5月20日夕、「第7回新しい資本主義実現会議」が首相官邸で開催され、「人への投資(賃金、人材育成、兼業・副業、男女間格差等)」および「取引適正化、競争当局の唱導機能」について意見や提言が行われました。
連合からは芳野会長が出席し、「人への投資」の重要性の観点から以下の通り発言をしました。
<会長の発言要旨>
■人材育成と兼業・副業について
労働者がわが国の経済・社会環境の変化に対応していくには、安定的に就労し続けられるためのスキル・知識を習得することが重要であり、雇用形態に関わらず、すべての労働者の能力開発の強化が求められる。DX人材の育成は企業で求められる人材像やスキルが異なるため、ニーズを適切に踏まえた専門ブログラムの開発や中小企業等への支援策が必要である。求職者に対しては、希望に沿った安定的な就職に向けた、職業訓練と就労支援を一体的に強化することが必要である。
「円滑な労働移動のために兼業・副業を推進すべきではないか」とあるが、今後の成長分野を支援し、賃金・労働条件が魅力ある企業を増やすことこそ重要である。
兼業・副業については、個別労使の判断にゆだねるべきと考えるが、複数の業務を行うことでこれまで以上に長時間労働になる可能性もあることから、労働者の健康面を勘案し、慎重に検討すべきである。
■賃上げしやすい環境整備と男女間格差の是正などについて
わが国経済は、国際情勢や急激な物価高による悪影響が懸念されており、経済社会の持続性・安定性を高めるためにも、その活力の原動力となる「人への投資」が不可欠である。特に不安を抱えながらも真面目に働いている人に目を向け、来年以降も物価上昇を上回る実質賃金の維持・向上と企業規模間、雇用形態間、男女間の賃金格差是正にむけ、適切な経済財政運営と賃上げしやすい環境整備に努めていただきたい。
企業規模間格差の是正には、取引の適正化が不可欠で、取引実態において実効性が担保されることが重要である。労務費の価格転嫁を含む取引適正化には大企業が率先して取り組むことが必要であり、実際の取引に携わる者の声を聞く機会を設けながら、大企業と中小企業が共存共栄できる環境を整えていただきたい。
男女間の賃金差異解消に向けては、情報開示はもちろんのこと、女性活躍推進法を活用し、男女別の賃金実態把握と要因分析を行い、格差是正に向けた取り組みを進めることが重要である。
「多様な正社員制度」については、制度の導入のみをもって賃金差異解消につながるものではないことや、雇用管理区分の多様化には課題もあることから、個別労使の判断にゆだねるべきと考える。
■最低賃金について
現在の地域別最低賃金の水準はセーフティネットとして不十分であると言わざるを得ない。地域別最低賃金は、生存権を確保した上で労働の対価としてふさわしいナショナルミニマム水準とすべきである。最低賃金の引上げに向けた着実な歩を進めるべく、中央最低賃金審議会において労使が議論を尽くした上で合意形成をはかるべきと考える。
以 上