懇談会全景
連合は1月26日、経団連との懇談会を都内で開催し、「春季労使交渉をめぐる諸問題について」をテーマに意見交換を行いました。
冒頭、十倉経団連会長、芳野連合会長の順にあいさつしました。
このなかで十倉会長は、「新型コロナウイルスの感染者が急増し、非常に厳しい状況が続いているが、コロナ禍が長期化する中にあっても、企業は持続可能な成長に向けて事業活動を継続しなければならない。公表した2022年版経労委報告では、企業に対し、成長の果実をマルチステークホルダーに対して、バランスのとれた分配を行うことを求めており、特に重要なステークホルダーである働き手との価値協創により生み出された成果を適切に分配すべく、企業の責務として『賃金引上げ』と『総合的な処遇改善』に取り組むことが非常に重要であることを明確に打ち出している。さらに、日本の企業数のほとんどを占め、雇用者の7割近くが働く、中小企業における賃金引上げとその環境整備の必要性についても強く認識をし、賃金引上げの原資の確保に向けて、政府の『パートナーシップ構築宣言』への積極的な協力などを通じて、大企業が率先して取引価格の適正化に進め、サプライチェーン全体での取組み強化が不可欠である。
今年の春季労使交渉では、こうした社会性の視座に立った主体的な検討を呼びかけ、連合とも考え方を共有し、企業労使による真摯な議論の結果として、賃金引上げのモメンタムが維持され、『サステイナブルな資本主義』実現に向けて、労使で共に歩み出す契機となることを期待している」と述べました。
芳野会長は、「オミクロン株による感染の再拡大や原料価格の上昇など、当面予断を許さないが、労使には感染防止と社会経済活動を両立させ、コロナの危機から脱却すること、そして中長期の社会を見据えた経済好循環の足場づくりが求められている。また、グリーンやデジタル変革への対応、人口減少下での社会保障制度の持続性確保、貧困層の増加や格差の拡大など、構造的な課題も山積しているが、多様な人々に参加と活躍の機会を提供し、課題に挑戦する意欲と能力を高めることが、これら課題を克服するカギであり、そのためには『人への投資』の充実が欠かせない。
ここ数年賃上げの流れは続いているものの、長きにわたりわが国の実質賃金は低迷し、コロナ禍にあっても賃金が増加している他の主要国から後れをとっている。
連合は、未来をつくるため、月例賃金にこだわり、「底上げ」「底支え」「格差是正」をはかり、とりわけ中小企業における賃上げに向けては、サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正な分配が極めて重要。懸念される足もとの原料価格上昇への対応も含め、取引の適正化に向けた経営側からのさらなる発信をお願いしたい」と述べました。
その後の意見交換において、連合側は、「コロナ禍からの回復に向けた課題」「企業規模間の格差の是正」「ジェンダー平等・多様性の推進」「雇用のセーフティネット確保」「ビジネスにおける人権尊重の重要性」「カーボンニュートラル/DX推進における公正な移行」について提起しました。
経団連側からは「総合的な処遇改善に向けた取り組み」「企業のイノベーションに向けた多様性の推進」「人への投資による働きがいの向上・キャリア形成の重要性」「中長期における人的資本と賃金のあり方」「DXが進む中で誰もが挑戦できる環境整備の必要性」などについて意見が挙げられました。
まとめのあいさつで芳野会長は、「労使でめざす方向は一致している。企業によって置かれている環境は様々だが、こういう状況だからこそ、『人への投資』によって生まれる働きがいを生産性向上ひいては好循環につなげたい。今年は『未来づくり春闘』として、すべての組合が要求を出し、賃金のみならず総合的な処遇改善に向けた労使協議を行うことを掲げている。労働組合の役割は、労働者の考えを経営に伝え、労使間で考え方の違いがあったとしても話し合いを重ね、課題解決に向かっていくこと。率直な話し合いができる建設的な労使関係が必要」と述べました。
十倉会長は、「限られた時間の中で、率直でかつ建設的な意見交換ができた。めざすべき社会像は一致しており、我々は『共創』の関係にあり、経営のパートナーとして労働組合を改めて認識した。『人への投資』の重要性や、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、中小企業における賃金引上げに向けたサプライチェーン全体での取組みなど、課題認識は共有できていると改めて感じた。ポストコロナを見据え、連携しながら、サステイナブルな経済社会の実現に向けて共に取り組んでいきたい」と述べ、懇談会は閉会しました。
以 上