連合ニュース 2023年

 
2023年12月22日
「第5回未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」で連合の取り組みを報告し、働きの価値に見合った労働条件の必要性について訴える
 12月21日、「第5回未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」(主宰:内閣府特命担当大臣(経済財政政策)、経済産業大臣)がオンラインで開催されました。関係業所管庁(厚生労働省、農林水産省、国土交通省)の他、労働界代表として連合芳野会長、経済界代表として十倉日本経済団体連合会会長、小林日本商工会議所会頭、また、臨時委員として村井全国知事会会長、矢田内閣総理大臣補佐官が出席しました。

 新藤内閣府特命担当大臣より冒頭挨拶のあと、齋藤経済産業大臣より、価格転嫁等の状況、宣言企業・下請企業に対する調査(7~9月)、パートナーシップ構築宣言の拡大・実効性向上に向けた今後の取り組みについて報告がありました。続いて、公正取引委員会・片桐経済取引局取引部長から、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」についての説明がなされ、その後、産業界、労働界、臨時委員、業所管大臣がこの間の取り組み報告や意見表明を行いました。最後に、新藤内閣府特命担当大臣が締めくくりの挨拶を述べ、閉会となりました。
 
■齋藤経済産業大臣
 中小企業庁の調査によれば、多くの宣言企業は引き続き取引適正化に取り組んでいるが、価格転嫁については、高水準の転嫁を受け入れた割合が 昨年に比べて低下するなどの課題が見られる。今後は転嫁率の上昇が重要である。宣言企業は率先して高水準の価格転嫁を実現していただきたい。
 下請企業からは、宣言企業に対して、取引適正化の重要な要素である働き方改革へ大きな期待が寄せられている。宣言企業は適正なコスト負担を伴わない短納期発注や急な仕様変更を行わないことは大前提とし、下請企業の働き方改革を積極的に支援するなど、一層の取り組みをお願いする。
 経産省としては、下請企業から見た宣言企業評価の個別通知、シンポジウムの開催、優良な取り組みの表彰など、宣言企業の今後の参考となる事例を発信していく。宣言内容の実行に課題のある企業も個別にフォローアップする。官民が連携してパートナーシップ構築宣言を一層推進し、取引適正化につなげていく。
 
十倉経団連会長
 経団連では、大企業と中小企業、フリーランスを含むサプライチェーン全体での共存・共栄関係の構築が、社会全体としての構造的な賃上げ、サスティナブルな資本主義の実現に不可欠であると認識し、会員企業に対してパートナーシップ構築宣言の周知徹底を行っている。
 会長・副会長、審議委員会議長・副議長企業の全社が宣言を公表していることに加え、資本金1,000億以上の企業は9割以上が宣言している。また、東京証券取引所に上場している会員企業のうち、時価総額ベースで9割以上が宣言している。ただし、業界団体によりかなりばらつきがあり、業界全体への浸透をはかる必要がある。特に、11月末に発表された「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」では、パートナーシップ構築宣言に労務費の転嫁に対する方針を盛り込むことがあげられており、人への投資として価格に転嫁することが重要である。
 また、企業の責任ある行動ベースとして「企業行動憲章」を制定しており、全ての会員企業に順守を求めている。来年にはこの「企業行動憲章」を改定し、パートナーシップ構築宣言の趣旨を憲章本体の内容に盛り込むことについても検討している。政府と連携しながら、価格転嫁を通じた取引の適正化、地域の賃金引上げに向けた環境整備に尽力していく。
 
小林日商会頭
 パートナーシップ構築宣言の普及という点では、現在、会員企業31,000社が宣言を公表しており、昨年比約2.5倍となっている。しかし、日商の調査では、価格協議している企業は約75%という一方、転嫁が4割以上できた企業は約55%である。政府から公表された「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」をこれから積極的に活用し、価格転嫁の取り組みを進めていく。
 地方の中小企業においては、受注者であると同時に発注者になるケースもある。地域を支える商工会議所として、改めて好循環を進めるパートナーシップ構築宣言への速やかな協力をこれからも求めていく。また、11月に全ての都道府県において、宣言に関する推進協定あるいは優遇措置が講じられている。宣言企業への優遇措置のさらなる拡充をお願いしたい。
 
芳野連合会長
 2024春季生活闘争は、経済も賃金も物価も安定的に上昇するステージへ転換する正念場であり、2023闘争を上回る水準で継続的な賃上げを実現することが大切。そのためには、パートナーシップ構築宣言のさらなる拡大とあわせて、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を社会や企業、企業のなかでも価格交渉の窓口である調達部門にまで浸透させ、遅れていた労務費の価格転嫁を進めることも非常に重要である。指針については、国と地方が総がかりで周知・相談活動を展開する必要があり、中央での政労使の意見交換と同様に、都道府県レベルで政労使団体が集まって認識合わせする機会を持つことも重要である。
 連合としても、大企業と中小企業が互いに価値を認め合い共存共栄し、そこで働く者が働きの価値に見合った労働条件を実現できるよう、引き続き協力したい。
 
■村井全国知事会会長
 2022年9月に協定を締結した埼玉県を先駆けとして、現在では33道府県で、都道府県を含めた地域の関係機関による協定締結や共同宣言などが行われており、地域全体でパートナーシップの構築をはかり、バックアップする体制が整っている。さらに、31の道府県において、パートナーシップ構築宣言を行った事業に対する都道府県単独の補助金や融資、入札審査の加点など、様々な優遇措置が行われている。
 一方で、コロナ禍を経て再び強まりを見せている、東京一極集中による人手不足に一層の拍車がかかるために、防衛的な賃上げを余儀なくされている中小企業が地方には非常に多く存在している。
 政府においては引き続き、価格転嫁・取引適正化対策の実施をお願いするとともに、特に大企業によるパートナーシップ構築宣言数の拡大にお力添えいただくようお願いしたい。同宣言の普及を始め、中小企業の経営環境の改善と向上の実現を全力で支援していく。

■矢田内閣総理大臣補佐官
 物価上昇を上回る賃上げは喫緊の課題であり、パートナーシップ構築宣言には、労働界関係者からも大きな期待が寄せられている。地方において、地元の自治体のサポートのもとでパートナーシップ構築宣言を活用し、労働組合の団体も含めて、一体となった価格転嫁や取引適正化の取り組みが拡大していくことを期待したい。
 各業所管省庁には、各業界における自主行動計画の制定・見直しや、さらなる宣言の拡大に向けて、大手企業を中心に制度的な働きかけをお願いしたい。
 
新藤内閣府特命担当大臣
 経済が熱量あふれる新たなステージへ移行しつつある中、何よりも重要なことは、サプライチェーン全体において価格転嫁を通じた適正な価格設定を定着させ、物価上昇に追いつく持続的・構造的な賃上げを実現していくことである。今後は、労務費の転嫁を進めるとともに型取引や手形取引の改善、そして取引先企業の働き方改革への協力など、パートナーシップ構築宣言の実効性を高める取り組みを強化していくことも重要である。
 パートナーシップ構築宣言の取り組みを、デフレからの脱却、民主主導の持続的成長の実現につなげていただきたい。その中で、内閣府と公正取引委員会が連携して策定した「労務費の転嫁と価格交渉に関するガイドライン」、価格交渉の申し込み様式といったものも活用いただきたい。
以上