連合ニュース 2024年

 
2024年11月01日
連合シンポジウム「いま、労働基準関係法制に求められるもの」を開催
熱のこもった議論が交わされる会場
 10月31日、連合は、「シンポジウム『いま、労働基準関係法制に求められるもの』」を開催しました。本シンポジウムは、「働き方改革」による労働基準法の改正から5年が経過した中、改めて真に働く者のための労働基準関係法制はどうあるべきかを組織内外に問うことを目的に開催したものです。シンポジウムには、構成組織・地方連合会、一般、マスコミの方など359名(会場108名、オンライン251名)の参加がありました。

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【主催者代表あいさつ】
 冒頭のあいさつに立った芳野友子 連合会長は、「『働き方改革』による時間外労働の上限規制の導入は大きな転換点であったが、私たち労働組合はそれもテコに長時間労働の是正などに取り組んできた。本シンポジウムは、これまでの運動を振り返るとともに、今後、労働者保護の観点からどういった法規制が必要なのかを考える機会としたい」とあいさつしました。加えて、過半数代表者の適正化にも触れたうえで、「集団的労使関係の中核的担い手である労働組合が、組織拡大をし、すべての仲間の声を受け止めて行動することこそが重要」とも述べました。
 
【厚生労働省報告】
 次いで、澁谷秀行 厚生労働省労働基準局労働条件政策課長より、厚生労働省の有識者研究会における労働基準法などの見直しの検討状況について説明を受けました。具体的には、労働基準法上の「労働者」および「事業」、「労働時間規制」、「集団的労使関係」といったテーマ毎に、研究会論議の現時点での到達点について報告がありました。
 
【講 演】
 その後、労働基準関係法制研究会のテーマの柱である、労働時間規制と集団的労使関係に焦点をあてた講演が2名の有識者からありました。
 圷由美子 弁護士(東京駿河台法律事務所)からは、「新時代に求められる労働時間規制 今こそ必要なのは生活時間アプローチ」とのテーマで講演いただきました。圷弁護士は、人の生活は1日単位であることを踏まえ、労働の生活への流入を止める壁として、生活コアタイム(18~22時)の確保を軸とした、1日単位の時間規制の必要性について提起がありました。
 次いで、國武英生 小樽商科大学商学部教授からは、「過半数代表制の課題」について講演がありました。國武教授は、「過半数代表者の問題は組合のない職場の問題であるが、その適正化をきっかけに労働組合運動が活性化につながるようにしていくことが重要」と指摘。その上で、過半数代表者の選出手続きの公正性担保やその担い手の育成の必要性など、改革の視点を提起しました。
 
【パネルディスカッション「いま、労働基準関係法制に求められるもの」】
 シンポジウム後半では冨高裕子 連合総合政策推進局長がモデレーターを務め、パネルディスカッションを実施。構成組織から3名のパネリストが登壇し、「働き方改革」を踏まえた労働組合の取り組みや職場の課題、今後の法政策の必要性などについて意見がありました。
 山中しのぶ 電機連合事務局次長は、春季生活闘争における36協定特別条項の限度時間の引き下げの取り組みなど、法律を上回る運動を進めていることを紹介した上で、法律上も、上限時間の計画的な引き下げや休日労働規制の強化などが必要であると述べました。
 次いで、水野和人 情報労連書記長からは、主に、コロナ禍を踏まえ急速に進んだテレワークにおける労働時間管理の必要性や、勤務間インターバル・つながらない権利の導入に向けた労働組合の取り組みについて話がありました。また、ベルコ闘争にも触れたうえで、労働基準法上の労働者性の判断基準の見直しの必要性も指摘しました。
 そして、相良夏樹 JR連合組織・政治局長からは、労働組合ではない従業員組織が過半数代表となっている実例に基づく報告がありました。具体的には、従業員組織には独立性や意見集約機能が欠如している課題などの指摘があった。その上で、過半数代表者の適正化の必要性とともに、集団的労使関係の中核的担い手である労働組合の活性化につながる法政策の必要性を訴えました。
 その後のフロアからの意見交換では、労働時間管理の必要性など、現実の職場実態に照らした意見が呈されたうえで、労働者保護の観点からの法規制の必要性と、労働組合が取り組む重要性について認識を共有しました。
 
【閉会】
 最後に、村上陽子 連合副事務局長が、「春季生活闘争などを通じ、労働組合だからこそできることを積み上げるとともに、それを法改正にもつなげていこう」と締めくくり、閉会しました。
  • 主催者あいさつをする芳野会長
  • 研究会の議論状況を説明する澁谷課長
  • 生活時間の必要性を訴える圷弁護士
  • 過半数代表の課題を指摘する國武教授
  • モデレーターを務める冨髙総合局長
  • 上限時間縮減の必要性を述べる山中事務局次長
  • つながらない権利の重要性を提起する水野書記長
  • 過半数代表の課題を指摘する相良局長
  • フロアとの質疑
  • 閉会挨拶を行う村上副事務局長