連合ニュース 2022年

 
2022年10月04日
芳野会長が「第10回新しい資本主義実現会議」で意見表明
 10月4日夕刻、首相官邸で「第10回新しい資本主義実現会議」が開催されました。本年6月に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」で掲げられた施策に加え、人への投資と分配として、労働移動の円滑化・リスキリング・構造的な賃金引上げが重点事項として提起されました。
 連合からは芳野会長が出席し、人への投資と分配の重要性を踏まえ、意見書を提出した上で、より質の高い雇用や処遇の実現、格差是正の観点から、以下の内容を発言しました。

<会長の発言要旨>
■現下の物価上昇をカバーする賃金引上げについて

 持続的な成長と分配の好循環のためには、短期・中長期にわたる賃上げが不可欠との認識が重要であり、国際的に見劣りのする「人への投資」をより一層重視するとともに、実質賃金の視点を明確にし、持続的な改善をはかっていくための環境整備が必要である。そのためには、政府が、デフレマインドを払しょくし、物価上昇を超える賃上げを実現しやすい環境整備と賃上げ気運の社会的醸成に取り組んでいただきたい。特に中小企業の賃上げには適正な価格転嫁と公正取引が重要である。

■労働移動の円滑化について
 成長分野への労働移動そのものを否定するものではないが、まずは、これまで以上に重層的な雇用対策や社会的なセーフティネットの整備が必要となる。
 労働者自らが「移動」を望むような処遇や安定した雇用環境を整備することが重要である。そして同時に、その成長産業を「労働者にとって魅力的な産業」へと発展させることが必要である。
 また、日本の労働市場の課題として、企業横断的な職業能力評価基準がほとんど整備されておらず、職種と熟練度に応じた賃金水準の社会的相場感がないことがあげられる。政府が力を入れるべきことは、こうした指標の整備であり、個別企業の賃金制度は職場の実態を踏まえて労使が決めるべきである。

■「人への投資」について
 人口減少下において、DX等の社会変化に対応するためには、年齢・性別、雇用形態などにかかわりなく、働く者すべてが個々の能力を最大限に発揮できる環境整備が不可欠である。人への投資を更に拡充し、企業の能力開発を強化するとともに、公的訓練機関や教育機関との連携強化を進めながら、能力・スキルを向上させる仕組みや支援策を充実させるべきである。
 また、コロナ禍は予想以上に長期化し、いまだ収束が見えず、その影響を大きく受けているのは、非正規雇用で働く人たちであり多くが女性である。非正規雇用で働く者やフリーランスなど、現行の能力開発システムを活用しにくい者やその埒外に置かれる者への対応は喫緊の課題といえ、企業への取り組みを促すことはもとより、スキルの差による格差や分断を生まないよう、国として能力開発全体を底上げすべきである。
以 上