制が必要」であるとし、18時から22時を『生活コアタイム』と位置づけ、この時間の労働に高い割増率を課すことで、労働者の生活の質を担保する策を提案しました。
 
 自動車総連・佐藤好一副事務局長からは、労働組合の「働き方改革」の取り組みや裁量労働制の運用実態の話がありました。佐藤副事務局長は、自動車産業を取り巻く環境などに触れた上で、「現場の強い責任感によって仕事が成り立っている現状があるが、それに甘えるのではなく、ルールの厳格化が必要」と指摘しました。その上で、裁量労働制の安易な拡大・緩和ではなく厳格な運用や法整備が必要であるとし、「労働組合として、働き方改革、適正取引・価格転嫁、賃上げ・格差是正なくして、経済の持続的成長、日本全体の生産性向上はない」と述べました。
 
 最後に堀谷労働法制委員会委員長が、「『働き方改革』の逆行にほかならない裁量労働制の拡充や変更労働時間制の要件緩和などは断じて許されず、多角的な観点からみても問題が多いことが確認できた。労働組合が率先して働き方改革の定着と前進に向けた法改正の実現に取り組もう」と呼びかけ、シンポジウムを締めくくりました。
 
以 上
  • 情勢報告を行う菅村総合局長
  • 柴田悠 京都大学大学院人間・環境学研究科教授
  • 北岡大介 東洋大学法学部准教授
  • 高橋幸美氏 東京過労死を考える家族の会
  • 圷由美子弁護士
  • 佐藤好一自動車総連副事務局長
  • まとめを行う堀谷労働法制委員会委員長
  • 会場の様子