開催告知ポスター(A4版)
ハラスメント対策関連法は2020年6月に施行された後、2022年4月1日にはパワー・ハラスメント防止の措置義務が全企業に義務化され、ハラスメントのない職場の実現には労働組合の役割も極めて重要となっています。
連合では、4月20日(水)に日本労働弁護団と共催による「労働組合のための職場のハラスメント対応シンポジウム」を開催しました。シンポジウムはYouTubeライブ配信にて行われ、連合からは井上久美枝総合政策推進局長がコメンテーターとして参加し、開催中は最大で168の視聴数となりました。シンポジウムの様子は日本労働弁護団のYouTubeチャンネルにて視聴が可能です。
【労働組合のための職場のハラスメント対応シンポジウム】
https://www.youtube.com/watch?v=Vp06nJjxXY0
日本労働弁護団常任幹事の新村響子弁護士の司会により開会され、冒頭に『世界標準のハラスメント対策ガイドブック』の活用法について、ガイドブックの企画・執筆にご協力頂いた日本労働弁護団木下徹郎事務局長が説明しました。
-ポイント-
・ガイドブックはILO「仕事の世界における暴力とハラスメントの根絶に関する第190号条約」の条文だけではなく、「具体策のチェックリスト」を盛り込み国内法令に基づく職場での取り組みについて解説している。職場の制度が実効的なハラスメント対策となるよう意識してほしい。
・ハラスメント規定を、法令を上回る禁止規定として労使で制定しビジネスと人権について意識していることをアピールすれば、企業価値を高めることにつながる。労使による禁止規定の制定と実効的な運用を意識しなければならない。
・DVは被害者の稼働能力に大きな影響を及ぼす。ニュージーランドではDVを理由とする有給休暇の取得が認められており、意識して対応することが必要。
・ハラスメントにより引き起こされるストレスやメンタルヘルス対応は、職場の衛生委員会が活用できる。
・懲戒規定を適正に運用し、会社の業務体制を整備することが再発防止の観点からも重要。パンフレットの禁止規定例を参考に、会社側とも共有してほしい。
続いて、全労金、自治労、情報労連KDDI労働組合の順で、3組織が取り組みの事例報告を行いました。
-全労金(原田鉄也書記次長)-
・職場で発生したハラスメント事案の報告を受け、職場の課題を共有し組織風土や課題について協議、2019年7月全労金定期大会で「あらゆるハラスメントの根絶に向けた特別決議」を確認し、ガイドライン策定作業に入った。2020年6月ハラスメント対策関連法施行後もハラスメント事案が後を絶たず、組織全体の認識を揃えてより強い規定とメッセージが必要だとの認識に至った。
・2021年3月に全労金と労金協会で作成した「労金業態におけるあらゆるハラスメント禁止ガイドライン」では、ILO第190号条約第1条(定義)、第2条・第3条(範囲)が定めている規定を極力反映し、人権問題として容認できない問題であると明文化している。
・ハラスメントの相談者は相当な勇気が必要であり、労働組合役員が適切に対応できるような体制も必要。ガイドラインの制定はスタートラインであり、労使でハラスメントを根絶することをめざしている。
【労働金庫業態におけるあらゆるハラスメント禁止ガイドラインの策定】
https://all.rokin.or.jp/about/soshikihudo.html#cnt04
-自治労(総合労働局永田一郎主幹)-
・2020年10月から12月にかけて16県本部の職場や病院・公共交通・社会保険事務所に計19,000枚のアンケート用紙を配布し75%回収した。結果を見ると、悪質なクレーム等の対応は公共交通では4割、児童相談所や保健所では3割増えた。
・公務サービスへの過剰なサービスの要求などのクレームは、特定の住民から繰り返し受ける場合が多い。トラブルは複数名で対応することが基本だが、公共交通や福祉関係は1人勤務の職場もあり課題である。
・パワハラ指針や人事院規則には業務の範囲を超える要求への対応が規定されており、総務省が各自治体に対して雇用管理上講ずべき措置について通知を行っている。これらを活用し対応するように申し入れを行っている。また、労働安全衛生上のリスクアセスメントを活用することが重要である。
-情報労連(KDDI労働組合長谷川強副中央執行委員長)-
・就業規則ではハラスメント行為を従来から禁止している。2020春季生活闘争において労働協約化の要求を行い、6月に「ハラスメント禁止に関する労働協約」を締結した。就業規則により定めていた対象の範囲を、社員・派遣社員・委託先から、他社社員・顧客・求職者・退職者・一般も含めて拡大した。全事業所、出張、研修、懇親会、イベント、電話などあらゆる場を対象としている。
・店頭での他社スタッフや顧客とのトラブルや、コールセンターへの理不尽な要求、出向先でのハラスメント被害の疑義があり、就業規則でカバーしていなかった範囲を労働協約で取り込めるようになった。
シンポジウムのまとめとしてコメンテーターの井上久美枝連合総合政策推進局長は「ハラスメント対策は労働組合だけでなく、全体で取り組まなければならない。すべての労働者が安心して働けるよう取り組みをさらに進めたい」、シンポジウムを後援したILOの田中竜介駐日事務所プログラムオフィサーは「労働者の人権保護、ハラスメントの撲滅は、労使が一致できる課題。各職場で協約の締結を進めてほしい」とそれぞれコメントしました。
閉会にあたり日本労働弁護団幹事長の水野英樹弁護士は、「ハラスメントの相談は後を絶たない。職場の取り組みを具体的に提案しているのが連合発行のガイドブックである。あらゆるハラスメントを根絶する決意のもと、法令を上回る労働協約の締結をめざし、労働組合が相談に応じる取り組みが重要である。職場での地道な活動が進むことを願う。」と挨拶し、シンポジウムを終了しました。
「労働組合のための職場のハラスメント対応シンポジウム」
■資料(日本労働弁護団ウェブサイト)
https://roudou-bengodan.org/topics/10973/
■YouTubeチャンネル(日本労働弁護団)
https://www.youtube.com/watch?v=Vp06nJjxXY0
■日本労働組合総連合会ウェブサイト「職場におけるあらゆるハラスメントをなくそう」
https://www.jtuc-rengo.or.jp/activity/gender/harassment/index.html
■世界標準のハラスメント対策ガイドブック(2021.9発行)
https://www.jtuc-rengo.or.jp/activity/gender/data/harassment/guidebook202109.pdf?2149