連合ニュース 2023年

 
2023年06月02日
こども未来戦略会議(第5回)に芳野会長が出席
施策や財源の基本的方向を盛り込む「こども未来戦略方針」案が示される
 政府は6月1日、「こども未来戦略会議」(議長・岸田首相)の5回目の会合を首相官邸で開き、子ども・子育て政策を強化するために、今後3年間で集中的に取り組む具体策と財源の基本的方向を盛り込む「こども未来戦略方針」案を示し、議論を行いました。岸田首相は財源に関し、徹底した歳出改革などにより、「(国民に)実質的に追加負担を生じさせないことをめざす」と述べました。

 この日の会合で、連合の芳野会長は意見書を提出するとともに、以下のとおり発言しました。
 <芳野会長の発言要旨>
〇子ども・子育て政策の推進においては、固定的性別役割分担意識からの脱却はもとより、働き方改革を推進し、子育て世代に限定せず、誰もが仕事と生活を両立できる社会を構築することが重要だ。さらに、社会全体の意識を変えるためには、結婚を前提とした家族のあり方だけでなく、多様な家族形態を認め合い、理解を促進することも必要だ。
〇また、子育て世代を取り巻く家族や地域からの「子育てとはこうあるべき」などといった固定概念など、国民の意識を変えていくとともに、どの地域においても、希望する人が安心して子どもを生み育てられるよう、良質な雇用の確保、就業環境の改善をはかり、これからの若い世代を含めて、「子育てしやすい社会」だと実感できるようにすべき。
〇財源について、社会保障における制度改革や歳出の見直しが強調されてい るが、将来にわたり誰もが安心してくらし続けられるよう、医療、介護、年金をはじめとする社会保障の機能劣化を招いてはならない。そのうえで、本会議においても様々な意見がある中、「支援金制度(仮称)」の構築について国民の理解を得るには明らかに議論不足だ。なぜ「支援金制度」でなければならないのか、さらには負担と給付の関係性、支援金の運営責任、拠出する側からの意見反映はどう行うのかなどの課題もある。
〇2023春季生活闘争では、労使の真摯な協議によってほぼ30年ぶりとなる水準の賃上げが実現したが、実質賃金および経済がともに継続的に上昇するステージへの転換を確実なものとするためには、「賃上げの流れ」を中期的に継続する必要がある。賃上げの流れに水を差すことなく、税や財政の見直しなど、幅広い財源確保策を検討すべき。

 また、岸田首相は会議の締めくくりで、以下のとおり述べました。
 <岸田首相の発言要旨>
〇若年人口が急激に減少する2030年代に入るまでが、少子化トレンドを反転できるラストチャンス。今回の戦略の基本的考え方として、2つの重要なポイントがある。第一に、経済成長実現との両立をはかり、若者・子育て世代の所得を伸ばすこと。このため、新しい資本主義のもと、力強い成果が出始めている賃上げと人への投資、民間投資の増加の流れを加速化し、安定的な経済成長の実現に先行して取り組む。そして、経済成長の果実が若者・子育て世代にもしっかりと分配されるよう、最低賃金の引き上げや三位一体の労働市場改革を通じ、持続的かつ構造的な賃上げを実現する。第二に、スピード感。児童手当やこども誰でも通園制度の取り組みをはじめ、必要な施策は来年度から速やかに実施する。
〇次元の異なる少子化対策は、▽構造的賃上げ等とあわせて経済的支援を充実させ、若い世代の所得を増やす▽社会全体の構造や意識を変える▽すべての子ども・子育て世帯をライフステージに応じて切れ目なく支援する──の3つを基本理念とし、抜本的に政策を強化する。
〇試案における加速化プランの内容を具体化することに加え、高等教育費のさらなる支援拡充策、今後こども大綱の中で具体化する貧困、虐待防止、障害児・医療的ケア児に関する支援策も前倒しで実行し、全体で3兆円半ばの充実を図る。これにより、わが国の子ども・子育て関係予算は子ども1人当たりの家族関係支出で見て、OECD(経済協力開発機構)トップ水準のスウェーデンに達する水準となり、画期的に前進する。
〇次元の異なる少子化対策と若者・子育て世代の所得向上を車の両輪として進めることが重要であり、少子化対策の財源を確保するために、経済成長を阻害し、若者・子育て世代の所得を減らしてはならない。財源は、まずは徹底した歳出改革等で確保することを原則とする。全世代型社会保障を構築する観点から、歳出改革の取り組みを徹底するほか、既定予算を最大限活用する。これにより、実質的に追加負担を生じさせないことをめざす。経済成長の実現に先行して取り組みつつ、歳出改革等を複数年にわたって積み上げて安定財源を確保するが、2030年の節目に遅れないように、少子化対策は前倒しで速やかに実施し、その間の財源不足にはこども特例公債を発行する。経済を成長させ、国民の所得が向上することで、経済基盤と財政基盤を確固たるものとするとともに、歳出改革等による公費と社会保険負担軽減等の効果を活用し、国民に実質的な追加負担を求めることなく、少子化対策を進める。
〇試案を具体化し、さらに拡充させることができた。今後、与党とも十分に連携しつつ、骨太の方針に向け、こども未来戦略方針を取りまとめる。
以上