連合ニュース 2023年

 
2023年01月23日
経団連と連合との懇談会を開催
-デフレマインドの払拭、未来を見据えた賃金引き上げなどに向けて議論-
懇談会全景
連合は1月23日、経団連との懇談会を都内で開催し、「春季労使交渉をめぐる諸問題について」をテーマに意見交換を行いました。
 
冒頭、十倉経団連会長、芳野連合会長の順にあいさつしました。
十倉会長は、「わが国経済は持ち直し基調にあるものの、特に、エネルギー・原材料や食料等の価格高騰は、国民生活と企業活動に大きな影響を及ぼしている。経済が持続的に成長していくためには、賃金と物価の好循環を実現する必要がある。
経団連は、今年の春季労使交渉を、デフレからの脱却と人への投資の促進による構造的な賃金引き上げをめざした企業行動への転換を実現する正念場かつ絶好の機会と位置付けている。物価動向を特に重視しながら、企業の社会的な責務として、賃金引き上げのモメンタムの維持・強化に向けた積極的な対応を、できるだけ多くの機会をとらえて呼びかけている。さらに、日本全体の賃金引き上げの気運醸成に向けて重要な中小企業の賃金引き上げとその環境整備のため、『パートナーシップ構築宣言』に参画する企業の拡大と実効性の確保に一段とギアを上げて取り組んでいる。
問題認識について連合とはほとんど一致していると思う。経団連と連合とは闘争関係ではなく、日本が抱える社会的な課題解決に向けて、協力して未来を創造する『未来協創』の労使関係であることを確認し合い、発信していきたい」と述べました。
 
芳野会長は、「昨年来、コロナ禍と物価高に多くの国民が苦しい思いをしている。ようやくコロナをうまく制御しながら社会・経済活動が本格化してきただけに、時計の針を戻すことなく、人命を守る感染対策と、社会・経済活動を守る取り組みとの両立が重要な局面であり、労使間でも改めてその重要性を再確認し、個々の行動に結び付けていきたい。
物価高については、ウクライナ侵攻をはじめとする海外の様々な情勢の影響によるエネルギーや資源の高騰、為替変動による影響も相まって、物価の上昇が続いている。加えて、長らく続いているデフレマインドが、心理的にも物価高の影響をより一層増幅させる一因にもなっているが、困難な状況だと悲嘆にくれるのではなく、日本が長い暗闇の中から脱する契機と捉えている。
今春の取り組みをこれまでの延長線上での議論にとどめるのではなく、労使が力を合わせて日本の未来を作り変えるターニングポイントとすべきである。その手段は、賃上げを基本とした経済の好循環の再構築にほかならず、経済界も同様の認識を示していただいていると理解している。これから、労使が真摯に交渉し、その結果をそれぞれの責任において社会にしっかりと波及させることによって、大企業だけでなく、中小企業やパート・契約社員なども含めて、日本全体で継続した賃上げを実現していきたい」と述べました。
 
その後の意見交換において、連合側は「価格転嫁を強化する必要性」「産業・働き方の変化に対応した社会保障・教育・税制の改革」「コロナ禍の克服における人への投資の重要性」「男女間格差の是正、子育てと仕事の両立」「パート・有期契約労働者の賃上げ」「就労意欲を阻害しない社会保障制度づくり」「人への投資と競争力強化の好循環」「若年世代のキャリア形成」「地域経済の活性化」などについて提起しました。
経団連側からは「生産性向上を通じた持続的な賃金引き上げ」「学びと仕事の好循環の実現」「働き手の健康に配慮したソーシャルベーシックサービスの拡充」「労使双方の努力による価値創造力の向上」「分厚い中間層の形成による成長の土台づくり」「リスキング・学び直しの促進と労働移動の円滑化」「地方の中小企業における慢性的な人材不足への対応」などについて意見が示されました。
 
 まとめのあいさつで芳野会長は、「今年はまさにターニングポイントの年。労使が力を合わせて人への投資を継続させ、経済社会を転換するスタートである。労使で思いはほぼ一致しており、双方の信頼のもとで日本全体の賃金の底上げをはかっていきたい。子どもたちの中には生活が苦しく、冬休みで給食が食べられず新学期に体重が落ちて登校する子どもがいる。そのような子どもたちの未来を見据えると、安定した雇用・安心した生活ができる環境づくり、企業の中で意思決定の場への女性の参画も重要である。働く者の生産性向上、モチベーション向上には、魅力のある職場環境が欠かせない。企業の発展、魅力ある職場づくりには建設的な労使関係が重要であり、この難局を乗り越えていくためにも、労使の真摯な協議を求めていきたい。今年の交渉に期待する」と述べました。
 
十倉会長は、「持続的な賃金引き上げをめざすうえで、生産性向上とデフレマインドの払拭が不可欠であり、その好機が到来している。賃金引き上げとともに、全世代型社会保障の整備や働き方改革の推進、女性の就労などを進めて、社会・労働のダイナミズムを取り戻す必要がある。円滑な労働移動の促進も大事であり、エンプロイアビリティとエンゲージメントの「2つのE」が前提となる。働き手が自らの意思でスキルを磨き、社内外を問わず適切に評価されるようにすることが重要である。また、『春闘』の『闘う』という言葉については、連合と経団連が社会の壁に向かって『共闘』するという意味ならば歓迎する。それをわれわれの言葉で表せば未来社会の『協創』となる。ぜひそういう精神でやっていきたい」と述べ、懇談会は閉会しました。
 
以 上
  • 芳野会長挨拶
  • 十倉会長挨拶