連合ニュース 2024年

 
2024年04月25日
「中小企業家同友会全国協議会と連合との意見交換会」を開催
~共同談話をもとに、持続的に賃上げできる環境整備に向けて、両組織が連携し、力を合わせて取り組むことを確認~
共同談話(中同協・広浜会長と連合・清水事務局長)
 連合は、2024年4月24日、中小企業家同友会全国協議会(以下、中同協)との意見交換会を開催し、中小企業の適正取引と労務費の価格転嫁、人材不足、中小企業と地域活性化、中小企業振興基本条例等について、意見交換を行いました。

 冒頭、清水事務局長は、「中小・小規模事業者の適正取引と持続的に賃上げできる環境整備に向けた共同談話を両組織で事前に準備を進め、4月18日に確認し、両組織や地方に展開させていただいていることに、大変感謝申し上げる」と、昨年に続き2回目となる、共同談話を締結しての両組織の取り組みについて、謝意を述べました。
 そのうえで「円安と歴史的な物価高騰の中で、2024春季生活闘争は、例年にも増して注目度が高く、持続的な賃上げに向けて、30年硬直していた日本経済に大きなうねりを起こすターニングポイントになった。日本全体の賃金引き上げには、雇用労働者の7割を占める中小企業や、労働組合がない企業で働く未組織労働者、パート、非正規で働くひとの賃上げに広げていくかが重要。」と述べました。さらに「一方で、地域の活性化も重要な課題。より身近な地域においても中小企業団体と連携をさせていただきつつ、適正な価格転嫁や賃上げについて認識を共有するとともに、地域における課題を議論することにより、地域活性化につながるように連携を強化していきたい。」と挨拶しました。

 続いて中同協の広浜会長が挨拶し、「本日の意見交換会は10回目になるが、継続して意見交換する中で、労使共通の課題認識ができてきた。具体的には、優越的地位の濫用については、連合の政策として社会に発信していただいている。また、中小企業振興基本条例制定の運動では、連合も一緒に取り組んで、中小企業の後押しをしていただいている。」と述べました。
 そのうえで「中小企業では、この間、人手不足の問題が深刻である。賃上げでは、大企業は賃上げができても、中小企業は、賃上げの思いはあっても難しい面もある。しかしながら従業員は、賃上げしなければ入ってくれない。企業の社会的責任として、賃金を上げていく必要がある。そのためには、付加価値が必要であり、仕事の効率を上げる必要がある。中小企業では、多重下請け構造の問題もある。介護労働者も賃上げが厳しい。」最後に「このような中で、連合とのつながりを大事にしながら、一人一人が能力を発揮できるような社会にしていきたい。」と述べました。

 両組織からの報告では、中同協から同友会景況調査、経営実態アンケート、2024年賃上げ・ベースアップ等緊急アンケート、ダイハツ問題影響アンケート、政策要望・提言、中小企業魅力発信月間の取り組みの報告がありました。
連合からは「2024春季生活闘争 第4回回答集計・中小組合集計結果、地方版政労使会議の報告、笑顔と元気のプラットフォームの取り組み、過半数代表制度について説明しました。

 続いて、テーマにもとづき意見交換を行いました。
一つめの「中小企業の適正取引と労務費の価格転嫁、人材不足について」では、中同協の出席者から、自社や地域の現状について報告を受けました。

 中同協からは、「一斗缶のブリキの原材料がここ数年、3回に分けて40%上がった。当初は原材料のみの対応であったが、運賃、エネルギー、労務費などを加味して値上げをする空気感に変わったと身をもって感じている 。」
また「コールセンターでは、コロナ禍で接触をさけるために色々な窓口が増加し人手不足となった。パートの時給を上げるための見直しを積極的に行った。健康食品販売では原材料などの見直しを行った。」
 採用面では、「若い人は、結婚、子育てをしながら働き続けることができる会社や、社会貢献に取り組み、高揚感がもてる会社など、やりがいを求めている。」
 「今年は無理をして賃上げをしているが、毎年の賃上げはむずかしい気がする。政策面では、社会保険料の負担が大きい。共同談話の中でも社会保険料の増加抑制を盛り込んでいただいた。国からの助成をお願いしたい」などの報告がありました。

 連合から、社会保険料の負担に関しては、「すべての労働者に社会保険は適用すべきであり、安心して暮らし続けるためのセーフティーネットであると考える。」また「介護労働や病院関係でも賃上げができない現状がある。医療の効率化も必要である。特別加算の利用も周知している。介護は人がいなければ成り立たないサービスであり、介護人材の確保が必要であると感じている。」
 労務費の価格転嫁については『労務費の転嫁のための価格交渉に関する指針』が公表されたことは大きな成果だが、労務費やエネルギー価格など、半分も転嫁できていない現状がある。指針の周知徹底とあわせて、法改正も見据えた、より踏み込んだ対応が必要であり、継続的に物価も賃金も上がる社会にふさわしいルールが必要である。」
 「若い人が仕事を選ぶにあたっては、働くモチベーションにつながるよう、労働についての教育や主権者教育の充実も必要である。また、株式投資は、利益が消費に回らず次の投資に回るだけなので、消費や地域への還元にはつながらないのではないか。」などの意見が出されました。

 二つ目のテーマ「中小企業と地域活性化策について」では、両組織から中小企業振興基本条例「以下、(条例)」制定に向けた取り組み例を説明し、意見交換を行いました。
 中同協からは、2015年に制定された福岡県田川市の条例について、これまで条例に基づくビジョンの実現について議論されていた産業振興会議の下に部会を設け、実効性があがっている事例について、報告を受けました。
 連合からは、三重県桑名市の条例の事例紹介を行いました。連合三重、桑名地協が市長へ条例制定を求める要請を2023年4月に提出し、連合組織内議員の市議会における条例制定についての質問などを経て2024年4月に条例が制定された経緯について説明しました。

 最後にまとめとして、中同協の中山幹事長は、「中小企業はコロナ禍を社員と一緒に乗り越えようと頑張ってきた。コロナ後は、融資の返済がはじまった上、物価高騰、賃上げなど新たな課題があり、成長軌道に乗れない企業も多い。安定雇用のために経営者と社員が向き合って信頼関係をもとに協力し合っていくことが重要である。そのため、一人一人が能力を発揮できるよう、労働環境の改善に取り組むことが重要であることを本日学ぶことができた。労働者団体と経営者団体がともに共通する課題について意見交換することは重要であり、手を組んで、この環境を乗り越えていきたい。」と述べました。
 また、村上副事務局長は「本日は、労務費の価格転嫁や人材不足などの中小企業の現状のお話を、直接うかがうことができ、とても有意義であった。その中でも、前向きに労使がともに手を取り合って協力し合えることは多いと感じた。今後も様々な場面で意見交換をお願いしたい。」と締めくくりました。
 
  • 連合・清水事務局長
  • 中同協・広浜会長