連合ニュース 2023年

 
2023年12月12日
こども未来戦略会議(第8回)に芳野会長が出席
「こども未来戦略」案を議論

 政府は12月11日、「こども未来戦略会議」(議長・岸田首相)の8回目の会合を首相官邸で開き、子ども・子育て政策を強化するために、今後3年間で集中的に取り組む具体策と財源を示した「こども未来戦略」案を議論しました。岸田首相は3.6兆円規模の財源について、「徹底した歳出改革などで確保することを原則とする。歳出改革と賃上げで実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で支援金制度を構築することで、実質的な負担が生じない」と述べました。

 この日の会合で、連合の芳野会長は意見書を提出するとともに、以下のとおり発言しました。
<芳野会長の発言要旨>

〇誰もが「安心して子どもを生み育てやすい社会」だと実感するためには、所得や雇用の不安を解消することが必要不可欠だ。加えて、固定的性別役割分担意識の払拭はもとより、長時間労働を是正し、誰もが仕事と生活を両立できるようにすることが喫緊の課題だ。今後は、「戦略」の取り組みの効果について、生活の質の向上はもとより、必要性、効率性、有効性の観点から政策評価を行い、不断の改善をはかる必要がある。

〇「支援金制度」については、社会保障の機能劣化への懸念、給付と負担の関係の不明確さ、様々な政策の財源確保において前例となる危惧などの課題がある。財源については、社会全体で子ども・子育てを支える考えにもとづき、税や財政全体の見直しなど、幅広い財源確保策を検討すべきことを改めて申し上げる。

 

 また、岸田首相は会議の締めくくりで、以下のとおり述べました。

〇少子化は我が国が直面する最大の危機であり、6月の戦略方針で示した加速化プランに掲げる各種施策について、スピード感ある実行が重要と申し上げてきた。できるところから取り組みを実施するため、先般成立した補正予算においても、こども誰でも通園制度の試行的事業などを盛り込んでおり、前倒しでスタートする。

〇本日の戦略案では、3.6兆円程度に及ぶ、前例のない規模での政策強化の具体案を盛り込んでいる。これにより、我が国の子ども1人当たりの家族関係支出は16%程度になると見込まれ、OECD(経済協力開発機構)トップのスウェーデンの水準に達し、画期的に前進する。

〇具体的には、第一に、経済的支援の強化として、児童手当の抜本拡充を行う。第3子以降の多子加算の要件を見直すほか、支給回数を年6回に改め、来年中には拡充後の手当が手元に届くようにする。さらに、高等教育費の支援についても思い切って拡充し、多子世帯の大学・短期大学に通う学生、高等専門学校の4・5年生、専門学校に通う生徒について授業料・入学金を無償とする。

〇第二に、全ての子ども・子育て世帯への支援を拡充するため、妊娠期から伴走型できめ細かな支援を行うとともに、現場で働く保育士等の処遇改善や配置改善、こども誰でも通園制度の創設に取り組む。あわせて、貧困・ひとり親、児童虐待防止、障害児・医療的ケア児といった多様なニーズへの支援を抜本的に強化・拡充する。具体的には、ひとり親世帯向けの児童扶養手当の拡充や、障害を持つ子ども向けの補装具費の所得制限の撤廃など、長らく指摘されてきた課題に対応し、虐待等により家庭から孤立した子ども・若者の安全な居場所の確保や、子育てに困難を抱える子どもや家庭へのアウトリーチ支援など新たなニーズにも応えていくとともに、貧困の連鎖を断ち切るため、学習支援、生活支援を強化し、全ての子どものチャレンジをしっかり後押しする。

〇第三に、両親が共にキャリアを諦めることなく、協力して育児をできる共働き・共育て社会の推進に向けた取り組みを強化する。出生後の一定期間、育休給付の給付率を手取り十割に引き上げるほか、テレワークや時短勤務など柔軟な働き方を選べる制度を設け、さらに、時短勤務を選んだ場合でも給付をもらえるようにする。

〇こうした取り組みを安定的に支える財源については、本日具体的に内訳とその金額を示したとおり、徹底した歳出改革等によって確保することを原則とする。国・地方の社会保障関係の既定予算について執行の精査等を通じて最大限の活用等を行うほか、改革工程に沿って、全世代型の社会保障制度を構築する観点から、2028年度までに徹底した歳出改革等を行い、それによって得られる公費節減の効果と社会保険負担軽減の効果を活用する。歳出改革と賃上げによって実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で支援金制度を構築することにより、実質的な負担が生じないこととする。

〇今後、与党とも十分に連携しつつ、来年度予算と共に、年末までにこども未来戦略を取りまとめる。その上で、来年の通常国会に必要な法案を提出し、スピード感を持って、実行に移す。 

                                              以 上