連合ニュース 2022年

 
2022年12月21日
職場におけるあらゆるハラスメントをなくそう!
~ILO第190号条約批准に向け、法を上回る取り組みを~
主催者挨拶(則松副事務局長)
カスタマー・ハラスメント対策シンポジウムを開催
 連合は、2022年12月19日(金)にカスタマー・ハラスメント対策シンポジウムを開催しました。シンポジウムは会場に参加者が集う形式とWeb形式を併用して行い、構成組織・地方連合会・マスコミ・一般から合計120名以上(対面参加36名、Web参加87アカウント)が参加しました。
 
 冒頭、主催者を代表し則松佳子副事務局長が「連合に寄せられるハラスメントに関する労働相談はここ数年で上位を占めており、顧客・取引先などからのカスタマー・ハラスメントなど第三者によるハラスメントも深刻化している。ILO第190号条約は、誰もがハラスメントを受けない基本的な権利を保障し、すべての労働者をそれらから守るべく、禁止規定を法で定めるように求めている。法を上回る労働協約を結べるのは労働組合だけであり、本日のシンポジウムが、皆さんの職場で、法令に沿った規定にとどめることなく、禁止規定が含まれる内容とするために、労使が話し合いを行うためのヒントとして持ち帰り、実践につなげていただきたい」と挨拶しました。

 次に、新村響子弁護士より、「ILO第190号条約とカスタマー・ハラスメント対策~労働組合が取り組むべきハラスメント対策~」と題して、(1)カスタマー・ハラスメントの概要、(2)日本のハラスメント対策法制の現状と課題、(3)労働組合が取り組むべきハラスメント対策、について講演を受けました。
  • <講演のポイント>
    ・顧客・取引先などからのカスタマー・ハラスメントは、近年増加傾向にある。厚生労働省の調査結果によると、被害を受けた人は、不安などの気持ち、意欲減退だけでなく、健康にも深刻な影響が出ている。
    ・パワー・ハラスメントなどについては、労働施策総合推進法により、事業主に相談窓口の設置など雇用環境の整備が義務化(2022年4月からは中小企業にも完全義務化)されている。
    ・ハラスメントについて実効性のある取り組みをみると、厚生労働省の企業調査では約8割の企業が対策を講じていると回答しているが、連合の労働者調査では「特になし41.4%」「わからない31.5%」と回答しており、労働者の約7割が企業の取り組みを認識していない結果となっている。
    ・カスタマー・ハラスメントなど第三者によるハラスメントについては、ハラスメント対策関連法では「事業主が行うことが望ましい取組」とされ、努力義務にとどまっている。
    ・裁判例では、カスタマー・ハラスメントの行為者側の不法行為が認められたり、被害者の上司に安全配慮義務違反が認められた事例などもあり、カスタマー・ハラスメントの対応を誤ると、どちらにも民事上の責任が生じる可能性がある。
    ・現状を見ると、ハラスメントが増加している中、企業の取り組みは浸透しておらず、労働組合が積極的にこの問題に取り組み、リードしていくことが求められる。
    ・現在の日本の法律による防止対策では不十分であるため、ILO条約の考え方に沿って、あらゆるハラスメントを明確に禁止し、被害者・加害者の範囲も広く(他社の社員、顧客、求職者などを含む)捉える必要がある。
    ・ハラスメントのない職場づくりのためには、労使の共通課題との認識のもと、労働組合が主導的役割を果たしつつ、労働協約の締結やガイドラインの制定で、具体的な取り組みを労使で行っていくことが重要だ。
  
 続いて、連合本部が、直近3年間で自身もしくは同じ職場の人がカスタマー・ハラスメントを受けたことがある人1,000名を対象に、2022年11月に実施したインターネット調査「カスタマー・ハラスメントに関する調査2022」の結果概要を報告しました。

 構成組織の取り組み報告では、(1)UAゼンセン(2)自治労から、それぞれ報告を受けました。
(1)UAゼンセンの取り組みでは、佐藤宏太流通部門執行委員から、2018年に実施した悪質クレームの抑止・撲滅に向けた署名活動、他産別組合とのカスハラ対策連携の強化、悪質クレーム対策啓発動画の制作、春の統一労働条件交渉での対策協議、各種実態調査や事例紹介、地域における条例制定など、悪質クレーム対策の啓発活動をきっかけにした様々な取り組みについて報告を受けました。
(2)自治労の取り組みでは、森本正宏総合労働局長から、労働法や安全衛生、自治体行政の専門家、弁護士、組合役員による研究会で現在作成中のカスタマー・ハラスメント予防・対応マニュアル「カスタマーハラスメントのない良好な職場をめざして(未定稿版)」をもとに、自治労のカスタマー・ハラスメント対策への取り組みを含む報告を受けました。

 シンポジウムまとめでは、井上久美枝総合政策推進局長が、「シンポジウムは厚生労働省『職場のハラスメント撲滅月間(12月)』にあわせて近年増加しているカスタマー・ハラスメントをはじめハラスメント対策に関する課題認識を深めるために開催した。連合は2023春季生活闘争において、カスタマー・ハラスメントや就活生などに対するハラスメントを含むあらゆるハラスメント対策や差別禁止の取り組みを進めている。ILO第190号条約は、仕事の世界におけるあらゆる人や場面を保護の対象としている。皆さんの職場の就業規則や懲戒規定、労働協約が定めているハラスメントの項目と照らし合わせて、労働協約や就業規則が定めるハラスメントや差別に関する規定やガイドラインを確認し、その内容が法令を上回る禁止規定となるよう、さらなる取り組みを進めてほしい」と呼びかけました。

 集会の内容は、連合のYouTubeチャンネル「RENGO-TV」でも公開いたします。
  • 講演(新村響子弁護士)
  • UAゼンセン取り組み報告(佐藤流通部門執行委員)
  • 自治労取り組み報告(森本総合労働局長)
  • まとめ、閉会挨拶(井上総合政策推進局長)