懇談会の様子
連合は3月7日、日商との懇談会を都内で開催し、持続的な賃上げ、価格転嫁、人手不足などをテーマに意見交換を行いました。
冒頭、組織を代表し、小林日商会頭、芳野連合会長それぞれから挨拶しました。
<小林会頭挨拶>
本年も懇談の機会を設けられたことをうれしく思う。芳野会長はじめ連合の皆様には、春闘の大変お忙しい時期にお時間ご調整いただき、感謝申し上げる。
日本経済が真に力強さを取り戻すためには、物価と賃金の好循環により実質賃金を上げていかねばならない。今年の春闘は非常に重要であり、地方の中小・小規模企業も含めた社会全体での賃上げが必要。
昨年末の日商調査では、2025年の賃上げを予定している中小企業は約5割。「未定」が3割弱あり、大手春闘の結果を見て、賃上げに踏み切る企業が出てくることで、最終的に昨年並みの7~8割の中小企業が賃上げとなることを期待。日商として引き続き全国の会員企業に働きかけていく。
賃上げの原資については、中小・小規模企業の労働分配率が7~8割程度まで下がってきているが、大手・中堅に比べると依然高い。原資の確保には、中小企業自らの自己変革による付加価値向上とともに、価格転嫁の商習慣化が重要。
毎年申し上げているが、「よい製品やよいサービスには値が付く」、「適切な価格で買うことで、巡り巡って家計にもプラスになる」という考え方を社会全体に浸透させていく事が必要。働く人の生活にとっては厳しい面もあると思うが、引き続き、労働組合の立場からも組合員の皆さんに働きかけていただきたい。
最後に、最低賃金について申し上げる。
石破政権になって、政府目標が「2020年代に1500円」と大幅に前倒しされた。一昨日(3月5日)に結果を公表した日商調査では、7割以上が「対応不可能または困難」と回答。最低賃金を引き上げていくこと自体に異論はないが、問題はその上げ幅とスピード。地方・中小企業の実態を十分踏まえ、法定三要素(賃金、生計費、支払い能力)に基づく検討が不可欠。この点においても、連合の皆さんと連携して政府に働きかけていきたい。本日は賃上げや価格転嫁に関する認識を日商と連合で確認するための懇談としたい。短い時間だが、ぜひ中身の濃い意見交換にしたいと思う。
<芳野会長挨拶>
本日は、昨年に引き続き、懇談の機会を持たせていただき、感謝申し上げる。小林会頭とは、政労使の意見交換の場をはじめとして、政府の様々な会議体で同席しているが、中小企業の発展とそこで働く人の幸せのために今何をすべきか、問題意識が重なる部分が多くあると感じている。連合の構成組織・加盟組合は、2月から多くの組合が要求書を提出し、交渉を展開している。こうしたタイミングで日商と連合の懇談の場を持てることは極めて意義深いものだと考える。
昨年は33年ぶりの5%台の賃上げが実現したものの、生活向上を実感するには至らず、消費は低迷している。賃上げの流れを働くすべての仲間に波及させ、新たなステージを定着させるためには、今がまさに踏ん張りどころである。
そのためには、企業規模間の格差是正に向けた適切な価格転嫁の徹底が不可欠であるが、コスト全般の転嫁率はいまだ5割程度、一昨年に公表された「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の認知度もまだ半分という状況である。
連合は2025春季生活闘争方針のなかで、サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配や賃金水準闘争を強化していくための取り組みが重要であると打ち出している。引き続き政府に対して、公共調達部門も含めたすべての分野における適正な価格転嫁と適正取引に向けた環境整備を強く求めてく。今国会においては、価格転嫁が不十分な取引も規制できるように下請法の改正が行われる予定であり、国会での迅速な成立を求めていく。
さらに、昨年に引き続き、全国で「地方版政労使会議」も展開されている。より身近な地方段階においても、適正な価格転嫁や賃上げについて認識を合わせるとともに、地場・地域における経済・産業にかかわる課題認識を共有したうえで、地域の活性化につながるよう連携を強化していくことが重要である。
最後に、連合は、「働くことを軸とする安心社会」の実現をめざし、ビジネスにおける人権尊重の取り組み、ジェンダー平等・多様性の推進などにくわえて、集団的労使関係の強化・構築と組織拡大の取り組みを進めている。組織内外へ労働組合の存在意義を高めるとともに、労働組合がない未組織企業の組合結成につなげるなど、連合全体で統一的な取り組みを展開し、労働組合の社会的役割の発揮に努める。本日は限られた時間ではあるが、忌憚のない意見交換をお願いする。
その後の意見表明では、日商より「中小企業の賃上げの現状と最低賃金引上げの影響」の課題認識について提起がありました。
続いて、連合より連合白書や2025春季生活闘争要求集計結果などを用いて、2025春季生活闘争の取り組みにおけるポイントや最低賃金引上げに向けた考え方などを説明しました。
その後、以下のような意見を交わしました。
<日商>
〇下請法を実態に即した呼び名にアップデートすることは評価している
〇中高年層への配分の必要は同感であり、生活を抱えている中高年層の所得と消費を上げることにより経済は成長する
〇最低賃金を政府主導で進めることの違和感は、全くその通り
〇業種にかかわらず人手不足であり、地方の女性が都心へ進出することや、女性の研究職が海外に出て行く傾向もある
<連合>
〇下請法の改正は、来年の春闘に間に合うように早期の成立・施行を求めるよう組合側としても働きかけている
〇中高年層にも賃上げ原資が配分・反映されるように労使で協議を進める
〇最低賃金は、公益・労働者・使用者の3者協議で進めるものであり、政府主導で進めるものではない
〇隙間時間を活用したバイトに関してアプリの登録者数1000万人を超えており、雇用の安定が課題である
連合と日商は、中小企業の持続的な賃上げに向けて、取引の適正化などを後押ししていく考えで一致し、今後も必要に応じて意見交換の機会を設けることとし、懇談会を閉会しました。
以 上