連合ニュース 2024年

 
2024年03月27日
生活困窮者自立支援法等改正案 衆院厚労委で参考人質疑
連合・佐保総合局長が意見陳述
 政府提出の「生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案」に関する参考人質疑が26日、衆院厚生労働委員会(新谷正義委員長、自民)で行われ、連合の佐保昌一総合政策推進局長が意見陳述しました。
 参考人は佐保総合局長のほか、奥田知志氏(特定非営利活動法人抱樸理事長)、原田泰氏(名古屋商科大学ビジネススクール教授)、生水裕美氏(一般社団法人いのち支える自殺対策推進センター地域連携推進部地域支援室長)、坂庭國晴氏(国民の住まいを守る全国連絡会代表幹事)の計5人。
 同法案は居住支援の強化や子どもの貧困への対応、生活困窮者自立支援制度と生活保護制度の連携などが柱で、13日に趣旨説明が行われ、審議入りしました。月内に衆院を通過する見通しです。

<佐保総合局長の発言要旨>
○入居から退去まで、切れ目のない支援体制を構築するためには、公営住宅やセーフティネット住宅・空き家の活用を進めるとともに、居住支援法人などとの連携を強化することが必要だ。また、住まいは生活の基盤であることから、誰もが住居を確保し、安心してくらせるよう、国による住居費の支援など、住宅確保要配慮者に対する恒常的な居住保障の仕組みを検討すべき。
○子ども食堂など、学校や家庭以外の居場所を充実するとともに、重層的支援体制整備事業との連携を強化することが必要だ。学習・生活支援事業の必須事業化をめざし、小規模自治体における広域連携も含め、実施率を向上させることが重要だ。
○就労準備支援事業と家計改善支援事業の必須事業化をめざし、各事業の実施率を高めるとともに、自治体間格差の是正、事業の質の改善をはかるべき。
○生活困窮者自立支援制度と生活保護制度との連携については、現場の業務負担の増加により、支援の質が低下しないよう、両制度の実施機関の適切な人員体制を確保すべき。また、生活困窮者向け事業の事業者等への委託契約が1年ごとのケースも多く、現場で支援に携わる人たちが不安定な雇用形態で働いていると聞く。事業の委託方法は各自治体の判断となるが、課題として認識すべきではないか。
○医療扶助の適正化を推進するとともに、自治体のガバナンス強化や頻回受診・長期入院の適正化の観点から考えれば、生活保護受給者の国民健康保険や後期高齢者医療制度への加入も検討することが必要だ。
○生活困窮者自立支援制度の機能強化に向けては、支援員などの処遇を改善し、人材の確保と定着をはかることが欠かせず、その裏付けとなる財源を確保すべき。全国の支援員などの賃金実態の把握も必要。また、社会福祉士など専門性を持つ専任職員の配置を含め、地域の実情に応じて適切な人員体制が確保できるよう取り組んでいただきたい。被保護者に対する自立支援においても、人材確保のための処遇改善と財源確保が必要だ。
 
<佐保総合局長に対する主な質疑>
(立民・井坂信彦議員)
 連合がまとめた2024春闘の第2回集計結果によると、平均賃上げ率は5.25%で、初回集計とほぼ同じで高い水準を維持している。一方、支援員の賃金実態は大変厳しい状況にあると受け止めている。
(佐保総合局長)
 まずは、全国の相談支援員の賃金水準、雇用形態等の実態を把握していただきたい。その上で、生活保護のケースワーカーなど同種の業務の処遇と比較し、適正な水準なのか検証すべき。国の責任において、雇用の安定、賃金水準の大幅な引き上げなどの処遇改善、定着促進に取り組んでいただきたい。
(立民・井坂信彦議員)
 生活困窮者向け事業について、委託契約が1年ごとのため、不安定な雇用形態で働くケースもあるとのことだが。
(佐保総合局長)
 現場の声として、単年度契約の公募型プロポーザル方式で選定しているため、事業の財政基盤が安定せず、支援員の細切れ雇用と低賃金の要因になっているとの指摘もある。単年度契約と複数年契約、公募と随意契約の比率など実態を把握してほしい。事業の安定と支援員の雇用の安定、処遇の改善をはかるためにも、一定期間委託して支援の質や実績の総合評価を行うよう、自治体にガイドラインや通達で徹底すべき。
(国民・田中健議員)
 連合が考える「誰もが心して暮らせる住まいの確保」とは。
(佐保総合局長)
 「居住の権利」を基本的人権として位置づけ、経済状況にかかわらず、誰もが安全・安心で快適に住み続けることのできる住まいを確保することが求められる。こうしたことから、家賃補助や住宅の現物支給など、恒常的な居住保障の仕組みを検討していただくようお願いしたい。