連合ニュース 2023年

 
2023年05月17日
こども未来戦略会議(第3回)に芳野会長が出席
政府試案の「加速化プラン」を議論
 政府は5月17日、「こども未来戦略会議」(議長・岸田首相)の3回目の会合を首相官邸で開き、3月末にまとめた「こども・子育て政策の強化について(試案)」で、今後3年間で集中的に取り組むとした「加速化プラン」の内容を議論しました。同プランは▽ライフステージを通じた子育てに係る経済的支援の強化▽すべての子ども・子育て世帯を対象とするサービスの拡充▽共働き・共育ての推進▽子ども・子育てにやさしい社会づくりのための意識改革──などが柱で、児童手当の拡充や親の就労を問わず保育所を時間単位で利用できる「こども誰でも通園制度(仮称)」などが盛り込まれています。構成員からは、過去の政策の効果検証や財源確保に向けた歳出改革の徹底などを求める意見が相次ぎました。岸田首相は6月までに具体的な施策や予算、財源について「こども未来戦略方針」として取りまとめる考えを表明しました。
 
 この日の会合で、連合の芳野会長は意見書を提出するとともに、以下のとおり発言しました。
<芳野会長の発言要旨>
  • まず、子育てと仕事の両立、働き方について、育児とキャリアが両立できる社会の構築に向け、改正育児介護休業法の周知徹底、長時間労働を前提とした「男性中心型労働慣行」の是正、性別役割分担意識からの脱却、企業経営者等の意識改革を進め、誰もがワーク・ライフ・バランスを保てる職場環境の整備こそ取り組むべき。
    ライフステージを通じた子育てに係る経済的支援の強化については、児童手当など子どもに関する社会手当は子ども自身に対する給付と位置づけ、所得制限をなくし、平等に取り扱うべき。
    教育費については、教育機会の不均等が生じないよう、就学前教育から高等教育まで、すべての教育にかかる費用を無償化すべき。無償化までの間は入学金・授業料を引き下げ、給付型奨学金の対象者の拡大や貸与型奨学金をすべて無利子にするなど見直しが必要だ。
    すべての子ども・子育て世帯を対象とするサービスの拡充については、子どもや子育て世帯の置かれている状況や悩みに対応するには、支援を担う人材を十分に確保していくことが重要だ。保育所等子ども・子育て支援の現場への負担が増え、さらなる人材不足を招くことがないよう、人材の確保と定着に向けた処遇改善と職員配置基準を含む労働環境の改善が必須だ。
    ヤングケアラーやひとり親世帯など複合的な課題を抱える世帯は、早期発見と積極的なアウトリーチによる包括的かつ伴走型の支援が重要だ。そのための支援体制の強化が必要だ。
    共働き・共育ての推進については、冒頭にも述べたとおり、誰もがワーク・ライフ・バランスを保てる職場環境の整備とともに、男性育休の取得促進および時短勤務を選択した場合の給付・支援の新設や拡充を検討する場合は、給付の対象とならない者との公平性に配慮しなければならない。
    また、曖昧な雇用で働く者を含め、現行の枠組みで労働者性が認められる者には確実に雇用保険を適用すること、あわせて、社会環境の変化などを踏まえ、「労働者性」に関して見直し・拡充をはかる必要がある。
    子ども・子育てにやさしい社会づくりのための意識改革については、世代や子育てしているかを問わず、広く国民が子どもの権利を理解することが重要だ。まずは、子どもの権利条約やこども基本法について周知を徹底すべき。
    最後に、財源のあり方について資料が出されているが、子ども・子育てを社会全体で支えるために政策を迅速に実行し、その費用を賄う財源を国民が広く負担し合っていくとの考え方に立ち、税や財政の見直しなど、幅広い財源確保策を検討すべき。
 
 また、岸田首相は会議の締めくくりで、以下のとおり述べました。
  • 少子化は我が国が直面する長年の問題であり、これ以上放置することのできない待ったなしの課題だ。
    第1に児童手当の拡充をはじめとする経済的支援の強化、第2に伴走型支援の強化や保育の質の向上、こども誰でも通園制度の創設などのサービスの拡充、第3に育休制度の強化、働き方改革を中心とする共働き・共育ての推進、第4に子ども・子育てにやさしい社会づくりのための意識改革。
    これらを通じ、すべての子ども・子育て世帯を切れ目なく支援する総合的な制度体系を構築すべく、本日の議論も踏まえ、今後3年間の「こども・子育て支援加速化プラン」に掲げられた各種施策について、速やかに具体化し、財源の確保とあわせて実行に移していかなければならない。
    次回の会議では、加速化プランを支えるために必要となる安定的な財源のあり方について、集中的に議論していただきたい。
    6月の骨太の方針までに、必要な子ども・子育て政策の強化の内容、予算、財源について検討を深め、本会議において「こども未来戦略方針」を取りまとめていただきたい。