連合ニュース 2024年

 
2024年03月22日
全国中小企業団体中央会と連合との懇談会を開催
~共同談話をもとに、両組織が連携し、力を合わせて取り組むことを確認~
共同談話手交時の様子
 連合は3月22日(金)、全国中小企業団体中央会(「以下、中央会」)との懇談会を都内で開催し、「中小企業の適正取引と価格転嫁の課題など」をテーマとして意見交換を行いました。
 冒頭、両組織を代表して連合から芳野会長、中央会から森会長が、それぞれ挨拶を述べました。
 
<芳野会長あいさつ>
 「中小・小規模事業者の適正取引と持続的に賃上げできる環境整備に向けた共同談話」の締結は昨年に引き続いて2度目であり、この間の取り組みへのご理解に感謝申し上げる。2024春季生活闘争では、多くの組合が昨年を上回る要求提出を行い、30年ぶりとなる高水準の賃上げを実現したが、依然として賃上げを上回る物価上昇が続き、実質賃金を上昇させるまでには至っていない。今次闘争は昨年以上に注目されており、持続的な賃上げに向けた大きなターニングポイントである。
 その中で、中小企業では人手不足が非常に大きな課題となっており、人材の確保・定着のためには、月例賃金にこだわった「底上げ」「底支え」「格差是正」を進め、「人への投資」を行っていく必要がある。今年は1~2月を中心に全国で「地方版政労使会議」が展開され、適正な価格転嫁や賃上げについて認識を共有するとともに、地場・地域における課題を議論する場が設けられた。労働組合の立場からも、取引の適正化に向けてより一層の取り組みを進めていきたい。
 また、地域の活性化も引き続き重要な課題の一つである。日本の雇用労働者のおよそ7割は中小企業で働いており、地方経済と地域の雇用を支えている。各地域で生まれ育ち、地域との「つながり」を持ちながら暮らしていくためには、それぞれの人の力を存分に発揮できる環境づくりが大切である。本日の懇談会を機にさらに連携を強化し、「笑顔と元気のプラットフォーム」を通じて中小企業の経営基盤の強化と、地域活性化に向けて共に取り組んでいきたい。
 
<全国中央会・森会長あいさつ>
 先週13日に官邸で開催された「政労使の意見交換」で同席した芳野会長と、引き続き懇談の場が持てたことを大変嬉しく思う。当日の芳野会長の意見と私の意見は、基本的に一致していると思っている。物価を上回る賃上げを実現するためには、「構造的な価格転嫁の実現」を図っていくことが必要である。「政労使の意見交換」では、労務費等の十分な価格転嫁に必要な労務費転嫁ガイドラインの一層の活用、下請法の厳正執行、独禁法運用強化等を要望した。
 他方、中小経営者の意識改革も必要であることから、取引価格の引上げや、単価を一方的に引下げる悪しき慣行の廃止を求めることが必要であり、付加価値向上によるマークアップ率改善のための攻めの経営に舵を切ることを、中央会としては経営者の方々に要請していく。加えて、現下の中小企業の現状を踏まえ、賃上げの原資確保として人手不足対策、そのための省力化投資の推進、リスキリングによる従業員の能力向上等の推進、ゼロゼロ融資の借換えのための資金繰り、廃業増加に対応する事業承継・事業再生の強化によって、事業と雇用の維持、更には新たな成長分野への進出促進も必要である。
 政労使が一体となって価格転嫁の取り組みを推進していくとともに、値上げに対する国民全体の理解と気運づくりが進むことも重要である。本日は全国中央会で各地域を代表する副会長から、各地の価格転嫁と人手不足への取り組みを紹介し、地域からの実情に基づく忌憚のない意見交換を期したい。
 
 その後、中央会から、中小企業等協同組合法における「団体協約」の取り組みと、中小企業の経営状況と賃金改定決定要素について、連合から、2024春季生活闘争第2回回答集計結果や地方版政労使会議の開催、「笑顔と元気のプラットフォーム」、過半数代表制などについて報告しました。
 
 また、中央会の各副会長(北海道、埼玉県、東京都、愛知県、大阪府、島根県、香川県、熊本県)から、「企業規模が小さいほど、価格転嫁が進んでいない」「2024問題を含む、時間外労働時間の規制が人手不足に影響している」「企業においても社会保障費の負担が増えている」「若手を呼び込むために、奨学金返済の助成制度を活用している」など、地域実態に基づいて意見が述べられ、それをふまえて意見交換が行われました。
 
 連合からは、「『労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針』の実効性向上に向けて、フォローアップを進めていきたい」「時間外の上限規制については、消費者を含めユーザーの理解促進が不可欠。工期や納品に余裕のある発注を呼びかける必要がある」「奨学金返済助成制度の導入は、若年層を地域に呼び込むきっかけの一つとなる」などの意見が出されました。
 
 最後に、本懇談会を締めくくるにあたり森会長は、
「本懇談会では地域からの実情をふまえ、価格転嫁の現状について認識を共有できたのではないかと思う。経営者自身のデフレマインドが変わっていくなかで、さらなる意識改革の促進には労使の連携が欠かせない。地域の事情や問題意識を全国で共有し、攻めの経営が促進されるよう引き続き取り組んでいく。」
と述べました。
 
 芳野会長は、
「我々は労働者であり生活者であるが、価格転嫁の促進には生活者のマインドを変えることも必要。前年の取り組みを単に踏襲するのではなく、デフレからの脱却に向けて取り組みを強化し、新たな活動を展開していく。これからも政労使が同じ方向を向き、現環境からの脱出に取り組んでいきたい。」
と発言しました。
 
以 上
  • 全国中央会 森会長
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