連合ニュース 2023年

 
2023年02月09日
日商と連合との懇談会を開催
~持続的賃上げ、価格転嫁、地域活性化について意見交換~
懇談会全景
 連合は2月8日、日商との懇談会を都内で開催し、「持続的賃上げ、価格転嫁、最低賃金、地域活性化」をテーマに意見交換を行いました。
 
 冒頭、小林日商会頭、芳野連合会長の順にあいさつしました。
 小林会頭は、「物価の高騰が、人々の暮らしと企業の経営に大きな影響を与えている。厳しい状況であるが、これを一つの好機に20年続いてきた物価も賃金も上がらないデフレの状況を変えていかなければならない。中小企業の賃上げは非常に重要であり、多くの企業で賃上げに取り組んでほしいと考えている。」と中小企業の賃上げの重要性を述べました。
 また、「日商としてもデジタル活用など生産性向上の支援に取り組んでいるが、時間がかかる。何より取引価格の適正化であり、政府の強力な後押しもいただき、『パートナーシップ構築宣言』の取り組みを進めている。今後は実効性を高め、しっかりと実際の価格転嫁につなげる段階に入っていかなければならない。中小企業を含む賃上げの促進に向けて、労働組合の立場からも取引価格の適正化に声を上げ、経営側に働きかけていただきたい。『賃上げ』に大きな注目と期待が集まる中、日商と連合が懇談の機会を持つことは大変意義が大きく、楽しみにしている。ぜひ中身の濃い意見交換にしたい。」と述べました。
 
 芳野会長は、「今年の春闘は、例年にも増して注目度が高くなっており、大きなターニングポイントになる。そのためには700万人の連合組合員のみならず、組合のない職場で働く仲間全体への波及が大事であり、その取り組みとして、先月から6台のラッピングカーが全国を駆け巡っている。
 日本全体の賃金を動かしていくには、雇用労働者の7割を占める中小企業で十分な賃上げができるがどうかである。人手不足も大きな課題であり、人材の確保・定着をするためには、月例賃金にこだわる必要がある。しかし価格転嫁が進まないことが最大のネックとなっている。また、2023春季生活闘争方針のなかで、サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配や賃金水準闘争を強化するための取り組みの柱の一つが、働き方も含めた『取引の適正化』の実現であり、労働組合の立場からも、パートナーシップ構築宣言の拡大と実効性の向上や、適正な価格転嫁の必要性を各企業に働きかけていきたい。」
 最後に、「中小企業は地方に点在しており、地方経済と地域の雇用を支えている。中小企業の経営基盤を強化し、地域の活性化につなげて行くためにも、価格転嫁の実現に向けた連携、強化が重要である。本日はそれぞれの立場の違いはあるが、様々な課題に対する共通認識のもと、議論を深めていきたい。」と述べました。

 その後の意見交換では、日商側から「中小企業の現状」「賃上げと価格転嫁」「最低賃金」などの現状や課題について提起がありました。
 続いて、連合側から2023春季生活闘争のポイントの説明と、地域活性化に関する取り組みを説明しました。
 
小林会頭からは、
〇大手サプライチェーンの傘下企業と、消費者に直結するBtoCの企業は、交渉相手が居らず価格転嫁が難しくなる。会社は株主のものだが、利益追求だけではなく、経営者の責務として、経済価値、社会価値、環境価値の三つを追求することが必要だと考えている。経営者の社会的責任として、中小でも賃上げができるところからお願いしていきたい。
 
〇従業員100人以下の中小・零細企業では、組合の組織率も低く、経営者と従業員数名のような企業も多い。雇用者の7割が中小企業で働いている。やはり、中小企業の賃上げが生活に直結していくのではないか。
 
〇取引の適正化や賃上げ、人材など、情報交換ができ、連合とはベクトルがあっている。時期にとらわれず、今後も意見交換を行いたい。
 
石田専務からは、
〇連合の「笑顔と元気のプラットフォーム」の取り組みはありがたい。埼玉県の「価格転嫁の円滑化に関する協定」の例のように、各地の会議所への呼びかけや、経産省にも連携を呼びかけるなど、是非お互い連携していただければと考えている。
 
芳野会長からは、
〇春季生活闘争に取り組むにあたり、価格転嫁について、中小労組ではなかなか進んでいないという現状がある。企業の調達部門の担当者がどのようなやり方をしているのか掘り下げ、把握していく必要がある。成果・能力主義を導入している企業が増えているため、コストダウンをすることが大事だと考える労働者が多くいる。そこにメスを入れていく必要がある。
 
〇消費者の立場で言えば、安いもの買いたい意識があるが、商品の価値を認識し、適正な価格で購入するということで経済を回していく必要性を言っていかなければ、現状打破は難しいと考えている。
 
〇中小企業庁から聞くと、取引を行う際に価格転嫁しようとしてもデータに基づいた交渉ができず、契約が口約束になるケースもある。人手不足でデータがとりにくいという実態や、書面の取引に手間がかけられないということなので、行政がサポートや指導するなど、知恵を出していく必要がある。
 
 連合と日商は、中小企業の持続的な賃上げに向けて、取引価格の適正化などを後押ししていく考えで一致し、今後も時期にとらわれず、必要に応じ意見交換を行うことを確認し、懇談会を閉会しました。
 
 
                                             以 上

 
  • 芳野会長挨拶
  • 小林会頭挨拶