連合ニュース 2023年

 
2023年04月25日
「中小企業家同友会全国協議会と連合との意見交換会」を開催
~中同協と連合は、初の共同談話を結び、さらなる連携強化で、厳しい時代を乗り越えていくことを確認~
共同談話(連合・清水事務局長と中同協・広浜会長)
連合は、2023年4月24日、中小企業家同友会全国協議会(以下、中同協)との意見交換会を開催し、中小企業の適正取引と、原材料、労務費の価格転嫁、中小企業と地域活性化策、中小企業振興基本条例について意見交換を行いました。

 冒頭、清水事務局長は、「『中小・小規模事業者の適正取引と持続的に賃上げできる環境整備に向けた共同談話』を、両組織で4月13日に地方に展開させていただいたことにお礼を申し上げる。」と述べました。続いて、「2023春季生活闘争は、歴史的な物価高騰の中、持続的な賃上げに向けて、大きなターニングポイントになると考えている。」さらに、「中小労組の現場からは、昨年より価格転嫁は進んだものの、価格転嫁分が労務費まで十分に反映できず、交渉の最大のネックになっているとの声も多く、人材の確保・定着のためは、月例賃金にこだわり、企業の成長の原動力となる人への投資を起点とした経済の好循環をなんとしても進めていかなければならない。」また、「一方で、地域の活性化も重要な課題である。日本の雇用労働者の7割は中小企業で働き、地方経済と地域の雇用を支えている。それぞれの地域の中で直接的に「つながり」を持ちながら暮らしていくためにも、その力を存分に発揮できる環境づくりが大切であり、その基礎となる中小企業振興基本条例の制定に向けて、地方ブロック単位での学習会の開催を進めている。」と述べました。最後に、「本日を機に、中同協と連合がさらに連携を強化し、笑顔と元気のプラットフォームを通じて、中小企業の経営基盤の強化と、地域の活性化に向けて共に取り組んでいきたい。」とあいさつしました。
 
 続いて、中同協の広浜会長からは、「本日の意見交換会は9回目になるが、1回目から参加させていただいている。今回、共同談話を結ぶことができたことの意義は大きい。」と述べました。そして、「同友会の考え方は、『人を生かす経営』の理念を基本に、あくまで自助努力で頑張ろうという事を大事にしている。中小企業家としてそれぞれの社長が誇りを持って事業に携わるためにも自己研鑽を積むことと、人間尊重ということを大切にしている。」、「これは、ただ単に甘やかすことではなく、努力をしている人を尊重するという考えであり、このような経営理念を持っていることを、連合のみなさんに注目していただいた。」と述べた上で、「社員のみなさんには、ただ働くだけではなく、人の素晴らしさを発揮していただくことが重要であり、仕事に対するやりがいも感じられ、自己成長も感じてもらえる、こうした考え方を理解していただいてのスタートであった。」と述べました。また、「自力では、どう頑張っても報われない経営環境もあり、その際は労使力を合わせて環境改善をしていくことと合わせて、公正な取引が必要である。」と述べました。さらに、「我々が取り組んでいる下請法に関する要請や、中小企業振興基本条例については連合も取り組んでいる。条例では、連合の後押しをいただき、47都道府県すべてに制定された。これからもぜひ連携をお願いしたい。」と述べました。
最後に、「直近の課題では、価格転嫁がどれだけできるかと、もう一つは、人材確保には、給与を上げていかなければならないということがあり、今回はこのようなテーマが盛り込まれており、大変楽しみにしていますのでよろしくお願いします。」と述べました。

 両組織からの報告では、連合から「2023春季生活闘争回答集計結果」、「価格転嫁の円滑化」の実現に向けた要請、価格転嫁の円滑化等に関する地方連合会の取り組み、中小企業への各種支援策に関する説明会の内容を報告しました。また、「笑顔と元気のプラットフォームの取り組み」と「過半数代表の取り組み」について説明を行いました。
 中同協からは、同友会特別調査「コロナ禍における中小企業の金融に関する特別調査」の報告と、中小企業魅力発信月間の取り組み、国の政策に対する重点要望・提言について報告がありました。

 続いて、テーマにもとづき意見交換を行いました。
 1つめは、「中小企業の適正取引と、原材料、労務費の価格転嫁について」では、中同協の出席者から、中小企業の適正取引と価格転嫁の課題など、自社の現状について報告を受けました。
その中で、「以前は、材料の値上げ分のみの価格転嫁を行ったが、印刷費や労務費などを含めた価格転嫁を進めている。世間的にも価格転嫁の雰囲気が醸成され、物価上昇分の賃上げはできたが、毎年継続できるかがキーになる。」
 また、業務委託の企業では、「コロナ禍で、人の密集回避のため大きく影響を受けた。しかし、パートの時給相場が上がり、当社でも時給をアップしたが、年収130万円の壁で労働時間の抑制になり人手不足になった。」
 水質検査等を行う企業では、「検査業務に関するコストの実態が見えにくく、取引の長い会社に対し、重点的に価格転嫁をお願いしている。」
 「東京の初任給が地方より5万円ほど高く、地方の大学を出ても地元優良企業に就職する割合が低くなっている。若者が地元に就職してもらわないと地域の活性化につながらない。」など、具体的な現状報告がありました。
 
 連合からは、「賃上げの水準は30年ぶりの高水準となったが、中小も大手も対応できた企業とできなかった企業の二極化がある。今年限りの賃上げではなく、継続して賃上げできる風潮に変えていく必要がある。」また、130万円の壁については、「連合では現在検討中であり、ご報告にもあったが、130万円の壁の手前で就業調整が行われている実態がある。一つの職場で様々な雇用形態の労働者を守らなければならない難しさがある。」「賃金には、手当てなどが入って生計が成り立っている面があるため、制度そのものを抜本的に変えなければ解決しない。」「地方での新卒採用は、会社のすばらしさや社会的意義などのアピールも必要なのではないか」などの意見が出されました。
 
 二つ目のテーマ「中小企業と地域活性化策について」では、連合から中小企業振興基本条例の制定に向けた取り組みを説明し、意見交換を行いました。
 中同協からは、「地方自治体の条例の担当者が1、2年で変わり、引継ぎがされない。新しい雇用と仕事の創出の必要性を理解していただくのは難しい」、「幅広い業界からの支援を集約できる力が必要になる」などの意見が出されました。
 連合からは、「条例制定に向けて、産官学金は入っていても、なかなか労働団体が入っていけない。中同協の皆様からも、労働組合が入れるような後押しをお願いしたい。」「条例制定のモデルケースを交えて、アイデアを出していく必要がある。」などの意見が出されました。
 
 まとめとして、中同協の中山幹事長は、「現在、賃金の格差が開いている。コロナのしわ寄せが弱者に偏っている。このような状況の中で、中小企業団体と労働者団体が共通する課題について、どのように取り組んでいくのかという意見交換を行うことの意義は大きい。そして、共同談話を結んだことは歴史に残ることである。厳しい時代ではあるが、共同でできることは一緒に取り組みたい。今後とも有意義な意見交換を行っていきたい。」と述べました。
 
 山根木副事務局長は、「日ごろから、労使見解にもとづいた理念をもたれていることに敬意を表する。中山幹事長から、歴史に残ることといわれたが、今回、事前に共同談話を結ぶことができたことは大変意義深い。本日、中小企業振興基本条例の意見交換もさせていただいた。今後、職場と地域の問題についても深堀りしていきたい。中小企業で働くこと、地域で人が働き、暮らすことについて本気で取り組み、地域を元気にしていきたい。」と締めくくりました。
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