連合ニュース 2022年

 
2022年10月04日
連合 中小企業振興基本条例制定に向けたシンポジウムを開催
~連合東京、連合長野、中同協から事例報告~
連合・芳野会長挨拶
 連合は、10月3日「中小企業振興基本条例制定に向けたシンポジウム」を、会場・オンライン参加の併用で開催し、構成組織・地方連合会等から、約100名の参加がありました。
 
 冒頭、芳野会長は、連合は「中小企業振興基本条例の取り組みは、2019年要求と提言に、地域における労働団体の役割・責任を明確にすること」を明記しましたが、「全国の条例制定の状況は、2022年6月現在、いまだ全国の67%の地方自治体が未制定となっている」現状を話された一方で、「条例制定によって、地元の中小企業振興策の具体的な施策が実施され、中小企業が活性化し、豊かなまちづくりにつなげることを実践している自治体もあるなど、一定の成果も期待できることから、条例制定の取り組みを前に進めて行きましょう。」と挨拶しました。
 
 このあと、奥山中小・地域支援局長から、条例制定に関する取り組みとして、今後の方針策定のために、東京近郊の自治体へヒアリングを実施して分かったことや、何のために条例が必要か、などについて報告を行いました。また、2023年度活動計画の中では、条例制定に向けた学習会をブロック単位で開催することについて説明を行いました。
 
 次に、基調講演では、東洋大学経営学部の山本教授から、「中小企業振興基本条例制定に向けて労働団体が取り組む意義」について話をいただきました。中小企業は地域経済社会の発展と、魅力ある就業機会創出の担い手であり、地方になればなるほど中小企業の割合が大きくなっており、雇用機会が増え、地域の生活やコミュニティを下支えしている。中手企業で働く被雇用者として、自律性と誇りを持つためにも、ボトムアップの経営が求められると語った。最後に、条例づくりには、情報共有と情熱をもって取り組むことが大事と話をされました。
 
 続いて、パネルディスカッションでは、河野総合組織局長が進行役を務め、冒頭、パネリストから自己紹介を含め、取り組み経過の報告をいただきました。
 連合長野の根橋会長からは、条例制定にあたり連合長野としての関与とこだわったこととして、一つ目は、企業の活性化・発展に向けて、そこに働く者が、やりがいをもっていきいきと働くこと、二つ目は、「教育」の必要性として、企業内・地域など、社会に出た後の教育も含め、発言を繰り返してきたことについて報告されました。
 連合東京の白川顧問は、なぜ労働団体が条例制定に取り組むのかという課題提起として、ナショナルセンターの役割は、すべての働く人のための取り組みであり、連合の社会的責任である。連合として、地域での活動が重要であり、地域の経済と雇用、住民生活の安定に向けて、条例制定が必要不可欠であるとの考えを述べました。
 中同協の中山幹事長は、田川市産業振興会議において、中小企業が元気に活躍する田川をめざして、中小企業基本条例に基づくビジョンの実現のため、田川市中小企業基本調査を行ない、調査結果から課題を洗い出し、中小企業経営者が経営の基本を学ぶ場の開設や、生活者と事業者をつなぐ地域プラットフォームの構築、地域で若者を育て地域に若者を残す活動など、具体的な方針策定を行ったことについて述べました。
 
 次に、具体的なテーマとして、「条例を策定する経過で一番苦労したこと」や、「条例制定後の効果や課題」について意見交換を行いました。
 連合長野の根橋会長は、苦労した点について、覚悟があっても共感が得られなければ進まない。行政や経営者団体との信頼関係が必要と語った。また、制定後の効果の面では、地域の社会対話の時間が増え、中小企業で働くみなさんに光があたった。県の組織再編もあり、対話の場を作っていった。しかし、地域ごとの課題、産業ごとの課題がなかなか見えてこないため、2018年に、6つの産業別、地域別の会議を設置した。条例に関わったことで審議会委員の数も相当増え、労働団体の重要性が広がったと述べました。

 連合東京の白川顧問は、ビジョンを策定するためにも条例制定は必要不可欠。期待する効果について考えて行くことが重要と語り、条例制定が中小企業振興のスタートラインであり、条例と実態調査、産業振興会議がセットになってはじめて条例の効果を総合的に高めることに繋がる。条例の理念に基づき、行政が中小企業の生の声を聞き取る仕組みを大切にし、産業特性に応じた検証を行うものさしを持ち、PDCAをしっかり回すことが重要である。条例制定後に期待できる効果として、公契約条例との結合が大きな効果になっていくと予想される。今こそ、産官学勤労言のすべての存在が一体となって、地域経済、地域社会、地域文化を再生し、日本のすべての地域から持続可能な社会と幸せをつくる必要があると述べました。
 
 中同協の中山幹事長からは、苦労した点として、中小企業の役割への理解と共感が重要で、中小企業経営者の努力が必要であると述べました。条例制定後の効果については、福岡県田川市の若者のほとんどが地域外で就職している現状を鑑み、地域の未来を考え、地域で若者を育てるための、若者への教育活動の取り組みについて語りました。地域の高校に声をかけて実現したこととして、地元の高校生を集め、「会社を作るとしたら、どういう会社を作りたいか」という課題に対し、ある高校では、足元の自然エネルギーを活用し、小さな電力会社をたくさん作って、そこから得た利益で地域に子供食堂を作り、子供たちを笑顔にしたいという発表で、高校生の言葉を聞き、地域の未来は明るいと思ったという内容について述べました。
 
 最後に、山根木副事務局長から、本日のシンポジウムがまさに条例制定に向けたスタートである一方で、条例制定後の効果なども考えていく必要がある。中小企業憲章では、中小企業は経済を牽引する社会の主役であるというが、現状は、後継者がいないとか、賃金もなかなか上がらないという状況にある。だからこそ、労働者のまとまりとしてのボトムアップが必要であり、労働組合が集団的労使関係の担い手である。地方連合会が、条例制定の取り組みとともに、労使関係を両輪でまわすことが大切だと感じている。以降、この運動を、1歩でも2歩でも進めて行きたい。地域の発展が労働者の幸せに繋がるようにすることが大事であると述べ、シンポジウムのまとめとしました。
  • 東洋大学・経営学部 山本 聡教授 講演
  • パネルディスカッション風景
  • 会場風景
  • WEB参加