「第6回未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」で連合の取り組みを報告し、持続的な賃上げと格差是正が実現できる環境づくりとともに、適切な価格転嫁・適正取引の取り組み強化について訴える
2月21日、「第6回未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」(主宰:内閣府特命担当大臣(経済財政政策)、経済産業大臣)が開催されました。関係業所管庁の他、労働界代表として連合芳野会長、経済界代表として十倉日本経済団体連合会会長、小林日本商工会議所会頭、また、臨時委員として古谷公正取引委員会委員長、矢田内閣総理大臣補佐官が出席しました。
今回の会議は、前回(2023年12月開催)以降の、パートナーシップ構築宣言の取り組み状況のフォローアップを行うとともに、関係省庁等の今後の取り組みについて意見交換しました。
■赤澤経済財政担当大臣
物価上昇を上回る賃上げを実現・定着するためには、価格転嫁の取引適正化を推進することが必要である。宣言は、その環境整備向けた取り組みの一つである。引き続き対応を強化し、今後、新たに3点の取り組みを進めていく。1点目、多くの取引先を抱える大企業の拡大は重要であり大企業の宣言を促す取り組みを強化する。2点目、重層的なサプライチェーンでは、取引階層が深いほど価格転嫁率は低くなるという実態を踏まえ、2次以降の下請けも視野に入れた取り組みを強化する。3点目、宣言公表の取りやめ要件の明確化等により、宣言の実効性の確保・向上に取り組む。
■十倉経団連会長
経団連では、大企業から中小企業までサプライチェーン全体の共存共栄の関係構築が、構造的な賃上げやサステナブルな資本主義の実現に深く関わると認識している。会員企業に対し宣言の周知徹底を行ってきた。2025年版経労委報告では、宣言企業の拡大と実効性の確保・向上、労務費の適正な転嫁のための価格交渉に関する指針の周知、中小企業団体との連携強化を通じた価格転嫁に関する好事例の展開を図る方針を明記した。これらの取り組みの結果、1月31日時点での会員企業の宣言数は989社、宣言率は62.3%となり、東京証券取引所における時価総額の96%を占めるなどサプライチェーンの中核を構成する大企業が積極的に宣言している。次に、業界団体別の公表率を示している通りのなりのばらつきがある。監督官庁から業界団体への指導を通じた宣言の徹底をお願いする。経団連として宣言企業のさらなる拡大や、実効性の確保、価格転嫁を通じた取引の適正化と構造的な賃上げの実現に向けて尽力していく。
■小林日商会頭
日商から申し上げると、価格転嫁は未だ道半ばの状況と言わざるを得ない。調査では、価格協議ができているという割合は74%、4割以上できている企業は約52%である。さらに取引階層が深くなるほど価格転嫁が進んでいないという事実も明らかであり、宣言拡大を推進しているが様々な課題がある。第1に、認知不足。発注者が知らないケースも多く、粘り強く制度の周知と主旨の理解浸透が必要である。2つ目は、中小企業の参画。受注者であり発注者でもある中小企業は非常に多く、価格転嫁を十分受けていない中で、転嫁してあげたいが原資がなく転嫁が進まないという声がある。発注企業には、そこまで見据えた転嫁を実施していただきたい。特にBtoCの取り引きで転嫁は難しいという声が多い。消費者のデフレマインドの払拭、これが今年度の急務かと考える。適正利益を確保するために良いものや良いサービスには値が付くという価値観を広く浸透させる必要がある。ここはメディアにもご協力いただきたい。また、巡り巡って最終的には自らの所得向上につながっていくことであると、宣言に参加する意味の明確化も必要であり、既に補助金加点等でインセンティブはあるが、さらなる拡充を検討していただきたい。3つ目は、業界やサプライチェーンの古い取引慣行の存置である。全体の付加価値を高める観点から慣行の見直しを進めていただきたい。これは日本の風土特有ですが特に小規模企業、地方では相手の顔が見えてしまい付き合いもある中でなかなか体が動かない。日商では価格転嫁の成功事例の紹介、原価計算、採算可視化等の価格交渉力向上を伴走支援するなかで、中小企業の意識改革を促し、各地商工会議所会頭にパートナーシップ構築宣言の参画を一層強く呼びかけていく。
3年連続で経済三団体による共同要請を発出した。各地でも取り組みが進んでいる。今月の4日、東京商工会議所は価格転嫁推進東京大会を開催し、公取からも初めて参加をいただいた。価格転嫁を商習慣として定着させるべく共同要請あげて取り組んでいく。
■芳野連合会長
2025春季生活闘争では、持続的な賃上げと格差是正が実現できる環境づくりとともに、適切な価格転嫁・適正取引の取り組み強化が重要である。そのためには、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の周知強化と浸透に取り組み、連合の「取引適正化・価格転嫁に関するチェックリスト」を労使で活用しながら、自社の取り組み状況の点検などを促す。「パートナーシップ構築宣言」の拡大と実効性強化に向けては、公共調達部門で適切な価格転嫁が遅れてる。公共入札などにおいて、宣言済の中小企業に加点措置をすることや、医療・介護・福祉分野も含めて労務費などの適切なコスト上昇を反映した予算設定をはかる必要があると考える。
業界団体・企業の皆さまには、行き過ぎたコスト削減を推進するような人事評価基準を見直すことや、労働組合が説明を求めた場合の適切な情報開示をお願いする。連合としても、大企業と中小企業が互いに価値を認め合い共存共栄し、そこで働く者が働きの価値に見合った労働条件を実現できるよう、引き続き協力していく。
以 上