連合ニュース 2023年

 
2023年08月08日
法務省に対し、連合の重点政策を要請
要請の様子
連合は8月3日、法務省に対して、「2023年度 連合の重点政策」に関する要請を実施しました。
 
冒頭、清水事務局長が、「組合員・生活者の声を集めて重点政策をまとめた。来年度予算と法務行政への反映をお願いしたい」と挨拶しました。齋藤大臣は、「法務省の政策は、いかに国民的コンセンサスを作るかが大事であり、しっかり取り組みたい」と応じました。
 
その後、清水事務局長から齋藤大臣に要請書を手交し、冨高総合政策推進局長、冨田総合政策推進局長、井上総合政策推進局長が、主な要請内容(下記5項目)を説明しました。
 
○労働債権の優先順位を引き上げるとともに、労働債権の一部について、別除権(抵当・質権等)に優先させる制度(労働債権の特別な先取特権)を新たに創設する。
○全事件の取調べの全過程を録音・録画することを制度化するなど、手続きの透明性や国民への説明責任が担保された、国民にもわかりやすい刑事司法制度の実現に向けて更なる改革を推し進めるとともに、現行制度の運用の適正化をはかる。
○選択的夫婦別氏制度を導入する。ただし、別氏を選択した夫婦の子の氏については、その出生の際に、父母の協議により、子の称する氏を父または母いずれかの氏とする。
○無戸籍の要因ともなっている嫡出推定については、2022年の民法改正により見直しがはかられたが、無戸籍者問題の全面的な解消には至っていないため、婚姻中に懐胎し、離婚後300日以内に出生した子の父親を前夫とする嫡出推定規定そのものの存廃も含め、無戸籍者を生じうる民法上の規定のさらなる見直しを求める。
○同性パートナーの権利保障のため事実婚に準じた扱いとすることや、戸籍変更要件の緩和など、性的指向や性自認に関する課題の解消に向けた民法の整備を進める。
 
これらについて、法務省は、「労働債権保護は、法制審担保法制部会で審議が行われており、要綱案のとりまとめに向けて充実した議論ができるよう取り組む」、「取調べの録音・録画制度は、改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会で議論が行われており、充実した協議・意見交換が行われるよう努める」、「選択的夫婦別氏制度については、国民各層の意見や国会の議論の動向を注視しつつ検討したい」、「嫡出推定については、現状を維持しつつ、改正の効果や無戸籍者の状況を見ながら対応していく」、「同性婚については、国民各層の意見や国会の議論の動向を注視していく」と回答しました。
 
意見交換では、連合が、「担保法制の見直しにあたっては、労働債権を担保権に優先させる具体的方法についても部会で検討し同時に整理いただくとともに、事業担保権を含め丁寧に議論してほしい」、「全事件の取り調べの全過程の録音・録画の制度化を前向きに検討してほしい」、「子の氏をどう定めるかは、1996年の法制審答申ですでに出ている。職場では旧姓の通称使用では仕事面で不便な点もあり、早急に対応していただきたい」、「女性が離婚後に再婚しないまま懐胎した場合、子が無戸籍の状況に置かれる可能性は変わらない。今後、法改正の効果・検証をお願いしたい」、「多くの自治体でパートナーシップ条例が導入されている。それだけ国民のニーズが多いということであり、その状況を受け止め早期に取り組んでほしい」と述べました。
 
これに対し、法務省は、「担保法制部会では、現在の判例法理を一部修正し、一般債権を優先させる案も提示した。事業担保権を含めて法制審で丁寧な議論が行われるよう努めたい」、「取調べの録音・録画制度は、協議会で議論が行われており、充実した協議・意見交換が行われるよう対応したい」、「選択的夫婦別氏制度については、子の氏の定め方にも、婚姻の際か出生時かなどの議論があり、国民各層の意見や国会の議論を受け止め、引き続き努力したい」、「嫡出推定に関する法改正は、嫡出否認を訴える者の拡大や出訴期間の延長など、利用しやすい内容とした。周知もしたうえで、施行後の状況を見ていきたい」、「パートナーシップ条例の状況は承知しているが、税制の問題など、法務省だけでは解決できず、政府全体で取り組まなければならない」と回答しました。
 
最後に、清水事務局長が、連合の要請事項についての積極的な取り組みを改めて強く求めて、締めくくりました。