パネルディスカッションの様子
連合は9月13日、「労働組合の未来」シンポジウムを東京都内(オンライン併用)で開催し、構成組織や地方連合会、関係団体、企業、研究機関、報道、学生、一般など、300名超が参加しました。
本シンポジウムは、連合総研・連合「労働組合の未来」研究会(2022年5月~2024年4月)の研究成果を広く知ってもらうために開催したものです。
冒頭、主催者を代表して清水秀行事務局長は、研究会の設置経緯や開催趣旨について説明し、「組合参加者には、本シンポジウムを通じて運動のヒントを見つけ、実践につなげてほしい」とあいさつ。あわせて、「労働組合と関わりを持たない方々からも共感を得て、応援してもらえるような『推せる』労働組合となるべく、取り組んでいきたい」と述べました。
基調報告では、「理解・共感・参加を高めるために―『労働組合の未来』研究会報告を踏まえて―」と題し、研究会座長の玄田有史 東京大学社会科学研究所教授が講演を行いました。玄田教授は、理解・共感には「まず発信が重要」と指摘したうえで、アンコンシャス・バイアスの解消、コミュニケーションの工夫、気軽な参画、企業側との向き合い方など具体的な提言を交えながら、課題解決へのヒント、理解・共感・参加を高めるための方策についてお話しされました。
つづいて、玄田教授をコーディネーターに、梅崎修 法政大学キャリアデザイン学部教授、門ノ沢彩乃 UAゼンセン・イオンリテールワーカーズユニオン中央執行組織局長、山岸勇太 フード連合・全日本ハム労働組合中央執行委員長、景山誠 連合島根事務局長をパネリストに迎え、パネルディスカッションを行いました。
はじめに、研究会委員を務めた梅崎教授が自身の研究報告をもとに、この20年で、労働組合が「わからない」存在になっている事実を紹介。これは、組合に対する「無知」ではなく「無関心」「無力感」の表れととらえ、組合は開放的かつ、組合員の主体的な参画を促すコミュニケーションをデザインしていくようアドバイス。その具体策として、組織内にある多くの先進事例を共有していくべき、との提案がなされました。
門ノ沢氏は、自身の育児経験から、育児中の組合員同士がつながる場(オンラインコミュニティ)を立ち上げたことを紹介。その中で出された声を労使ミーティングで取り上げたことで、30年間変わらなかった仕組みがわずか1か月で改善された実例を挙げ、組合という声を上げる場所があること、個人の埋もれた声に耳を傾けることの重要性を指摘しました。
山岸氏からは、グループ全体でパートナー社員(非正規雇用で働く社員)の組織化、組織拡大、組合役員の登用を進めてきた経緯について紹介。さらに、パートナー社員なくして会社は成り立たないとの認識のもと、パートナー社員の処遇改善に力を入れ、「従業員の『真の』幸せ」と「会社の健全な発展」を両軸で追求していることを強調しました。
景山氏は、連合島根結成30周年記念事業として2021年よりスタートした島根県立大学との共同研究や、コロナ禍に経営者協会との間で雇用を守る労使声明を調印・発出した取り組みについて紹介。地域社会において、精力的に地域活性化と組合の存在意義を高める取り組みを続けていることが報告されました。
パネルディスカッションでは活発な意見交換が行われ、最後に玄田教授より「労働組合の未来は、学び合いの中にある。研究会報告を考えるきっかけにしながら、組合において学び合う機会を持ってほしい」とメッセージが送られました。