連合ニュース 2024年

 
2024年02月02日
経団連と連合との懇談会を開催
-持続的な賃上げの実現と、 賃金も物価も経済も安定的に上昇する経済社会へのステージ転換などに向けて議論-
懇談会全景
連合は2月1日、経団連との懇談会を都内で開催し、「春季労使交渉をめぐる諸問題について」をテーマに意見交換を行いました。
 
冒頭、十倉経団連会長、芳野連合会長の順にあいさつしました。
十倉会長は、「わが国経済は、緩やかに回復しつつあるものの、高い水準で推移する物価動向の影響や、深刻度を増している労働力不足、産業構造の変革に伴う労働需給の変化への対応など、様々な課題に直面している。現在のコストプッシュ型のインフレを、デフレから脱却できる千載一遇のチャンスと捉え、今年は昨年以上の熱量と決意をもって、物価上昇に負けない賃金引上げをめざすことが、経団連・企業の社会的責務と考えている。
経団連は、各企業に対し、『賃金決定の大原則』に則った検討の際、特に物価動向を重視し、ベースアップを念頭に置きながら、自社に適した方法で、できる限りの賃金引上げの検討・実施を呼びかけるなど、昨年以上の賃金引上げに果敢に取り組んでいる。特に今年は、賃金引上げのモメンタムを、中小企業の構造的な賃金引上げへと着実に波及させることが重要である。そのために、価格転嫁や価格アップに対するネガティブな意識を、社会全体で変えていく必要がある。
その一環として、経団連では全会員企業に『パートナーシップ構築宣言』への参画を求めるとともに、実効性の一層の確保も呼びかけている。そして、宣言の趣旨をソーシャルノルム・社会的規範として広く浸透させていきたい。
問題認識や今年の春季労使交渉における賃金引上げの重要性は、連合とは共有できている。未来を協力して創り上げる、「協創」する労使関係に向けて有益な意見交換をしていきたい。」と述べました。
 
芳野会長は、「昨年は30年ぶりの高水準での賃上げが実現したものの、物価高が継続し、実質賃金はマイナスで推移している。一方で、株価はバブル崩壊以降の最高値を記録しているものの、指標としての株価と生活実感の乖離が実際のところではないか。
こうした中、連合は『賃金も物価も経済も安定的に上昇する経済社会へとステージ転換をはかる』ため、2024春季生活闘争をその正念場と位置付けて取り組みを進めている。そのカギは大企業から中小・小規模事業者までのすべての段階で、労働者が賃上げの効果を実感することにある。実現のためには、商取引の各段階で『労務費を含む価格転嫁』が確実に行われ、取引先の各企業において賃上げ原資を確保することにあると確信している。大手企業は自ら進んで価格転嫁の努力をし、中小・小規模事業者は遠慮せずに価格交渉を持ち掛け、政府はその環境整備に全力を注いでほしい。『価格転嫁、価格交渉、環境整備』が2024春季生活闘争の要であり、会員各企業がこの流れに先鞭をつけていただくようお願いしたい。
2023年の日本のGDPは、ドイツに抜かれ4位に後退することが報じられている。再び強靭さを取り戻すためには、さまざまな分野で相当な努力が求められる中で、私たちは『多様性』が重要なカギの一つであると考えている。女性活躍はもちろん、さまざまな人々が集い、それぞれの人たちが自分らしく能力を発揮することができ、かつ他者を尊重する受容性の高い社会を築くことが、イノベーションを生み、多岐にわたる課題を解決することに繋がるものと思う。そして、挑戦を促し、社会に変革をもたらすことで、新たな成長につながっていくのではないか。連合として、そのような社会を展望しながら、あわせて『働くことを軸とする安心社会』の追求を続けていきたい。」と述べました。
 
その後の意見交換において、連合側は「労務費を含めた価格転嫁の必要性」「2024年問題をはじめとした物流・運輸産業における課題」「人手不足などサービス産業における課題」「パートタイマーをはじめとした雇用形態間の格差是正」「収入の壁問題」「選択的夫婦別氏制度の実現」「男女とも育児・家事とキャリア形成を両立できる環境整備」「被災地の復旧、復興に向けた対応」「地方に対する直接的・間接的投資の必要性」などについて提起しました。
経団連側からは「中小企業を含めた構造的な賃金引き上げ」「自律的な働き方を後押しする制度整備」「パートナーシップ構築宣言の参画と実効性確保の強化」「成長と分配の好循環の実現に向けた人への投資の必要性」「生成AIなどの技術を活用した生産性向上」「価格転嫁に対する消費者の意識改革や行動変容」「労使間コミュニケーションの場の確保」「外国人雇用の在り方」などについて意見が示されました。
 
まとめのあいさつで芳野会長は、「本日の意見交換では、消費者マインドに関する意見が多く出された。私たち労働者も一方では消費者であり生活者であり、一人ひとりのマインドを変えていくことが重要である。2024春季生活闘争では、賃上げと同時に消費者マインドを変えていく必要があると考えている。
春季生活闘争に向けて労使が同じ方向性であることが本日改めて確認できた。今後は建設的な労使交渉の中で、より良い成果が出ることを期待したい。連合としては、大手に続く中小・小規模事業所の交渉をサポートしていきたい。
2024春季生活闘争においては、中小・小規模事業所、非正規雇用で働く労働者の底上げが重要であり、連合として情報公開をしながら全国的に賃上げの流れを波及できるように運動展開をしたい。同時に、『良いものには相応の値段がつく、適正な価格がある』ということについても連合として発信をしていきたい。
これからの交渉に向けて連合としても労務費を含めた価格転嫁について、自社の取り組みを確認しながら、企業の発展の中で処遇改善を求めていくことに力を注いでいきたい。」と述べました。
 
十倉会長は、「労使は同じベクトルに向かって進んでいると本日改めて認識した。連合白書にある通り、ステージを変えなければならない。賃上げのみならず、成長と分配の好循環を実現しなければならない。マクロの経済環境を良くしていくことと同時に、人への投資や働き方改革に取り組んでいく。望む人がともに働き、ともに子供を育てることができる社会を作っていきたい。
また、社会保障制度に関する連合の考え方は経団連と近しいものがあると感じている。社会保障改革を進めていかなければならない。
構造的賃上げのためには成長と分配の好循環を成し遂げなければならない。コストプッシュインフレで始まったインフレであるが、今後はデマンドプル型に変えていき、2%程度の適度な物価上昇に対しベースアップと生産性向上で上回っていくことをめざすべきである。
価格転嫁については、よい製品やよいサービスには値がつくという認識を、経営者、労働者のみならず、社会全体でソーシャルノルムにしていかなければならない。経団連でも、『パートナーシップ構築宣言』について取り組みを強化していかなければならないと考えている。」と述べ、懇談会は閉会しました。
  • 芳野会長挨拶
  • 十倉会長挨拶