5月22日、総理官邸で「政労使の意見交換」が開催され、連合から芳野会長、清水事務局長が出席しました。
意見交換で芳野会長は、以下の概要のとおり意見を表明しました。
〇2025春季生活闘争では、2年連続で定昇込み5%台の賃上げを実現している。労使が、賃金・経済・物価を安定した巡航軌道に乗せる正念場であるとの共通認識のもと、企業の持続的成長、日本全体の生産性向上につながる「人への投資」の重要性について、中長期的視点を持って粘り強く真摯に交渉した結果であり、新たなステージの定着に向け前進したと受け止めている。
一方、中小組合も健闘しているものの、格差拡大に歯止めをかけるには至っていない。労務費を含む適切な価格転嫁・適正取引の取り組みも道半ば。今国会で、下請法は中小受託取引適正化法、下請振興法は受託中小企業振興法としてそれぞれ改正され、来年1月から施行される。官公需の分野も含め改正法の周知徹底をお願いする。
中小企業や、労働組合のない職場で働く方々も含め、みんなの生活向上につながる「賃上げがあたりまえの社会」を実現しなければならない。労働組合のある企業のほうが、賃上げ率が高い結果が出ていることから、労働組合の有無にかかわらず全国津々浦々に物価に負けない賃上げの流れを波及させるためにも、地方版政労使会議の複数回開催を含め、より積極的な活用を検討いただきたい。
足もとでは、米国トランプ政権の関税措置などにより将来の不確実性が増し、不安を抱く国民も増えている。この間の取り組みを通じて、四半世紀におよんだ「慢性デフレ」のサイクルから、賃金と物価が持続的かつ緩やかに上昇する健全なサイクルへと移行しつつあり、この動きを社会にしっかりと定着させなければならない。そのためには、政労使でめざすべき好循環の姿を改めて共有するとともに、そこに至る時間軸を明確にし、政府として短期的対応と中長期的政策をしっかりと打ち出していくべき。日本全体の実質賃金1%上昇は早急に実現をめざすべき。
〇「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」の施策パッケージについて、「持続的・安定的な物価上昇の下で、物価上昇を1%程度上回る賃金上昇を賃上げのノルムとして我が国に定着させる」というわかりやすいメッセージを冒頭に書き込むことはよいと思うが、「生活向上を実感できる」賃上げこそが成長戦略の要、と加筆してはどうか。加えて、実質賃金1%程度の上昇は5年後ではなくもっと早い段階での実現をめざす、ということだとすれば、そのためには、全国の中小企業や相対的に低い賃上げ率にとどまる産業などへの支援策の強化が必要であり、政策資源を総動員した5か年計画パッケージを打ち出すことと理解する。早急に予算措置等を行い実行に移していただきたい。官民でのデフレマインドの払拭については、「良い物・良いサービスには適正な良い値がつく」という適正価格に対する国民の理解促進に資する政府広報や関係省庁からの発信を強化するべき
〇最低賃金について、米をはじめとした食料品や生活必需品などの物価高により、最低賃金近傍で働く人の生活はますます厳しさを増している。前内閣が掲げた目標を前倒し、最低賃金の大幅な引き上げをめざすことは、好循環の姿を実現するうえでも必要不可欠。今年度の地域別最低賃金の引き上げについては、最低賃金法に基づき、公労使三者構成の最低賃金審議会で議論を尽くしたい。政府目標の前倒しにあたっては、最低賃金引き上げに対応した適正な価格転嫁と中小企業等への支援策を強化し、それが実現できる環境を整えることが不可欠。政府として最大限の支援を。自治体レベルの支援策についても国が助成すべき。
なお、エッセンシャルワーカーなどの賃金を社会的に底上げするためには、地域別最低賃金のみならず、特定最低賃金の積極的な活用についても議論を深めるべき。
(参照)総理官邸WEBサイト