連合ニュース 2022年

 
2022年04月12日
連合 子ども・子育てサロン~『子どもを育てやすい国』日本へどう変える?~を実施
トークセッションに参加した3人
 連合は、広く子育て世帯の声を聴き、有識者などとともに考える「連合子ども・子育てサロン」の取り組みをスタートしました。第1回は、子育て世帯や子育て経験のある方へのアンケートと、アンケートで集まった声をもとに、子育ての楽しさや大変さ、子育て支援のあり方などについてNPO法人子育てひろば全国連絡協議会理事長の奥山千鶴子さん、千葉商科大学准教授であり働き方評論家の常見陽平さんとトークセッションを実施しました。
連合子ども・子育てサロンページ
 
 アンケートは、実施期間2022年1月7日~2月6日で合計2,173件の回答が集まりました。

 子育てしていてほっこりしたことでは、子どもの笑顔や寝顔、成長した姿など子どもに関する回答が圧倒的に多い結果となりました。続いて地域やコミュニティに関する項目で、近所の方からの声がけや公共交通機関などでの気遣いが複数ありました。一方、つめたいなと感じたことでは、「地域や職場が子育てに対して理解がない」「保育園に入れない」「男性トイレにおむつ交換台がない」など子育てしにくい生活環境を訴える意見が見受けられました。
 子育てについて「こんなものが欲しい!」という設問では、自動寝かしつけ機など、子育ての負担を軽減するものが最も多く、次に教育費や医療費など子育てにかかる費用を軽減できる制度を求める声が多くありました。
 最後に、「日本で子育てすること」について思うことなんでも!という設問に対しては、女性の負担やジェンダーバイアスについて、「育児・家事・仕事の両立まで求められて大変」「女性が育児をするのが当たり前と見ていて苦しい」という女性からの声や「仕事で育児が難しい」「男性向けの子育て番組があれば」といった男性からの声もありました。
 また、つめたいと感じたという回答にも複数の意見が寄せられた「職場の環境整備や育児への理解についてはまだまだ」「もっと地域に協力を求めたいが現実は子どもや子育て世帯に厳しい」という声や「不審者に思われるのでは?と子どもに関わることをためらう」など、防犯上の問題から声がけを躊躇するという声もありました。男性の育児や家事に対する意識を『手伝う』から『分担する』のが当たり前としていくべきとの意見や、育児は親の責任であるとする考えがある一方、社会全体で支えるべきとする考え方など幅広い意見が寄せられました。

 本アンケート結果の「中間報告」(2月1日までに寄せられた回答1,692件を集計したもの)を用いて行ったトークセッションでは、奥山さんから「子育て中の方の気持ちを考えると科学的根拠に基づいた子どもの特徴や傾向を明らかにしてエビデンスを出してほしい。赤ちゃんのことを保護者が科学的に理解できる情報提供が育児に役立つのではないか。」「子どもが安全に遊べる場所は、自治体によって差があり、特に小学校低学年に不足している。」との指摘をいただきました。子育てに対する意見に対しては「男性の育児参加はまだ模索中の段階。働き方が違う部分はあると思うが、夫婦のちょうどいいバランスは何かを妊娠中から話し合うべき。コロナ禍で里帰り出産が減り、夫婦で育児をスタートする家庭が増えている。より一層、子育て支援サービスを利用するのか、職場復帰はどうするかを早めに検討しておく必要がある。また、出産を機に退職した場合に女性に対して家事や育児をすることが当たり前だとするバイアスもある。このような役割分担の意識は注意が必要。」「働き方と育児は表裏一体。子どもがいて、就業を継続するにしても離職するにしてもマイナスにならない社会にしていかなくてはならない。」「育児と働き方は密接にも関わらず、こども家庭庁には働き方は含まれていないことが気になる。また、子育てをお金の面で支援する必要もあるが財源問題のところは全く見えていない。すべての国民が負担するという議論も抜けていると感じる。」とコメントをいただきました。

 常見さんからは、「子育てしている社員の意見には多くのヒントがある。会社は子育て中の社員の困っていることに答えていくことが大事。自治体も同様で、子育てしやすい自治体は人が集まる。会社も労働組合も自治体も人の奪い合いをしていることを認識して対応することが大事だと思う。」「『イクメン』という言葉は、男性にとっては育児が異常もしくは逸脱であることを表している。『キャリアウーマン』と同様に批判することは良いこと。さらに、夫が育児に協力というが『協力』という時点で育児は女性の仕事となっている。女性の負担がなぜ重くなるのか、重いと感じているのかということにメスをいれていかなくてはならない。」「2020年代においては、パパ・ママになる方法を自分で学べというのは間違い。働く・子どもを育てる・生きるということやその学び方を現代にアップデートする必要がある。」との指摘をいただいた。こども家庭庁については、「子どもは親だけで育てるものかという疑問をしっかり持ち、名称が『こども庁』ではなく『こども家庭庁』なのかを問い続ける必要がある。また、すでに期待されていないことが問題。日本がこども先進国になるためにどうすればよいか、子どもをもっと幸せにするにはどうするのか、を示す必要がある。」とコメントをいただきました。また、春季生活闘争や養育費などの負担に絡めて、賃上げを求めるとの力強いご意見もいただきました。

 佐保総合政策推進局長からは、「お二人からキーワード・視点・論点をいただいた。着実にこれからどう考えるか、自治体や企業に向けた発信を含めて、連合の子ども・子育て政策の考え方を作り、発信していきたい。妊娠期から子育て期の切れ目ない支援が子育て世帯へのケアにとても重要な役割を果たすことから、連合では、保育施設や放課後児童クラブの職員の処遇改善や配置基準の見直しに取り組み、保育の質を確保したうえで受け皿の整備を進めること、子育て世代包括支援センターを全自治体に整備することなどを子ども・子育て会議をはじめとする会議において求めてきた。引き続き、子ども・子育てを社会全体で支える仕組みの実現に向けた取り組みの周知・発信や子育て環境の改善に努める。」と今後の取り組みにつなげていくとし終了しました。
トークセッション動画はこちら


 
  • 奥山千鶴子さん
  • 常見陽平さん
  • 佐保総合政策推進局長